社民党は、各地で取り組んでいる 小さな そして本当はとても大事な活動と手をつないでいかねばならん。
7月14日、教育基本法改悪反対運動で活躍してきた松山大学教授の大内裕和さん(写真右)が、「君が代」処分に抗議して停職出勤中の根津公子さんを激励した。
↓「あきる野学園」教職員へチラシ配布
↓近くの公園で根津さん激励のため「ZARD」の「負けないで」をうたう
*以下は、大内さんが「あきる野学園」教職員にあてたチラシの内容である。
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「あきる野学園」教職員の皆さんへ
2009年7月14日 大内裕和(松山大学人文学部教授)
「あきる野学園」の教職員の皆さん、私は愛媛県の松山市にある松山大学で教育社会学を教えている、教育研究者の大内裕和です。今日は、「日の丸・君が代」強制に反対したことによって、東京都教育委員会(以下:都教委と略)に処分されている根津公子さんを応援・激励するために、愛媛からこの「あきる野学園」にやって来ました。
「日の丸・君が代」強制が徹底的に強化されたのは、2003年10月23日に都教委が出した、いわゆる「10・23通達」でした。この「10・23通達」によって、入学式・卒業式において「日の丸・君が代」の実施が強制され、「教職員は国旗に向かって起立し、国歌を斉唱する」ことに従うことを義務づける「職務命令」が出されました。この「職務命令」に従わない教職員は、処分されることになります。
「10・23通達」を出した都教委をはじめとする現在の政府・財界・支配層は、一体何を狙っているのでしょうか?なぜそこまでして「日の丸・君が代」を強制することにこだわっているのでしょうか?
それは政府・財界・支配層が進める、これからの戦争政策にその要因があります。1992年に国際平和の維持を名目としてPKO法が制定されてから、1999年に周辺事態法が成立、2003年に有事(=戦争)法制が整備されました。それまで「専守防衛」を掲げてきた自衛隊は、米軍との共同軍事行動と海外派兵を目的とする組織へと変えられていっています。そして2003年10月、武装した自衛隊が戦闘地域であるイラクへと派遣されました。
自衛隊が米軍との共同軍事行動と海外派兵を目的する組織へと変えられようとしている背景には、グローバル化によって世界レベルでの「格差社会」が拡大するなかで、日本とアメリカが、海外で所有する膨大な海外資産・権益を維持したいという強い欲求があります。大量破壊兵器が実際にはなかったにもかかわらず、アメリカがイラク戦争を強行したのは、イラクに豊富な石油資源が存在し、多くの多国籍企業が中東市場を支配することを望んでいるからです。
グローバル資本主義世界の「勝ち組」であり続けるためにアメリカが戦争を必要とし、それに協力することを日本に強く求めています。海外に莫大な資産をもつ日本の財界もまた、自らの資産・利益・権益を維持するために、自衛隊が「普通の軍隊」として、海外で自由に行動できるようになることを強く望んでいます。
この動きに対する最大のブレーキとなっているのが、武力行使を明確に禁じた憲法9条の存在と、それを守り、支えてきた多くの人々の根強い反戦平和意識です。1955年結党以来、憲法9条の改悪を目的としてきた自民党が、長期政権を維持し続けてきたにも関わらず、憲法9条の改悪を達成出来なかったのは、戦後における砂川・内灘をはじめとする反基地闘争、1960年の日米安保条約改定への反対運動(安保闘争)、1960年代後半から70年代にかけてのベトナム反戦運動など、数々の反戦平和運動の力があったからです。近年では、沖縄戦「集団自決」記述を修正した教科書検定のあり方に対して、2007年9月29日に沖縄で県民大集会(約11万人が参加)が行われ、巨大な政治的インパクトを与えたことは皆さんもご存知のことだと思います。
こうした運動を支えてきた人々の根強い反戦平和意識を育ててきたのが、戦後日本における学校教育でした。「教え子を再び戦場に送るな!」というスローガンを掲げた日教組の運動、広島・長崎での原爆投下被害や沖縄での地上戦の実態を伝えるなど、全国各地での平和教育の粘り強い実践が、憲法9条の改悪を阻止し、自衛隊の海外での武力行使に強力な歯止めをかけてきたといえます。
「日の丸・君が代」は、近代以降、日本が朝鮮半島をはじめ、東アジア諸国に対して数々の侵略戦争を行った際に、それを支えるシンボルとしての役割を果たしました。国旗・国歌法は1999年に成立しましたが、「日の丸・君が代」を「国旗・国歌」とすることに抵抗感をもつ人々は今でも数多く存在します。大人の間でも意見が分かれる「日の丸・君が代」を、学校教育の現場で子どもたちに強制することには大きな問題があります。
たとえ「日の丸・君が代」が「国旗・国歌」として法制化されても、それを学校の入学式や卒業式で強制し、それに従わない教職員を処分するということは、日本国憲法第19条で保障されている「思想及び良心の自由」に違反する行為です。
根津公子さんの行動は、現在の日本国憲法に基づく平和教育の実践であるとともに、優れた教育実践でもあると私は思います。自ら考え、将来自分の判断で行動する力を身につけることが、学校教育の大切な目的の一つです。教職員が教育行政による「強制」に逆らわずに沈黙し、「思考停止」に陥ってしまっては、より良い教育をすることはできません。
一人ひとりの教職員の考えが尊重されることが、一人ひとりの子どもたちを尊重することにつながります。一つの学校のなかに多様な考え方をもつ教職員が存在することが、一人ひとりの子どもの個性や尊厳を大切にすることにつながります。
「あきる野学園」の教職員の皆さん、教育行政による締めつけが厳しく、大変困難な状況ではありますが、根津公子さんの行動をぜひ理解してください。そして根津さんの行動を支援してください。
現場教職員が沈黙することなく、極めて多忙で困難な学校現場の現状を話し合い、お互いの考え方を尊重し、ともに助け合っていくことが、より良い学校づくりにつながると私は思います。ともに考え、話し合うことによって、より良い「あきる野学園」を皆さんがつくっていかれることを、一人の教育研究者、一人の市民として私は切望します。