隅の老人のミステリー読書雑感

ミステリーの読後感や、関連のドラマ・映画など。

1146.女神

2011年04月16日 | サスペンス
女神
読 了 日 2011/04/01
著  者 明野照葉
出 版 社 光文社
形  態 文庫
ページ数 354
発 行 日 2006/09/20
ISBN 978-4-334-74124-2

 

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つ頃からだろうか、BOOKOFFや他の古書店の文庫棚で、よく名前を見かけるので気になりだしていた作家だった。
本書のカバー見返しの略歴を見ると、オール讀物推理小説新人賞を受賞したということだから、書いているのはミステリーだと思って、何の気なしの本書を買ってきたら、長編小説とある。
思い込みが激しいから、というより早合点が多いから、よく確かめもせずに買うのは治らない悪い癖だ。
しかし読み始めてみれば、推理小説とは銘打っていないだけで、十分ミステリーの要素を含んでいるではないか。表紙のタイトルの下にVENUSという英語の副題のような文字が記されているのは、女神がギリシャ神話の美の女神を表しているのだろうか?

 

 

勤務先の銀河精綱から、江上正晴が無断で2週間も休んでいるという連絡が、両親の江上晴男、真知子夫妻のところへ入った。4日間の休暇届が出ているが、その後も連絡がないまま欠勤しているというのだ。
一人の男性の行方不明というエピソードがストーリーのプロローグである。
そして舞台は、経営コンサルタント業や企業広告などを業務とする、トライアル・コンサルタンツに移る。営業部門でトップセールスを誇る君島佐和子が主人公だ。彼女は凄腕のセールスマンとは程遠いような、スマートな体型と美しい容貌を兼ね備えたばかりか、誰にでも好感をもたれるにこやかな笑顔を絶やさなかった。
そうした彼女はほかの女子社員からも好かれ、羨望の的となっていた。
だが、彼女に憧れを持つ佐竹真澄は、時折わずかな瞬間に垣間見せる君島佐和子の曇った表情に、違和感を覚える。そして、江上正春の父親が佐和子を訪ねてくるに及んで、真澄は佐和子の過去に何か暗いものを感じるのだが…。

 

 

のストーリーでは、第三者から見る君島佐和子と、本人からの視点と両方から描かれるから、ある面では倒叙ミステリーのような感覚で読み進める。そんなところからミステリーと銘打ってないのかもしれないが、ストーリーの進行方向が次第に明らかになっていくところは、やはりミステリーと言っていいのではないかと思う。巻末の解説では、書評家の関口苑生氏がこの作品を「現代のピカレスク・ロマン」と言っている。
ある面で言えばそうとらえることが出来るだろう。しかし僕などはピカレスク・ロマンというと、どうしても悪漢小説というイメージがあって、少し違うのではないかと感じている。
強い女性を目指す、あるいは強い女性を演じる主人公を描いた作品は、僕もいくつか読んできているから、逆説的だが、女性の弱さみたいなものを感じてしまうのだ。

 

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