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日本株、出遅れ割安株が優位に 米大統領選で潮目変化 株式 2020年11月23日 2:00

2020-11-23 15:08:23 | 日記
日本株、出遅れ割安株が優位に 米大統領選で潮目変化
株式
2020年11月23日 2:00 [有料会員限定]


米大統領選挙を境目に、日米の株式市場で物色対象が変化している。選挙まで相場をけん引していたIT(情報技術)関連の「巣ごもり銘柄」が失速する一方、それまではほぼ放置されていた一部の素材関連など割安株への資金流入が活発になっている。日経平均株価は上昇基調だが、物色の「潮目の変化」に注意し、個別銘柄の動きを見極める必要がある。

「テック偏重」から「バリュー重視」へ
日経平均は3月19日に付けたコロナ禍の年初来安値から大統領選挙直前の11月2日までに41%上昇した。3日の大統領選挙後から20日まではさらに10%上昇し、17日には29年ぶりに2万6000円台を回復した。騰勢を保っているという意味で変化がないように見えるが、その中身は大きく変わっている。「これまでのグロース(成長)株一辺倒の相場は終わりつつある」。三菱UFJ国際投信の石金淳チーフファンドマネジャーはこう話す。


物色されているのは、PBR(株価純資産倍率)が解散価値の1倍を下回り、業績の割に株価が安いまま放置されている「バリュー(割安)株」だ。一般的に、バリュー株は長期金利の上昇時に上がりやすいとされ、大統領選をきっかけに米国で10年物国債利回りがじわりと上昇していることでマネーが戻っているようだ。低PBR銘柄で構成するTOPIXバリュー指数は11月に入ってグロース指数を上回る日が目立ち、東証業種別指数でも鉱業や不動産、鉄鋼などの出遅れ感のあった業種の上昇が顕著になってきた。

大統領選「後」は素材や自動車関連の割安銘柄が上位に
個別銘柄にはその変化が顕著に表れている。日経500種平均株価の構成銘柄で米大統領選以降(11月2日~20日)の株価騰落率をランキングすると、トップはインターネット求人のエン・ジャパンで54%上昇した。しかし、3月19日~11月2日までの上昇率は30%で、この間の日経平均を下回っていた。2位の電線大手のフジクラ(45%)は、マイナス5%から急反転した。


大統領選前(3月19日~11月2日)までさえなかったが、選挙後(2日~20日)に市場平均を大きく上回った銘柄を見ると、日産自動車(選挙前がマイナス2%、後が28%)、JFEホールディングス(同7%、21%)、大同特殊鋼(同9%、21%)、川崎重工業(同マイナス8%、20%)、日本製鉄(同18%、17%)など素材関連が目立つ。PBRが1倍を下回る銘柄が多く、大統領選前は放置されていた割安銘柄群だ。フジクラはパソコン向け電子部品や、自動車向けワイヤハーネス(組み電線)が好調で、業績の回復期待も高い。鉄など素材関連は「コロナ後」の景気回復や自動車などの生産回復が期待されているようだ。

割安株には自動車や造船など、景気敏感株が多い。「コロナ後」の景気回復への期待がこうした銘柄の株価を押し上げている面もある。割安株の代表でもある銀行株も、長期金利が上昇すれば貸し出しにともなう金利収入が拡大しやすい。

日本市場は時価総額対比でみるとこうした割安株の比率が高いため、「バリュー選好」の流れは追い風だ。11月以降は日経平均の上昇率が米S&P500種株価指数を大きく上回る。



大統領選挙後に発生した大きなイベントとして、米ファイザーやモデルナなど製薬大手が相次いで開発中の新型コロナのワクチンで良好なデータを発表した。経済活動の正常化につながるとして、世界的にコロナ禍で売り込まれていた鉄道や航空、百貨店株が上昇に転じたことも相場を押し上げている。国内では鉄道や百貨店は大統領選挙前の急落分を取り戻すには時間がかかりそうだが、東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドが11日に上場来高値を付けるなど、回復を見越して買いが膨らんでいる銘柄もある。

「巣ごもりIT」不振、カドカワやZOZOは下落に転じる
一方、コロナ相場をけん引してきたIT関連を中心とした巣ごもり関連銘柄にはブレーキがかかりはじめた。

大統領選前の上昇率が高かった銘柄ランキングの選挙後の騰落率をみると、首位のKADOKAWAは「後」に1%下落。ZホールディングスやZOZOも下落に転じた。電子ペンなどを手掛ける2位のワコムもほぼ横ばい圏にとどまる。


米国でもGAFAM(グーグル親会社のアルファベット、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム、マイクロソフト)はグーグルを除いて、9月前後の高値を更新できていない。米金利上昇によるバリュー株回帰の流れに加え、クレディ・スイス証券の松本聡一郎日本最高投資責任者は「巨大IT企業への規制強化を訴えるバイデン氏が米大統領選で当選確実となるなど、資金を一極集中させるリスクが意識され始めている」と指摘する。大統領選前までは、米国のテック大手株さえ持っていれば利益が出たが、その流れは変わった可能性がある。

米テック株の変調は日本市場にも波及し、IT銘柄の比率が高い東証マザーズ指数が弱含む一因になった。これらの銘柄はPER(株価収益率)など株価指標上は割高でも、期待が選好して買われてきた面があるだけに、値動きが荒くなる場面も増えそうだ。

「潮目の変化」に左右されない勝ち組銘柄も
もっとも、新型コロナの感染再拡大は米欧だけでなく日本でもスピードが早まっており、この流れが中長期で続くのかには不透明な要素もある。特に米議会ではコロナに対応するための追加財政出動をどうするかについて議論が進んでいない。20日には米連邦準備理事会(FRB)がコロナ対策として発動した中小企業向けの資金供給などを20年末で打ち切ると発表した。

仮にワクチンが早期に実用化されても、世界規模でコロナを封じ込めるには時間がかかる。選挙で当選確実となったバイデン氏への政権移行が来年1月に予定されているが、財政・金融政策が後手に回れば景気回復シナリオは崩れかねず、「再び景気悪化→金利低下→バリュー株への売り」と、流れが変化しかねない。

国内でも新規感染者数が過去最高水準となっており、消費支援が目的の「Go To」政策は見直しを余儀なくされている。12月から来年1月にかけての新規感染や米政治動向は足元の相場の流れが続くかどうかの試金石となる。

先行きが不透明であることを踏まえると、ここからは潮目の変化に左右されにくい個別銘柄を探すことも重要だ。2つのランキングを重ねてみると、選挙前も後も高い上昇率を維持している銘柄群もあることに気付く。

例えば技術者派遣のアウトソーシング。選挙前に2.7倍になった後も40%上昇している。エムスリーは2.5倍となった後に15%高。選挙後は勢いが鈍っているが、日経平均は上回る。中小企業を中心に事業承継や売却を仲介する日本M&Aセンターも同様だ。

CLSA証券の釜井毅生エグゼキューション・サービス統括本部長は雇用の流動化、オンライン医療の促進、中小企業の再編などは「それぞれ米大統領選や新型コロナウイルスの感染動向を抜きに考えても、日本社会を変えていく長期的なテーマとして注目されている」という。潮目の変化が起きている足元の相場にこそ、こうした銘柄を探すヒントが隠れている。(本脇賢尚)

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