女神 | ||
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読 了 日 | 2011/04/01 | |
著 者 | 明野照葉 | |
出 版 社 | 光文社 | |
形 態 | 文庫 | |
ページ数 | 354 | |
発 行 日 | 2006/09/20 | |
ISBN | 978-4-334-74124-2 |
つ頃からだろうか、BOOKOFFや他の古書店の文庫棚で、よく名前を見かけるので気になりだしていた作家だった。
本書のカバー見返しの略歴を見ると、オール讀物推理小説新人賞を受賞したということだから、書いているのはミステリーだと思って、何の気なしの本書を買ってきたら、長編小説とある。
思い込みが激しいから、というより早合点が多いから、よく確かめもせずに買うのは治らない悪い癖だ。
しかし読み始めてみれば、推理小説とは銘打っていないだけで、十分ミステリーの要素を含んでいるではないか。表紙のタイトルの下にVENUSという英語の副題のような文字が記されているのは、女神がギリシャ神話の美の女神を表しているのだろうか?
勤務先の銀河精綱から、江上正晴が無断で2週間も休んでいるという連絡が、両親の江上晴男、真知子夫妻のところへ入った。4日間の休暇届が出ているが、その後も連絡がないまま欠勤しているというのだ。
一人の男性の行方不明というエピソードがストーリーのプロローグである。
そして舞台は、経営コンサルタント業や企業広告などを業務とする、トライアル・コンサルタンツに移る。営業部門でトップセールスを誇る君島佐和子が主人公だ。彼女は凄腕のセールスマンとは程遠いような、スマートな体型と美しい容貌を兼ね備えたばかりか、誰にでも好感をもたれるにこやかな笑顔を絶やさなかった。
そうした彼女はほかの女子社員からも好かれ、羨望の的となっていた。
だが、彼女に憧れを持つ佐竹真澄は、時折わずかな瞬間に垣間見せる君島佐和子の曇った表情に、違和感を覚える。そして、江上正春の父親が佐和子を訪ねてくるに及んで、真澄は佐和子の過去に何か暗いものを感じるのだが…。
のストーリーでは、第三者から見る君島佐和子と、本人からの視点と両方から描かれるから、ある面では倒叙ミステリーのような感覚で読み進める。そんなところからミステリーと銘打ってないのかもしれないが、ストーリーの進行方向が次第に明らかになっていくところは、やはりミステリーと言っていいのではないかと思う。巻末の解説では、書評家の関口苑生氏がこの作品を「現代のピカレスク・ロマン」と言っている。
ある面で言えばそうとらえることが出来るだろう。しかし僕などはピカレスク・ロマンというと、どうしても悪漢小説というイメージがあって、少し違うのではないかと感じている。
強い女性を目指す、あるいは強い女性を演じる主人公を描いた作品は、僕もいくつか読んできているから、逆説的だが、女性の弱さみたいなものを感じてしまうのだ。
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