隅の老人のミステリー読書雑感

ミステリーの読後感や、関連のドラマ・映画など。

1437.靄の旋律

2014年02月13日 | 警察小説
靄の旋律
MISTERIOSO
読了日 2014/02/06
著 者 アルネ・ダール
Arne Dahl
訳 者 ヘレンハルメ美穂
出版社 集英社
形 態 文庫
ページ数 535
発行日 2012/09/25
ISBN 978-4-08-760654-6

 

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頃はここに話題として上らないが、僕はスカパーHDのチャンネル「Axnミステリー」を30年近く視聴している。HD放送に切り替えたのはここ数年で、もともとはCS放送のスカパーのミステリーチャンネルだった。多分業績が思わしくなかったか?Axnに吸収されて「Axnミステリー」となった。
時を同じくして僕はHD放送に切り替えた。受信料は変わらずデジタル放送の画面は格段ときれいになった。
スカパーの視聴システムは簡便で、月単位で視聴チャンネルを改廃できることから、以前は番組月刊誌で海外ドラマなどの見たい番組を探しては、その都度視聴契約をしたり、解除したりしていたものだ。
しかし今はAxnミステリー1本だけに絞っている。経済的な理由からだ。

先月だったか、それとも暮(2013年12月)からだったか、あるいはもっと前だったか?はっきり憶えてないが、番組の一つに「スウェーデン国家刑事警察特捜班」が加わり、初回の前後編(およそ3時間)を見て、その見ごたえのあるドラマに、またチームを構成する個性的な配役陣にも惹かれた。
何話有るのか知らないが、全話録画してみようと思っていたら、HDチューナーの設定をうっかり変えたため、LANケーブルで接続してあったレコーダーが認識されず録画不能になった。先日、何とか設定をもとに戻して、録画はできるようにはなったが、再放送は既に2話が終了して、録画は第3話からとなった。
できれば第1話の前後編が、本書「靄の旋律」を基にしたものだから、もう一度見たかったのだが、残念ながらいずれまたの再放送を待つしかない。

放送では合間のCF部分で著者のアルネ・ダール氏のインタビューなどもあり、ドラマの全話視聴を楽しみにしている。

 

 

スウェーデン・ミステリーと言えば古くは、ペール・バールー/マイ・シューバル夫妻の、刑事マルティンベックのシリーズが有名だが、近年では世界中の話題をさらった「ミレニアム」三部作(スティーグ・ラーソン著 早川書房刊)がある。他にも僕はまだ読んでないのだが、ドラマにもなっていて本国スウェーデンのみならず、英国でもドラマ化された刑事ヴァランダー・シリーズなどがある。
こちらはヘニング・マンケル氏という同じくスウェーデンの作家による作品で、こちらも確か早川書房から刊行されているはずだ。
勿論それだけでなく他にもたくさんあるのだろうが、我が国に紹介されているのはそのうちでも人気の高いものなのだろう。いずれもドラマや映画になっており、刑事マルティンベックシリーズはかなり前にNHKでもドラマが何本か放送された、シリーズの一本「笑う警官」などはアメリカでも映画(映画の邦訳タイトルは「サブウェイ・パニック」)になっているほどだ。
そんなことで質の高い作品はどこの国であろうと、自然と広がって認知されていくものだと言う感じがする。

先にも書いたようにこの「靄の旋律」と言う作品は、国家刑事警察の中で組織された特別捜査班の面々の活躍を描いたストーリーだ。刑事ポール・イエルム(階級は警部補)が、捜査班メンバーの中心的人物だ。
冒頭、移民管理局に散弾銃を持った男が押し入り、人質をとって立てこもった。イエルムは人質救出部隊を待たず単身事件現場に潜入して、拳銃で犯人を撃つと言う暴挙に出た。幸い人質に怪我はなく無事救出されたが、内部調査班の厳しい取調べを受けることになり、危うく辞職を余儀なくされるところを、警察庁の国家刑事警察に新に組織される、特別捜査班Aに編入されることになり、命拾いをする。
と言った経緯が示されて、チーム・リーダーのヤン=オーロフ・フルティーンの許、総勢7人の特捜班Aの事件への取り組みが始まる。スウェーデン版「七人の刑事」と言ったところか。
経済界の重鎮が頭部に2発の弾丸を受けて殺害されると言う事件が2件続き、推測される状況から3件目の被害者と目される人物の警護に当たるも、予測ははずれて事件は異なる場所で発生する。
連続殺人事件の捜査は難航を極め、捜査員の一人であるヴィゴ・ノーランデルは、単身関わりが疑われるロシア・マフィアの巣窟に入り、逆に彼らの虜となって磔にされると言う災難に遭遇する始末だった。

 

 

年11月以来の翻訳小説のスウェーデン・ミステリーは前に読んだ「ミレニアム」三部作と同様、ヘレンハルメ美穂氏の訳出だ。
著者アルネ・ダール氏が此の作品を発表したのは、1999年だと言うから15年も前のこととなり、現在とは環境も異なる部分も生じているが、僕が見たドラマの方は舞台を現代に置き換えて制作されている。
ドラマは、更によりドラマチックにするため、チーム・リーダーのフルティーンは女性になっているが、原作の方は署内のサッカーチームでも活躍するヤン=オーロフ・フルティーンなる、れっきとした男性である。
つい最近見たばかりなのに、忘れていたドラマの推移を、本書を読みながら少しずつ思い起こす。
最初の短い章(本書の章割りは数字の1から33までとなっている)1の中で、示されるエピソードが、伏線とも言える本書の重要な鍵を握るところだ。
僕はその辺のどういった意味を持つのかと言うことは、ドラマを見て知っていたのだが、原作ではそれが実に巧みに隠されて、終盤のクライマックスをより効果的にサスペンス・ストーリーを盛り上げている。

優れた警察小説と本格推理の融合である。

 

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