宗恒の茶庭

「茶道 思いつくまま」や「和の美術」など

うそこ

2017-09-25 16:11:10 | 茶道

子どもの頃おままごとで【うそこ】に料理したりしたものです。【うそこ】という言葉は私の育った地方の言葉かもしれませんが、しょっちゅう使っていました。本当じゃないけれど本当の事・物として扱う時に言います。

先日の稽古の時、初心者の方がたまたま四ケ伝「唐物」のお客になる事になりました。

唐物の点前が進んでいって拝見の時、その初心者の方に私は《「唐物の拝見を」とおっしゃって》と言いました。するとその方は《カラモノって何ですか?》と聞かれました。誠に素直な質問です。

《唐物とは昔、中国から来た茶入れのことよ》と私。その方は「?」の表情だったので、平安時代後期から鎌倉時代、室町時代に中国から輸入された茶入・茶碗などの総称で、大変貴重なもので珍重されたものだったの。茶入れ一つが一国分の価値になったこともあるのよ。今はその写しを使って稽古をしているの》と付け加えました。

確かに拝見の時、写しにもかかわらず「高木家伝来の文琳です」とか、「本多家伝来の丸壺です」等まことしやかに答えます。【うそこ】です。そうやって名物茶入の名前・伝来を覚えるのです。

また稽古用の茶杓でも「お作は?」との問いに「当代お家元です」など【うそこ】で答えます。
茶杓もまた削った方・銘を大切にすることを学びます。

大津袋に入れて濃茶扱いする黒い棗なども「お塗は?」との問いに【うそこ】で「8代宗哲です」とか答えます。濃茶扱いにするほどの大層な棗ということを学びます。

本歌の茶入や古い茶杓などは今や美術館入りですから、稽古時は写しを本歌と思って稽古するのです。

茶道は【うそこ】が多いです。【うそこ】で答える時はちょっと胸が痛みます。




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