日々の戯れ

鈴柩の頼りない脳細胞に代わる記憶

エコナクッキングオイル(分子模型)

2009-10-02 | 分子模型図鑑

過去に「太りにくい油脂」の項で紹介したことのある
エコナクッキングオイルが販売自粛している
この油は太りにくい油ということで人気だったのだが
何故販売自粛なのか書き留めておこう

トリアシルグリセロール
Photo
普通の油の分子は上の写真の様に
3本のしっぽがでているものが一般的
(これをトリアシルグリセロール:TAGという)

ジアシルグリセロール
Photo_2
エコナクッキングオイルは
このようにしっぽが2本に減っている
(ジアシルグリセロール以下DAG)

TAGは消化された後またTAGになって蓄積されるのだが
DAGは消化された後、蓄積しないから太らないという理屈だ

ところがこの2本しっぽの油
グリセリン部分(写真左の赤い辺り)が酸化されやすく
グリシドール脂肪酸エステルに変わりやすい

グリシドール脂肪酸エステル
Dsc01653
グリシドール脂肪酸エステル自体はどうということはないのだが
これが分解(消化)されて生じる物質
グリシドールに発がん性が疑われているのだ

グリシドール
Dsc01655
グリセリン
Photo_3  
グリシドールはグリセリンが脱水結合して三員環を作ったもの
分子模型はとても作りにくい
それだけ不安定な物質ということだ
発がん性が疑われるグリシドールに変化しうる
グリシドール脂肪酸エステルが通常のン十倍も含まれる
エコナクッキングオイルは販売を自粛しているという訳だ

DAGは天然油にも含まれているが
エコナほど高濃度に含む油は過去になかった
広く臨床試験しているようなものだね
健康志向のオイルで不健康になったりしたら気の毒ではある

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MDMA(分子模型)

2009-08-21 | 分子模型図鑑

芸能界の麻薬汚染で話題になっているMDMAである

MDMA

Photo

MDMAはメチレンジオキシメタンフェミンの略称

エクスタシーとかXとかいう愛称もある

メタンフェミンの名が示す通り

覚醒剤の一種といえなくもない

 
これらのドーパミンに似たドラッグは多種にわたり

実際に試しもしない私がどうこう言えるものでもないので

まとめて紹介してしまおう

Photo_2
1 メチロン

2 メトカチノン

この2種はエフェドリンから合成される麻薬

3 4-MTA〈エフェドラ〉

痩せる薬として輸入されたていが麻薬指定された

4 メスカリン

アメリカ大陸原住民が宗教儀式の祭使用していたとされる幻覚剤

5 シロシン

マジックマッシュルームに含まれるアルカロイド

アステカの名称は「テオナナカトル」

6 2C-T-2

ホワイトラブとかきれいな名前を付けられているが麻薬

 

LSD

Photo_3

リゼルグ酸ジメチルアミド

麦角菌に含まれるアルカロイドから

1940年頃合成されたすさまじい効果の幻覚剤

芸術分野に大きな影響を与えたが

1970年以降は麻薬に指定されている

ドーパミンに似たドラッグの中でも

親分みたいに複雑な分子構造になってしまった

 

神経伝達物質にせよ麻薬にせよ

人間の喜怒哀楽や行動が

小さな小さな分子によって左右されるのは

なんだか不思議なことではある

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モノアミン神経伝達物質(分子模型)

2009-08-20 | 分子模型図鑑

承前

覚醒剤がなぜ人間の脳に

大きな影響を与えるのかというと

私たちの体内で覚醒剤に良く似た物質群が

大事な働きをしているからだ

それらの物質をモノアミン神経伝達物質という

環状炭素化合物に

窒素がぶらさがっているような形が共通している

有名な名前がいっぱい登場する

ドーパミン

Photo_9

グループの代表的存在で

後述するアドレナリンやノルアドレナリンの元となる

過剰でも不足でも様々な精神疾患の原因となる

アドレナリン
Photo_5

交感神経を興奮させるホルモン

闘争の時分泌されるホルモンで

痛覚を麻痺させたりもする

ノルアドレナリン
Photo_10

これもアドレナリンと同じようなホルモン

セロトニンと共に不足することがうつ病を引き起こす容疑者

セロトニン
Photo_7

うつ病や神経症への影響が注目されている

ヒスタミン
Photo_8

抗ヒスタミン剤という薬品のほうで有名

アレルギー反応に大きく関わる神経伝達物質

 

これら我々の体内で働く神経伝達物質が

先日の「覚醒剤」とよく似た姿をしていることを

確認していただきたい

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覚醒剤(分子模型)

2009-08-19 | 分子模型図鑑

芸能ニュースどころか

このところトップニュースにもなっている覚醒剤の事件

覚醒剤とはどんな化学物質なのだろう

アンフェタミン

Photo

メタンフェタミン

Photo

上記「アンフェタミン」「メタンフェタミン」の2種が

覚醒剤と呼ばれるものだ

ベンゼン環をもったアミンの一種だ

特にメタンフェタミンのほうは

戦前の日本で発明された物なので

ヒロポンだのシャブだのスピードだのと

愛称を幾つももらって親しまれている

エフェドリン

Photo_2

メタンフェタミンの合成に成功したのは

20世紀初頭・・・

戦争に向かう日本にとっては

疲労知らずの兵隊を作り出す魔法の薬品だった

原料は漢方で生薬として使われていた麻黄

そのマオウに含まれるエフェドリンという物質が

覚醒剤の原点である

神酒(ソーマ)と呼ばれる古代インドの祭祀用飲料には

マオウが使われていたのではないかといわれる

元気回復の特効薬であった覚醒剤も いまやものすごい悪役

習慣性さえ無ければもうちょっと便利だっただろうにね

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エステル(分子模型)

2008-11-25 | 分子模型図鑑

約束からだいぶ経つがエステルの紹介である

エステルという一族は簡単にいえば

脂肪酸アルコールが合体(脱水縮合)したものである

名称もその「酸」と「アルコール」を繋げて作られる

酢酸エチルは酢酸+エチルアルコール

吉草酸メチルなら吉草酸+メチルアルコールという具合

 

エステルの性質は他の炭化水素(ガソリン等)に似ているが

芳香を放つことで有用である

酢酸エチルなどはシンナー臭だが

もっと長いエステルになると果実香を発する

実際に果実の中にも多く含まれているのだ

酢酸メチル(シンナー臭) 

Photo

酢酸ペンチル(杏の臭い)

Photo_2

酢酸オクチル(オレンジの香り)

Photo_3

酪酸ペンチル(バナナの香り)

Photo_4

吉草酸プロピル(リンゴの香り)

Photo_5

カプロン酸メチル(パインの香り)

Photo_6

アンスラニル酸メチル(ブドウの香り)

Photo_7

脂肪酸もアルコールも無数にあるので

エステルもそれ以上に無数にある

今回紹介したのはほんの一部だということをお断りしておく

ちなみに今回の分子模型では

エステル基(分子模型の赤い部分)の左側が脂肪酸由来

右側がアルコール由来の部分である      

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トルエンと酢酸エチル(分子模型)

2008-10-22 | 分子模型図鑑

中国製の「つぶあん」に入っていた化合物

トルエンと酢酸エチルの紹介をしていなかった

トルエン

Photo

トルエンは以前にも紹介したことがある

芳香族の炭化水素である

酢酸エチル

Photo_2

酢酸エチルはマニキュアの除光液などに使用される

トルエンも酢酸エチルも有機溶媒として使われる仲間だ

簡単な言葉でいうと「シンナー」である

アンコに入っていればそれは気持ち悪くなるだろうが

農薬などと比べれば危険性はたいしたことはない

放っておけば揮発するのだから

 

酢酸エチルはエステルの仲間である

そういえばエステルの紹介をしていなかったので

次回エステルの仲間をもっと紹介しようと思う

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サリドマイド(分子模型)

2008-10-06 | 分子模型図鑑

子供の頃にニュースなどで漏れ聞いて

恐怖心と共に記憶に残った物質名がある

私の世代だとそれは

チクロだったりカドミウムだったり・・・

今の子なら

ダイオキシンとかメタミドホスとかがそれに当たる

 

今回紹介する「サリドマイド」も

嫌悪と恐怖を伴って発せられる言葉だった

 

サリドマイド

Photo

もともとはてんかんの薬として開発されたが

睡眠薬としての使用が始まった

催奇性があることが分かった頃には

数千人の被害者が出ていた

 

なぜ突然サリドマイドの紹介をしているのかというと

サリドマイドの製造販売が再承認されたからだ

そんな危ない薬をなぜ再販売するのだろうか

それは

サリドマイドの必要な人がいるからだ

サリドマイドには血管の新生を阻害する働きがあるらしい

だから新生児の奇形をうむのだが

それが悪性新生物(がん)への血管を阻害することで

がんの進行を防ぐ効果があるらしい

がんだけではなく

ハンセン病や糖尿病やエイズにも

何らかの効果があるのではないかといわれている

 

「薬」というものと「毒」というものは同義である

サリドマイドに限らずどの薬も

安全で効果的な使い方を踏みはずさないようにしたいものだ

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アセタミプリド(分子模型)

2008-09-30 | 分子模型図鑑

三笠フーズシリーズ

汚染米への残留農薬がアセタミプリドだ

メタミドホスはこちら

そしてアフラトキシンはこちらへどうぞ

 

アセタミプリドはネオニコチノイド系殺虫剤である

今までの主流である有機リン系殺虫剤

虫達が抵抗力を獲得したり安全性の面から見直され

欧米中心にネオニコチノイド系殺虫剤の使用が増えて来た

分子構造はこんな感じだ

アセタミプリド

Photo

ネオニコチノイドという名は

「新しいニコチンの仲間」といった意味の言葉で

昔タバコ水で虫を殺したことの延長線上にある

ちなみにニコチンの分子模型も掲げて置く

ニコチン

Photo_2

似ている部分はおわかりだろうか

 

ネオニコチノイド系殺虫剤にも多くの種類があるが

もうひとつだけ紹介しよう

クロチアニジン

Photo_3

近年日本やドイツでミツバチが大量に死ぬという事件があったが

その犯人が日本で開発されたクロチアニジンという殺虫剤だった

害虫のカメムシを殺そうとして

ミツバチを全滅させられては養蜂家も気の毒である

安易に殺虫剤に頼るのは考え物だと

昆虫シンパの私は思うのであった

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アフラトキシン(分子模型)

2008-09-26 | 分子模型図鑑

アフラトキシンB1について紹介したばかりだが

ついでにB2・G1・G2の分子模型も作ったので

分子構造と共に載せておこう

アフラトキシンの「B」や「G」はブルーとグリーンの頭文字だ

紫外線をあてたときに発する色(蛍光)が青と緑なので

それぞれアフラトキシンB、アフラトキシンGと名づけられた

アフラトキシンB1

Photo

アフラトキシンB2

Photo_2

アフラトキシンG1

Photo_3

アフラトキシンG2

Photo_4

大まかな形状は変わらないが

端っこの環の水素原子数などに違いが見られる

 

他にアフラトキシンM1・M2などというものもあるが

こちらは哺乳類の消化器などで酸化されたもの

分子模型の姿はB1・B2とほぼ変わらない

裏側にある水素が酸化されて水酸基になっただけのもの

B1を筆頭にどれも史上最高クラスの発がん性を持つ

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アフラトキシンB1(分子模型)

2008-09-24 | 分子模型図鑑

昨日のメラミンに続きニュースに現われた化学物質

三笠フーズの事故米に入っていたアフラトキシンだ

事故米という言葉は変な言葉だ

食用にならない米を工業用として輸入したところで

それは事故ではないだろうし

工業用の米を食用に転売したのは

事故ではなく悪質な故意だったと思うのだが・・・

 

アフラトキシンはカビの作る毒である

「天然の物質だから体に優しい」わけもなく

ダイオキシンの10倍以上

といわれる発がん性を持った危険な物質だ

 

アフラトキシンを作るカビは

「アスペルギルス・フラバス」

米麹が

「アスペルギルス・オリゼー」

だからかなり麹カビに近い仲間

Photo

左がオリゼー、右がフラバスである

まぁ

背景を変えただけなんだけどね

そのくらいに似ているということだ

 

アフラトキシンB1

Photo_2

アフラトキシンには分子構造の小さな違いで

B1、B2、G1、G2などがあるが

このB1が最も毒性が強いといわれる

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