畑打つ音や嵐の桜麻 芭 蕉
属目(しょくもく)吟、つまり、即興的に目にふれたものを詠んだものであろう。畑打つ音を耳にしつつ、芽生えて間もない桜麻に目をとめているのである。
「音や嵐」と「荒し」という縁語的な発想が、曇りになっていることは否定しがたい。けれども、繊細な感受力が働いている点は、見落とされるべきではない。
「畑打つ音や嵐の」が、「桜麻」を修飾するかたちになっているが、「や」・「の」の助詞の用い方も、なかなか微妙なものをもっている。
元禄三年三月十一日上野市(現在の伊賀市)荒木の白髭社での作。
「桜麻」は麻の名。この名は、桜の咲くころ種を蒔くからだとも、また、麻の花が桜に似ているからだともいわれている。その花をもって夏季に入れる。別に、桜麻とは麻の雄花のことだともいわれる。
「畑打つ」が季語で春。ここでは「嵐」と見立てられ、縁語的に桜麻に結びつけられている。
「畑打つ音がしきりにしている。あたりの畑には、桜麻の芽が生えそめているが、風に吹き
なびくさまを見ていると、この畑打つ音が、花に吹く嵐とも聞きなされてくる」
畑打つ人かがよへり遠筑波 季 己
属目(しょくもく)吟、つまり、即興的に目にふれたものを詠んだものであろう。畑打つ音を耳にしつつ、芽生えて間もない桜麻に目をとめているのである。
「音や嵐」と「荒し」という縁語的な発想が、曇りになっていることは否定しがたい。けれども、繊細な感受力が働いている点は、見落とされるべきではない。
「畑打つ音や嵐の」が、「桜麻」を修飾するかたちになっているが、「や」・「の」の助詞の用い方も、なかなか微妙なものをもっている。
元禄三年三月十一日上野市(現在の伊賀市)荒木の白髭社での作。
「桜麻」は麻の名。この名は、桜の咲くころ種を蒔くからだとも、また、麻の花が桜に似ているからだともいわれている。その花をもって夏季に入れる。別に、桜麻とは麻の雄花のことだともいわれる。
「畑打つ」が季語で春。ここでは「嵐」と見立てられ、縁語的に桜麻に結びつけられている。
「畑打つ音がしきりにしている。あたりの畑には、桜麻の芽が生えそめているが、風に吹き
なびくさまを見ていると、この畑打つ音が、花に吹く嵐とも聞きなされてくる」
畑打つ人かがよへり遠筑波 季 己