東京の家の最寄り駅近くにパン屋がある。
窯があって店内で焼いている。
グルメブックに紹介されるほどでは無いにしろ、美味しいパンだと思う。
菓子パン、調理パン、どれも工夫されていて飽きないが、何より北海道で言うところの角食が美味い。
なんというのか、
噛み締めた後じんわりと小麦の味がくる。
一度食べたら、またあのパンを食べたいと思う。
あの日もあれやこれや選んでレジに持って行ったら、レジ脇にパンの耳が置いてあった。耳だけでは買えないが、
他のパンを買うと一袋30円で分けてくれる。
恥ずかしいかな、私、これが大好き!
白いふわふわの真ん中より、少し歯ごたえのある耳が好き!
なので、迷わずトレーに加えた。
買いすぎたかな?と少々反省しながら持ち帰り、長女に顛末を話した。
そうしたら娘が思わぬ事を言った。
「◯◯(姉の名前)さんも、この耳、よく買ってきた」
え?
あゝ、姉は、薄くスライスしたパンをカリカリにトーストして食べるのが好きだった。だから、彼女もパンの耳が好きだった…
あ、それを娘が思い出として持っていてくれた…
それがパチンと刺さって、
涙が溢れた…
忘れないでいてくれる…それが、とてもとても嬉しかった。