壺中日月

空っぽな頭で、感じたこと、気づいたことを、気ままに……

三布蒲団

2009年11月18日 23時18分24秒 | Weblog
        行く秋や身に引きまとふ三布蒲団     芭 蕉

 行く秋の寂寥が、しみ出てくる句である。行く秋のどうにもまぎらわしようのない気分が、「身に引きまとふ三布蒲団」という、ものうい、他にしようのない動作によって具象化されてきて、それが、行く秋の季感と滲透して、動かしがたい表現となっている。

 「三布蒲団」というのは、三幅の蒲団のこと。「二布(ふたの)」、「四布(よの)」などに対して、三幅を「三布(みの)」という。
 一幅は、日本在来の反物の普通の幅のことで、並幅(小幅とも)といい、36センチ前後。敷蒲団は三布、掛蒲団は四布か五布が普通だったから、三布をかけると少し狭いわけである。
 「身に引きまとふ」は、すきがないように身体にぴったり引きつけてまとうの意。
 季語は「行く秋」で秋季。暮れてゆく秋の、身に沁みてくる寒さとさびしさが主だが、それだけでなく、秋の名残を惜しむ気持が底に流れているのがよい。
 ただし、「蒲団」も冬の季語であるが、「行く秋“や”」と切字があるので、こちらが主である。

    「秋も暮れようとして寒さも身に沁み、まぎらすすべもない寂寥が身に迫って
     くる。やむなく三布蒲団をしっかり引きまとっているばかりだ」


      行く秋のこぼれ日 鳩の瞳がきびし     季 己