滝川薫の未来日記

スイスより、持続可能な未来づくりに関わる出来事を、興味がおもむくままにお伝えしていきます

エネルギー自立自治体の会議

2020-09-17 00:08:09 | 再生可能エネルギー

 
 この夏も、カリフォルニアやシベリア、ブラジルで広がる森林火災の不穏なニュースが続きました。1.5度以下への温暖化防止への希望を維持し難くなる出来事ですが、それでも地元の小都市シャフハウゼン市にも、9月に入って若者(主に高校生)による金曜日の気候デモが戻ってきました。若者による気候デモは、
ロックダウン後には大きな町では街頭に戻り、2030年までのカーボンニュートラル化や気候保全とコロナ経済対策の両立を訴え続けています。

 

 私の方は、コロナ禍により専門視察セミナーの依頼が年末まで、すべてキャンセルになりました。
 そのおかげ(?)で、夏までに「ビオホテル」についての単著本と、「オーストリアのエネルギー大転換」についての共著本の原稿を集中的に仕上げることができました。
 ビオホテル本の方は、出版社のプログラム全体がコロナ禍の影響で遅延しているため、出版は予定の10月よりも後ろ倒しになっていますが、9月29日には一足先にビオホテルについてのオンラインセミナーを行います。興味のある方は下記からお申込み下さい(有料)。


2020
年9月29日(火) 20:00-21:30 

Vol.2 ビオホテルから考える持続可能な観光業 - 100%オーガニック+カーボンニュートラルへ

案内&お申込みhttps://mit-energy-vision-biohotel.peatix.com

写真:カーボンニュートラルのビオホテル・エッゲンスベルガー   Bild: Biohotel Eggensberger / U.Haas



 原稿作成のために取材や調査を行っていると、字数や内容のバランスの関係で、記事に活用できない情報が多く出てきます。今日は、この初夏にエネルギー自立地域の記事を作成する中で、使えなかったドイツのエネルギー自立地域の会議についての情報をブログに掲載します。

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ドイツのエネルギー自立を目指す地域の会議

 

 ドイツでは、エネルギー自立を目指す地域の交流の場として、毎年、二つの全国会議が開催されてきた。一つはカッセル市での規模の大きな「未来フォーラム・エネルギー&気候」(旧「100%再生可能エネルギー地域会議」)、もう一つはフライブルク市での中規模の「エネルギー自立自治体会議」だ。

 前者は2009年からほぼ毎年開催されており、多い年では800人程度が参加している。2020年はコロナ禍の影響で11月15日~20日にかけてオンラインで開催される予定だ。
https://www.zufo-energie-klima.de/

 

 私は2020年2月、後者のフライブルクでの会議に出席した。会議の参加者の多くは自治体の首長や気候保全マネージャーと呼ばれる担当者だ。フライデイ・フォー・フューチャーの影響により、テーマ設定は「カーボンニュートラル」一色であった。中でも現在多くの自治体が取り組んでいる「カーボンニュートラル地区」の開発が最大のテーマだった。再エネにより電気・熱・交通のエネルギーを供給する地区のことである。

 その他、自治体による気候非常事態宣言、カーボンニュートラルな行政、自治体の気候適応対策や雨水マネジメント、モビリティコンセプト、電気自動車の充電インフラ、革新的な木造公共建築、低温地域熱供給、パワートゥガスやセクターカップリング、さらには自治体における植物炭を活用した有機資源の循環・土壌への炭素固定にまでに話が及んだ。

 5年程前までは同会議では、再エネへの住民出資や風力の受容度向上、協同組合の新ビジネスモデル、自治体のエネルギーコンセプトといったテーマが中心であったことを考えると、エネルギー自立地域の関心が、総合的なカーボンニュートラル社会づくりの方向に変遷してきていることが感じられた。

 
 コンスタンツ市における気候緊急事態宣言の採択と、その具体的な対策についての発表も興味深かった。同市は、自治体として体系的な気候・エネルギー政策を実施していくために、これまでに気候同盟、EEA(ヨーロピアン・エナジー・アワード)、2000W社会という諸プログラムへの参加というステップを経て、2016年にドイツのマスタープラン自治体に選抜され、気候保全コンセプトを策定している。
(注:「マスタープラン100%気候保全」は国の助成制度で、参加自治体は2050年までに二酸化炭素排出量を95%削減、最終エネルギー消費量を50%削減することを自らに義務付ける)

 その流れでコンスタンツ市の議会は、2019年5月に気候緊急事態宣言を採決した。同市では宣言はシンボルではなく、政策的な実動を伴うものである。追加の予算を設け、70の追加対策を実施していく予定だ。会議でプレゼンを行った市長によると、2030年までのカーボンニュートラル化は現実的には不可能であるというが、地域内でイノベーションを起こし、より生活の質の高い町づくりのために行うという。

 会議の最後には、市民運動「ジャーマン・ゼロ」イニシアチブについての報告があった。NPO ジャーマン・ゼロでは、2035年までにドイツをカーボンニュートラルにするための「1.5度法」パッケージを市民専門家により策定。そして同法の導入を目指して、2021年の総選挙に影響を及ぼし、選挙後にこの法律を国会に通すための市民運動を繰り広げている。その際に自治体や郡の賛同を取り寄せていく予定だという。
https://www.germanzero.de/

 

次回のフライブルク市でのエネルギー自立自治体の会議:2021年2月25日~26日
https://www.klimaneutrale-kommunen.de/

 

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● ご報告 : ウェビナー「自然共生型の太陽光発電のデザイン ~ スイスと南ドイツの事例から」

2020年8月28日に、やまがた自然エネルギーネットワーク主宰によるウェビナーシリーズ「山形とヨーロッパを結んで考えるコロナ後の地域と環境とエネルギー」にて、「自然共生型の太陽光発電のデザイン スイスと南ドイツの事例から  」についての講演を行いました。フェイスブックで東北芸術工科大学の三浦秀一先生にご紹介頂いています。

https://www.facebook.com/shuichi.miura.5

日本にて生物多様性を促進するソーラーパークが増えて行ってくれることを願っています。

同テーマでのオンライン講演・講師に興味のある方は滝川までご一報ください。

kao.takigawa@gmail.com


Bild: www.solarcomplex.de

 

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