隅の老人のミステリー読書雑感

ミステリーの読後感や、関連のドラマ・映画など。

1465.コスモスの影にはいつも誰かが隠れている

2014年05月22日 | サスペンス
コスモスの影にはいつも誰かが隠れている
読 了 日 2014/05/22
著  者 藤原新也
出 版 社 河出書房新社
形  態 文庫
ページ数 243
発 行 日 2012/6/20
ISBN 978-4-309-41153-8

 

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しい本を見つけるのは、時々ここに書いているように、テレビの書評番組が多いのだが、たまに読んだ本の後ろにその出版社の簡単な目録が掲載されていることがある。
そうした中から気になるタイトルがあると、タイトルを書き留めておくなり、あるいはAmazonで探したりする。
このタイトルをそうした河出書房新社の目録で見て、何かミステリアスなタイトルにぜひ読んでみたいという感じを抱いた。そして手にした文庫は僕の予想をはるかに超える感動を僕にもたらした。
文庫のカバー折り返しにある紹介によれば、著者は写真家であり作家だという。
表紙のコスモスが咲く草原の写真は、タイトルにふさわしくその陰に誰かが隠れているような雰囲気を漂わすが、作者の作品だ。
上の本のデータにあるように、この本は今(5月22日)読み終わったばかりだ。僕がそうして読み終わった本をリアルタイムでここに書くことはめったにないことなのだが、実は今読み終わったといっても、この本は下記のように短い短編(変な言い方だが、243ページの中に14篇も収められていることを見ればその短さがわかるだろう)で構成されたものなので、他の本を読みながら合間に少しずつ読んでいたのだ。

 

 

最近はあまりそういうことはなかったのだが、僕の読書は昼夜通して読み進むということはなく、時々休んでは他の事をやるといった読み方で、時にはこのような短編を一つ読むといったこともよくやった。
以前は木更津市の図書館に立ち寄った時など、気になった短編集を1篇だけ読んで、何日かしてまた行ったときにまた1篇というように、何日もかけて1冊を読むということも、何度となくやったことがある。
本書のように短いストーリーは短い時間で読めるから、そうした読み方に適しているのだ。
ところがその短い1篇のストーリーたちは、短い時間に読み終わった時に、思わずため息が出るほどの感動を覚えるものばかりで、中には声を出して泣きたくなるようなものさえあった。すべてのストーリーは一人称で書かれているため、もしかしたら著者の体験したノンフィクションなのかと思えるが、ノンフィクションとはどこにも書いてないから、やはりフィクションなんだろうが、内容と言いその語り口と言いは真実の出来事と言っても信じられるほどの、まるで人生の一こまを切り取ったようなストーリーが胸を打つのだ。
巻末の著者のあとがきを見たら、著者のところにも、このストーリーはフィクションか、ノンフィクションかという問い合わせがあるそうだ。

 

 

れっぽい僕は2-3日たてば内容も感動も忘れかねないから、その余韻の残っている内にと思い、珍しく読み終わって直ぐにここに書いているというわけだ。下表のそれぞれのタイトルだけを見ても、その内容が分かるようなものもあるが、そう、全く想像するような内容そのものなのだ。
人生とは全く思いもよらぬ展開を示すこともあって、大概の人にとってはままならぬものだが、出会いがわずかな幸せを感じさせた後に、予想もしなかった不幸をもたらすなど、胸を打つ物語はまるで宝石のような感覚を持たせて、いつまでも胸に抱いていたいと思わせる。
暗いニュースの多い今の世の中だが、決して幸せなストーリーが詰まっているというわけではないこの短編集は、それでも心を洗ってくれるような読後感をもたらして愛おしい。

 

収録作
# タイトル
1 尾瀬に死す
2 コスモスの影にはいつも誰かが隠れている
3 海辺のトメさんとクビワノゼロ
4 ツインカップ
5 車窓の向こうの人生
6 あじさいのころ
7 カハタレバナ
8 さすらいのオルゴール
9 街の喧騒に埋もれて消えるくらい小さくてかけがえのないもの
10 トウキョウアリガト
11 世界でたったひとつの手帳に書かれていること
12 六十二本と二十一本のバラ
13 運命は風に吹かれる花びらのよう
14 夏のかたみ

 

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