リドリー・スコットの新作「ナポレオン」を初日に見てきた。昔ナポレオンには思い入れがあって、パリ郊外にあるジョゼフィーヌが晩年に住んだ館マルメゾンやローマのナポレオン博物館にも行った身としては先入観なしに見たかった。
映画は正統派らしくフランス革命でマリー・アントワネットがギロチンにかけられた処刑場にいた若き日の一将校時代から始まり、彼のターニングポイントとなる戦争を描きながらフランスの国の移り変わりと最初の妻ジョゼフィーヌとの愛の歴史がエルバ島への流刑まで時系列で語られる。
私の思い入れはナポレオンだけではなく、hedgehogさんに教えてもらったオーディオドラマ「warhorses of Letters」のおかげで彼とウォータールーでの敵指揮官ウェリントン公爵の馬、マレンゴとコペンハーゲンにも多大なる思い入れがあったので、その視点からは、最悪の映画であった。良くも悪くもリアリティを追求しているので軍馬への仕打ちも見せられるからだ。あう・・
ナポレオンの肖像画は多く有名なものが多いが、映画にはそれらがそっくり現実が再現されて、これは予算の許される巨匠にしかできないよね!という感動はあり、またホアキン・フェニックスがナポレオンに元々似ていたとはさっぱり思わないのに、見ている時間の経過と共に段々と肖像画にそっくりになってくるのには驚いた。
しかし、それなのに、ああそれなのにマレンゴとコペンハーゲンは名前さえ一度も登場しないし、そこは歴史画や肖像画にも堂々と登場してるんだからもう少しスポットを当ててくださいよ〜
でもジョゼフィーヌ皇后役のバネッサ・カービーは好きなので、ナポレオンのファム・ファタールとして描かれていたのは良かった。ただ彼女が美しいのは見れば分かるけど、それ以外の、一応貴族なんだけどどこかぶっ飛んだところがあるアウトローな部分も見せて欲しかったな。そうすれば支配階級=貴族中心の上流社会で田舎出身の粗野な男が心の拠り所にしたことがもっと分かったのではないかな。
大作に相応しい巨大スクリーンのIMAXシアターで見てきてスケールの大きさもガッツリ美術も衣装も戦闘も宮殿の豪華さも堪能できた・・・そして分かったんだけど、私が今、見たい映像って、もうそういうものじゃないのかな。
18世紀フランスの軍服は美しいと改めて思ったものの、かつてそういうものに萌えた私はどこかに行ってしまった。帆船が登場したことで、今家で見てるドラマ「海賊になった貴族」を思い出して、あれで充分です、と思っちゃった。
イングランドのウェリントンは、ナポレオンを破って一躍人気者になり、彼の博物館もロンドンのマーブルアーチに見に行ってそれはとても楽しかった。はい、オタクの愉しみとして歴史は楽しめるけど、自分が若かった頃には憧れだったヨーロッパの貴族文化には自分がかなり冷めていたことに気づきました。ウェリントン公爵はルパート・エヴェレットが演じたけど全然魅力はなかったし、チャラいロシア皇帝がちょっと可愛かったくらいで私の俳優の好みがリドリー大先生には合わないからかしら。
あと重箱の隅ですが、フランス軍も英語なので、ウォータールーの戦いではイングランドなのかフランスなのか混乱しました(笑 でも潔くフランス語訛りの英語とかではないのは良かったかも。オーストリアやロシアの皇帝たちも劇中では英語でしたが、きっと現実にはかつての公用語はフランス語のはずですよね。
それと最近見た映画(配信ですが)にティルダ・スウィントン主演の「メモリア」があります。
これがとても変わった映画で、ティルダ様なので頑張って眠気と戦って見て、クライマックスでミステリーの謎解きのシーンではぶっ飛びました。
ずっとスパークスの絵を描いて映画やドラマに集中できない日々が1年以上続いてきたけど、今スパークスが10月のオーストラリア公演を最後にワールドツアー後の休み(でも働き者の彼らのことなので映画制作など別の仕事してると思われ)に入り、私もずっと放ったらかしにしてたそれ以外の事もちゃんとやらなきゃなという気持ちになってます。でもちゃんとやらなきゃってのが映画ですかね?