界面活性剤は長い分子の一方が
水になじみやすい構造で
もう一方が
油になじみやすい構造の分子の一群だ
このような画像でおなじみだろう
界面活性剤の中で
人間が最も古くからお付き合いがあるのは
石けんである
脂肪酸をアルカリで加工したものである
界面活性剤には大きく分けて
4つの種類がある
1 陰イオン系界面活性剤
~酸ナトリウム(石けん)
(代表:ドデカン酸ナトリウム)
固体の石けんでは
写真右側のカルボキシル基の部分に
ナトリウムやカリウム等の金属イオンがイオン結合しているが
写真は水に溶けた姿を再現するため
ナトリウムは省略している(以後も同様)
左の炭化水素部分が疎水・親油性
その長さは使用した脂肪によって様々である
~硫酸ナトリウム
(代表:ドデシル硫酸ナトリウム)
石けんの分子に似ているが
親水性の部分に黄色の硫黄が使われている合成洗剤である
このことによって溶液が中性にすることができ
台所用洗剤に良く使われた
~ベンゼンスルホン酸ナトリウム
(代表:ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)
途中にベンゼン環が入っているため
より合成っぽい姿になっている
これも中性洗剤
ここまであげてきたものは
陰イオン界面活性剤と呼ばれるものである
親水性部分が水中で負電荷(-)を帯びる
生物の体も負電荷を帯びやすいので
反発して汚れを取り囲みながら
水で流れ落ちていく
つまり洗浄などによく使われる界面活性剤だ
2 陽イオン系界面活性剤
~トリメチルアンモニウム塩
(代表:ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド)
~ピリジニウム塩
(代表:ドデシルピリジニウムクロライド)
上の2種は右側の親水性部分が
赤から青になっていることがお分かりか
酸ではなくアンモニアに近い構造になり
水中で正電荷(+)を帯びる
するとどういうことになるかというと
人間の体にくっついてしまうので
洗浄にはむかない界面活性剤だ
シャンプーで失われた油分を補給するために
リンスとして使われる
また
陽イオンが生物に吸着しやすいことを利用して
細菌を取り巻いて殺す殺菌剤としても使用される
逆性石鹸と呼ばれる消毒剤オスバン液なども
陽イオン界面活性剤の仲間だ
3 非イオン界面活性剤
ポリオキシエチレン~エーテル
(代表:ポリオキシエチレンドデシルエーテル)
ポリオキシエチレン~フェニルエーテル
(代表:ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)
非イオン界面活性剤は親水性部分が
イオンに解離しないので
中性洗剤としても使われる
他にも食品や化粧品業界で
乳化剤・保湿剤などとして広く利用されている
4 両性イオン界面活性剤
~カルボキシベタイン
(代表:ドデシルカルボキシベタイン)
両性イオン界面活性剤は
赤い部分と青い部分があることから推測できるように
酸性の時は陽イオン界面活性剤として
アルカリ性の時は陰イオン界面活性剤として働く
洗剤などのほか
リンスインシャンプーなどに利用されているようだ
~グルタミン酸
(代表:ラウリルグルタミン酸)
これは両性イオン界面活性剤として分類するのは微妙だ
赤い部分(酸)の方が多いのである
アミノ酸系界面活性剤というべきかな
酸の方が勝っているので溶液は酸性になる
そう
「ビオレママになろう弱酸性ビオレ」など
弱酸性の界面活性剤だ
弱酸性のうりは「肌に優しい」だが
その根拠は肌が弱酸性だからという薄いものだ
肌は汗や油を始終分泌していて
常在菌がそれを脂肪酸に分解するのだから
肌が酸性に傾くのは実はあたり前の事だ
アルカリ性の石鹸で洗っても
ほっとけば肌は弱酸性に戻ってしまう
肌は弱酸性になりたいのでなく、ならざるをえないのだ
それを
「弱酸性は肌に優しい」と売り出すのは
商売が巧いと誉めるべきだろうな
界面活性剤の界隈では
他にもマユツバ物がある
石けん信仰とも呼ぶべきものだ
合成洗剤は悪くて石けんは良い
という二元論も冷静に考えるべきで
石けんだって界面活性剤なので
細胞膜を破壊するし
環境を汚染する
天然とか合成とかいう言葉で思考停止せずに
上手に界面活性剤を利用していきたいものだ