推定無罪 PRESUMED INNOCENT |
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読 了 日 | 2013/11/11 |
著 者 | スコット・トゥロー Scott Turow |
訳 者 | 上田公子 |
出 版 社 | 文藝春秋 |
形 態 | 文庫2巻組 |
ページ数 | 357/360 |
発 行 日 | 1991/02/10 |
ISBN | 4-16-752707-3 4-16-752708-1 |
初の邦訳が出たのは1988年ということだから、25年も前だ。文庫化されてからでも22年が経過している。しかし、僕の中ではそれほど前だという感覚がない。ハリソン・フォード氏主演の映画が何度もテレビで放映されて、つい最近放映された番組を、僕は録画したから、なおさらそう思うのかもしれない。
映画はスタートから5分か10分くらいのところまで見て、原作を読んでから見ようと思い、途中で見るのを中止している。だが、映画ではスタートからの短い間に、主人公に殺人の容疑がかかることを予兆させる雰囲気が漂っており、原作をだいぶ省略していることが、本を読むとよくわかる。
文庫で上下2巻に亘る長編を2時間ばかりの映画にするには、多くを端折らなければならないのだろう。それに文字で伝える小説では人物の心理状態を表すのにも、多くのページを要するから、必然的に映像とは異なる表現となるのは仕方がないだろう。
逆に、小説では冗長な状況説明に多くのページを費やすといったことにもなりかねない。
歳をとって少し気が短くなったのだろうか?全編読み終わってみれば長いと思った状況説明にも、すべてがその後の収束への道筋だと納得するのだが、先を急ぐ読み方はどうも最近になっての傾向のようだ。といっても本書ことではない。
しかし、上巻の巻末付近まで読み進むうち、主人公サビッチ(ロザート・K)のまったく軽率としか思えない過去の行動に、「優秀な法律家」と判事にさえ言わせしめる程の彼が、何と言う馬鹿な状況に自身を追い込んだのだろうと、あきれる思いが湧く。それに引き換え八歳の息子の健気さに涙を誘われる。
著者のスコット・トゥロー氏は26歳でロースクールに再入学して法曹界を目指し、検事補になったというから、その才能は推して知るべし、いやいや本書でその才能を存分に発揮しているのだが・・・。
僕はこの長いストーリーの中で、下巻の裁判シーンで現れるクライマックスに、胸の痛くなるような興奮を覚えた。この場面での主人公はサビッチを弁護する弁護士のスターンだ。
僕の説明の悪さからこれでは何のことだかさっぱり判らないだろう。話が後先になったが本書は、アメリカ中西部はキンドル郡(どこにあるのか僕は知らない)の地方検事局、そこに所属する主席検事補・ロザート・K・サビッチを主人公として、殺人事件を巡る法曹界の物語だ。
レイモンド・ホーガン検事を筆頭に数名の検事補を擁した地方検事局は、次期地方検事を選ぶ選挙を前のあわただしい最中だ。 そんな中、女性検事補・キャロリン・ポルヒーマスがレイプの上殺害されるという事件が発生した。
対立候補の検事補ニコ・デラ・ガアーディアに対して、苦戦を強いられそうなホーガンは事件の早期解決をサビッチに指示するが、こともあろうにそのサビッチがキャロリン殺害の容疑で逮捕されるという事態となる。
に書いた公判の場面でのサビッチの弁護士・アレハンドロ・スターン。優秀な弁護士は、検察側の証人への容赦のない反対尋問を浴びせるのだが、いやこれはまだ此の作品を読んでない方の興をそぐことになるか。主任検事補という立場にありながら、殺人容疑で起訴されるという事態は、なんとももどかしい思いに駆られるが、途中で果たして彼は本当に無実なのだろうか?と疑問さえ浮かぶ進展に、ストーリー構成の巧みさ感じさせる。
タイトルの「推定無罪」は原タイトル「PRESUMED INNOCENT」の直訳だが、アメリカの裁判の大原則で、容疑者は容疑が確定するまでは無罪と推定される、というところから来ている。ストーリーの中では公判の席上、判事が陪審員に対して噛んで含めるようにこれを説明する場面が有る。
さて今日(11月12日)僕は理事会が終わって帰宅後、録画してあった映画「推定無罪」を見た。
以前スタートから10分くらいのところまで見ているのだが、今日は改めて最初から見直すことにした。民法の放映だったので、CFをカットしたら正味97分しかない。オリジナルが127分だから、30分もカットされており、つながりに意味不明の箇所もあった。
まあ、しかし僕は原作を読み終わったばかりだから、問題なく最後まで見ることが出来た。だが正直言って、名匠アラン・J・パクラ監督、売れっ子俳優ハリソン・フォード氏の出演をもってしても、期待はずれの感はぬぐえない。
30分もカットされていたからということもあるだろうが、裁判シーンも原作と比べると、迫力に欠けて名判事振りを発揮する原作とは比べ物にならないくらいだ。僕はあまり悪口は言いたくないから(もう散々言ってしまったか)、この位にしておこうか。
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