気をつけて。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190107-00000577-san-soci
睡眠導入剤などの薬剤を飲食物に混入し、相手を抵抗できない状態にしてわいせつ行為に及ぶ犯罪が相次いでいる。「デートレイプドラッグ」とも呼ばれる強力な薬剤はインターネット上の取引などで容易に入手できる状況で、会員制交流サイト(SNS)で知り合った少女らを標的に犯行を繰り返す悪質なケースも出ている。被害者の体内から薬の成分が排出される前に検査、検出できれば犯人逮捕に向けた証拠となるため、専門家は「被害が疑われる場合はすぐに警察などに相談を」と呼びかける。
鹿児島県の高校3年の少女は平成30年8月の夏休みに上京したとき、ツイッターで知り合った男に「ご飯行こうか」と誘われた。新宿の歌舞伎町で待ち合わせ、男から手渡された「飲むヨーグルト」を飲んだ後、意識がもうろうとし始めた。「車で休もう」。かすかに記憶に残るのは、男の言葉。翌朝目を覚ますと、宿泊先の親類宅のベッドの中だった。不安を覚えて警視庁に相談し、尿検査で睡眠導入剤の成分が検出された。
警視庁は少女を自分の車に連れ込み、わいせつ行為をしようとしたとして、準強制わいせつ未遂などの容疑で中国籍の男(32)を逮捕。男は別の少女への準強制わいせつ容疑でも逮捕されており、いずれも被害者が早期に警察に相談したことが摘発につながった。
また、警視庁が30年、睡眠導入剤入りのサラダを女性に食べさせたなどとして準強制性交容疑で逮捕した40代の男は、他の3件でも立件された。
警察庁によると、睡眠導入剤などの薬物の使用が疑われる性犯罪の摘発件数は、27、28年は30件程度で推移していたが、29年に85件と急増した。同庁関係者は「同じ容疑者が何度も犯行を繰り返すケースが目立つ」と分析する。薬の作用で被害者の記憶が抜け落ちるなどして時間が経過する間に成分が体外に排出されてしまい、被害が潜在化しやすいことにつけ込んでいるとみられる。
犯行の背景には、市販薬より強い入眠作用を持つ薬が容易に入手できる現状もある。病院で不眠などの症状を訴え、処方を受けた睡眠導入剤を犯行に使うケースに加え、ネット掲示板やSNSを介した取引も横行。ツイッター上では薬剤について「在庫あり」「お譲りします」といった投稿が多数ある。
性犯罪などへの悪用を避けるため、一部の睡眠導入剤には水やアルコールに溶かすと青く変色する色素が含まれている。だが、新宿の事件で逮捕された男は、ネットの匿名掲示板で購入した数種類の中から色素が含まれない錠剤を選んだ上、白濁した飲むヨーグルトに混入させることで、見た目で分からないようカムフラージュしていた。
警察庁は摘発に向け、被害者の申告があったら早期に体内に薬の成分が残っていないか検査し、証拠収集を行うといった対策の強化を全国の警察に呼びかける。
政府も全都道府県に医療支援やカウンセリングなどを行う「ワンストップ支援センター」を設置。センターの協力病院など支援拠点で、警察への被害申告をためらう被害者の相談に乗りながら検査することで、その後の捜査にもつなげられるようにする取り組みを進めている。政府は被害に遭った場合、警察の性犯罪被害相談電話共通番号(#8103)やワンストップ支援センターにできるだけ早く相談するよう呼びかけている。
デートレイプドラッグに詳しい旭川医科大の清水恵子教授は「見知らぬ相手から手渡された飲食物は、口に入れないのが原則だ」と指摘。「何かを口にして突然記憶がなくなる経験をしたら、まず被害に遭っている。時間をおかずに警察などの窓口に相談することが重要だ」と話している。
【用語解説】デートレイプドラッグ
性暴力に使われる睡眠導入剤などの通称。飲むと眠くなったり、体に力が入らなくなったりするほか、歩行や会話ができていても、記憶がなくなったり、途切れ途切れになったりする場合がある。短時間で作用する睡眠導入剤は薬の成分も早期に体内から排出されるため、犯行の証拠が残りにくい。