隅の老人のミステリー読書雑感

ミステリーの読後感や、関連のドラマ・映画など。

0418.模倣犯

2003年08月22日 | サイコ・サスペンス
模倣犯
読了日 2003/8/22
著 者 宮部みゆき
   
出版社 小学館
形 態 文庫
ページ数 701(上巻)721(下巻)
発行日 2001/04/20
ISBN 4-09-379264-X(上)
4-09-379265-8(下)

 

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もうすっかり定着した感じの郊外型の古書店が、従来の古本屋さんではしなかった売り方をしている。本書のような上・下巻を別売りしているのだ。本も次第に消耗品化しているのだろう。そういったことでこの本も別々の店で買い揃えた。発行日から2年を経た今でも文庫化されないので、安くなっていた単行本を買ってしまった。
4日かけて上・下巻を読み終えたが、これほど長い小説を読むとかなりエネルギーを消耗する。若い頃は読書に体力が必要などとは考えても見なかったことだ。

僕は、宮部みゆき氏のファンだが、この作品を読み終わったとき、これほどの長さが必要だったのだろうか?と、ふと考えた。著者のあとがきで、週刊ポスト誌に連載3年、加筆改稿に2年、総じて5年を費やして完成した作品と判った。

あらゆる角度からのエピソードの集積が、物語を作り上げている関係上、長くなるのは止むを得なかったのか?あらゆる角度からのエピーソードの集積といえば、著者の「理由」も、内容も手法も違うとはいえ、そうだった。多数の読者の反響を呼び、ベストセラーとなった作品にケチをつけるつもりは毛頭無いが、あまりにも多岐にわたった挿話で、収束しきれない面も多少あるような気がしている。

僕はこの読書計画に入る一つのきっかけとなったサイコ・サスペンスに嵌ったことがあり、決して嫌いではないが、なんともやり切れない重い話ではあった。
普通のミステリーのような犯人探しではなく、一種の倒叙形式となっているのも、本作では犯罪の被害者の側の心理描写を重要視しているからだろう。ある面では、殺伐とした今の世で毎日のようにくらい犯罪のニュースが新聞、テレビで報じられて、僕なども対岸の火事としてしか受け止めていない。それどころかともすれば、間接的に加害者となるような言動を取っている可能性も否定できない。

先日、アメリカから来日した犯罪被害者の会のリーダーが、テレビで発言していたが、「われわれは誰でも犯罪被害者となり得る」ということが、本書から受けた感じの集約である。

 

 

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