壺中日月

空っぽな頭で、感じたこと、気づいたことを、気ままに……

木瓜の花

2010年03月12日 22時07分40秒 | Weblog
 梅には遅れ、桜には先だって咲く美しい花に木瓜(ボケ)がある。
 ボケの花ほど、味も素っ気もない無愛想な木に、愛くるしくて華麗な花を咲かせる、案外なものはあるまい。
        近づけば大きな木瓜の花となる     立 子
 いかめしい棘をつけたかたくなな感じの木が、まだ若葉をようやく吹き出したばかりの三月の末に、梅の花より大ぶりで明るい感じの花をいっせいに開く。
 ボケは、中国原産のバラ科の灌木だが、『延喜式』や『和名類聚抄』など、今から千年以上も前の文献にその名が見えている。それほど早くから日本に移入されたものであろう。ただ、歳時記によっては、江戸中期ごろに渡来したといわれる、とするものもある。

 漢字で木の瓜と書いた木瓜(モッカ)を『和名抄』には、モケと読ませているところを見ると、中国でのモッカという名を、そのまま借用したことがわかる。そして、モケからボケとなったのだろう。
 ボケにも、カラボケ・クサボケ・ヒボケ・ショクボケ・シロボケ・サラサボケ・カイドウボケ・カントンボケと、いろいろな種類がある。しかし、変人は、ただその色を見分けるだけで、いちいち名前まではわかりかねる。
        野路暮れて却つて遠き木瓜あかし     悌二郎
 目に沁みるような濃い朱の色、この色がもっとも普通のようだが、このショクボケは春の花というよりも、むしろ夏の感じがする。
 春らしい、ほのぼのとした味わいを持つものは、うすくれないの花を咲かせるカラボケ、白い花にうっすらと紅をさしたようなカイドウボケ、白地に紅を散らしたサラサボケといった種類であろう。
 

      倒木のつぶやき木瓜の花の数     季 己