壺中日月

空っぽな頭で、感じたこと、気づいたことを、気ままに……

夜の声

2009年11月24日 22時45分43秒 | Weblog
        草枕犬もしぐるるか夜の声     芭 蕉

 「夜の声」は、物音一つしない時雨(しぐれ)の闇の底から、夜そのものの声のように鳴く声という心で、いかにもその境にかなった用語である。
 「しぐるるか」の「か」は疑問であるが、深い感動がひそめられている。わびしさの中に、やわらぎのある用語で、対象の中に滲透して把握されたたしかさが感じられる。
 「草枕」は、ふつう旅の枕詞として使われる語であるが、ここでは旅寝の意。
 「しぐれ」の句で冬季。

    「宿に旅寝していると、時雨が旅寝の心を寂しくさせる。あたりの闇は時雨
     のわびしく過ぎゆく音ばかりであるが、その中から犬の遠吠えが聞こえて
     くる。犬も、この時雨にあって、寂しさに堪えかねて夜の底にあのように
     鳴いているのであろうか」


      夜の大門ぬけて小さき熊手買ふ     季 己