壺中日月

空っぽな頭で、感じたこと、気づいたことを、気ままに……

初桜

2010年03月16日 23時05分43秒 | Weblog
        咲き乱す桃の中より初桜     芭 蕉

 桃のほしいままな美に対して、初桜のういういしい、可憐な姿を詠んだものである。「より」という語も、繚乱たる桃にみとれているうちに、その中にかくれていた初桜を見いだした時の気持ち、しかも隠れつつ紛れ終わらぬ姿を生かしているのである。

 「咲き乱す」は、ほしいままに咲き誇っている趣を強く言ったもの。
 
 季語は「初桜」で春。「桃」も春であるが、この句は、「初桜」がつよくはたらいている。「初」を生かして使っているのである。

    「今を盛りと存分に咲いている桃の花の中から、一本のちらほら咲きはじめた可憐な初桜を
     見いだした」


      青年僧来るや日差しの猫柳     季 己