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海外勢に静かに広がる「日本株推し」 編集委員 藤田和明 菅内閣発足 藤田 和明 編集委員 2020/10/11 2:00日本経済新聞 電子版

2020-10-12 07:06:12 | 日記
海外勢に静かに広がる「日本株推し」
編集委員 藤田和明
菅内閣発足 藤田 和明 編集委員
2020/10/11 2:00日本経済新聞 電子版


米モルガン・スタンレーのジョナサン・ガーナー氏は「日本推し」の1人だ。香港拠点のアジア担当チーフ・エクイティ・ストラテジスト。菅義偉首相誕生を踏まえ、2年ぶりに日本株に強気な分厚いリポートをまとめた。

タイトルは「嵐の海のなか新船長とともに、生産性とROEの旅は続く」だ。コロナ禍による大荒れの経済環境だが、菅政権による規制改革やデジタル化により、日本企業の生産性とROE(自己資本利益率)の向上が見込めるとする内容だ。

同氏が「出遅れ日本が先頭に立つ旅路」として持続的な収益力の改善見通しを打ち出したのが2年前。「コロナ禍は予想もしなかったが、2025年に向けて再び日本企業のROEが高まる」と、今回改めて提示した。18年度に10%乗せを達成した日本企業のROE。コロナ禍で落ちたとしても、25年には11%を達成するとのシナリオを描く。

日本は相対的にウイルス感染は抑えられ、社会は比較的安定してみえる。企業のガバナンス改革が根底で進んでおり、株主還元へ向けた経営意識は高まっている。ここでデジタル化の加速によって生産性が高まれば、その「変化」で他国をリードするとみる。

今回見逃せない点としてガーナー氏が加えるのが、過去の経済危機時にきまって繰り返された突発的な円高が起きていないことだ。「日本企業は事業の急変動に追われなくて済む」。さらに米中対立が深刻さを増すなかで、日本は広く自由貿易協定を結んでおり、東南アジアの成長などを取り込める、いいポジションにいるとする。

ガーナー氏ほどではないが、ゴールドマン・サックス証券からも「日本株がアウトパフォームする可能性を探るとき」との声が上がってきた。菅政権による改革期待や企業再編の広がりなど、「久しぶりに日本株固有の要因で注目されるようになってきた」(建部和礼ストラテジスト)。NTTによるNTTドコモの完全子会社化も、市場の需給にプラスに働く要因だ。




振り返れば、安倍晋三前政権の「アベノミクス」への期待から一時は海外投資家が累積20兆円超の規模で日本株(現物・先物合計)を買い越した。しかし、第3の矢である成長戦略や企業の新陳代謝がなかなか進まず、その後は失速。海外勢の資金は逆回転を始め、安倍政権の7年8カ月を通してみれば、結局流出に転じてしまったのがここまでの流れだ。

ただ一方で、足元9、10月に米国株が動揺しても日本株は粘り強さを見せた。米著名投資家ウォーレン・バフェット氏による商社株買いのニュースも飛び込んできた。「愛されない日本株」と嘆き続ける声の影で、日本の変化を先取りする静かな再評価が始まりつつある。ゴールドマンによれば特にここ5年間、海外投資家の日本株のアンダーウエートが顕著だった。裏返せば日本株の買い余力が隠れている。

オーストラリアの資産運用大手IFMインベスターズのチーフエコノミスト、アレックス・ジョイナー氏も「安定している日本は長期の投資家として魅力的な市場だ」とする。この先のポイントとみるのはポストコロナへ向けた政策だ。「経済を再び動かしていくとき、日本は少子高齢化という構造問題に向き合わねばならない」。女性の活躍や外国人労働者受け入れがカギになる。また、膨れ上がった公的債務への対応策として民営化案件が出てくるかも着目しているという。

コロナ禍は日本が抱える課題を浮き彫りにしたのと同時に、変化の余地の大きさや比較的安定した経済社会の強さも照らした。人口減少や低収益のイメージを押し返し、まだ限られる「日本推し」の流れを太くできるかは改革の努力次第だ。市場の期待に一つ一つこたえることがカギになる。

もちろん、それが容易な道でないことは、ガーナー氏自身がリポートの表紙に北斎の浮世絵「神奈川沖浪裏」を選んだことにも表れている。逆巻く波の中を進む船。ひるむことなく難路に挑まなければ、長き30年の低迷の呪縛を抜け出すことはできないだろう。

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