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旅行記、世相独言

とんがり屋根のトゥルッリ -アルベロベッロ-(南イタリアの休日4)

2017年08月15日 23時11分24秒 | 異文化体験_西欧
とんがり屋根のトゥルッリ -アルベロベッロ-(南イタリアの休日4)  2017.07.15-07.16

(写真はクリックで拡大します)

 アマルフィの海岸ドライブから内陸へ、カンパニア州サレルノからプーリア州アルベロベッロへは、長靴のくるぶしのような所をティレニア海からアドリア海へ横断するような形になる。景色も南イタリア特有の農業・牧畜色となり、風車があちこちで発電している。

 アルベロベッロに近づくと、境界に石積みされた放牧地や耕作地があちこちに見受けられる。本来無い方が効率的な土地利用になるはずだが?  円錐形の石積み三角屋根、間違いない! きっとこの辺りは、表層下に石灰岩の岩盤があるのだ。耕作地にする際には大変な苦労があったのだろう。この石灰岩の有効利用の結果が世界遺産にしたのだろうと推察。

            
南イタリアの丘陵地帯に広がる耕作・牧草地と風力発電   あちこちの農地境界に不合理な石積み、下が石灰岩の岩盤?

 HOTEL ASTORIAに到着したのは18時半。19時からホテルのレストランで、オレッキエッテと呼ばれるパスタにローストポーク、サラダ、フルーツの夕食。

 
HOTEL ASTORIA 小奇麗なホテル   オレッキエッテ&ローストポーク        バー・ラウンジ 

 円錐形の石積み屋根の家をトゥルッロ(trullo)と言う。集合して存在することから複数形のトゥルッリ (trulli) で呼ばれることが多く「部屋一つ、屋根一つ」」という意味だそうな。
 そんなトゥルッリに住み土産物屋を営む在伊20数年の陽子さんという女性が、日本からのツアー客情報を得てホテルにお迎えに来ている。「食後の散歩に夜のトゥルッリ地区観光をかねて我が家に来ませんか?」というお誘いである。

         
ホテルからポポロ広場に至る電飾された道        ポポロ広場の高台から夕刻のリオーネ・モンティ地区を望む 

 他に何もない小さな街、早速陽子さんの案内で日暮れに差し掛かった街に繰り出す。ポポロ広場には野外音楽舞台が設置され、21時頃からステージが始まるようだ。陽子さんの店でトゥルッロの家屋構造を拝見し、商売上手な陽子さんのお勧めでお土産品の品定めが始まった。
 平たく加工した石灰岩を積み、壁を石灰で塗る。白壁は紫外線防止、保温効果、室内を広く明るく見せる等の効果がある。屋根は円錐形である。地下岩盤のため井戸が掘れず、円錐形の屋根で雨を受け、水路を通して床下の貯水槽に貯め生活用水に用いる。

         
夜も人通りの絶えないモンティ地区               在伊20数年の陽子さんの店          

  
三角錐の屋根を内側から見ると         雨水が生活用水 地下貯水槽        トゥルッリの構造(地球の歩き方より)

 《このおとぎの国のようなアルベロベッロの可愛いとんがり屋根は、圧政の傷跡だった??》 という話を少し。
 15世紀末、家の数によって税金を徴収していたナポリ王に対し、ナポリから送られたアクアヴィーバ伯爵は、森林を伐採し石の多い土地を豊かにするため、周囲の領土から人々を呼び集め、農民達は石を掘り出し、それで小屋を建てた。これがトゥルッリの始まり。
 しかし伯爵家は、小作人たちに石を組み立てるだけの家を作るよう命じた。王の税金取立て調査の際、小作人たちの家をすぐとりこわせて、税金を払わなくていいようにするためだった。
 しかし、18世紀終わりには、絶えず家を造ったり壊したりすることにも、伯爵家の横暴にも耐えかねた小作人たちが、プーリアを訪れていたブルボン家のフェルディナンド4世に直訴し、その結果、王直属の領土となった。めでたし、めでたし。

          このとんがり屋根が、圧政の傷跡とは。

 翌日曜日の朝、少しばかりの雷雨があったがすぐに止み、青空が広がる街を散策する。何かお祭りでもあるのか、駐禁のビラがあちこちに貼られている。トゥルッリが集積する地区が2つある。お店が多いのがリオ-ネ・モンティ地区で、実居住が多いのはアイア・ピッコラ地区。

  
HISお手製の散策マップ    街の中心ポポロ広場(左端特設ステージ、中央市庁舎)     朝のモンティ地区

         
                  早朝のリオーネ・モンティ地区 ニャンコがお出迎え

 現在、人口約1万人。観光、手工芸、農業、アグリツーリズム、第3次産業に多く携わり、このあたりの土壌にもっとも適しているのは「チーマ・ディ・モーラ(cima di mola)」と呼ばれる良質のオリーブだそうな。

   
アルベロベッロのランドスケープ写真      ミニチュア・トゥルッロを売る店       きれいな花植で飾られた露地

 リオーネ・モンテイ地区の南のはずれにあるトゥルッリ建築の教会サン・アントニオ教会は日曜ミサの真っ最中。ポポロ広場・市庁舎の北側に歩いて行くと、行進する音楽隊に出くわした。やはり何かのお祭りのようだ。

        
トゥルッリ建築の教会サン・アントニオ教会  やはり街はお祭りだ。週末の予定表ポスター  7月から9月に至るお祭り行事内容

 大通りの正面に建つのがサンティ・メディチ・コズマ・ダミアーノ聖所記念堂、これを回り込むように更に北に歩くと街で唯一の2階建てトゥルッロ、実に12のとんがり屋根を持つ「トゥルッロ・ソブラーノ」がある。

        
奥の聖所記念堂を出発した音楽隊   サンティ・メディチ・コズマ・ダミアーノ聖所記念堂   だから至る所に駐車禁止の張り紙が

           
街で唯一の2階建てトゥルッロ「トゥルッロ・ソブラーノ」     早朝のため入れず、入口横の解説案内

           
街の教会毎に音楽隊が行進をやめて演奏             とある教会で見かけた気になるご婦人  

 駅はホテルのすぐ隣と言っていい距離。駅前にカフェテリアが1軒あるだけの小さな街の小さな駅である。

           
                ホテルから歩いて2分のアルベロベッロの無人駅 

    (クリックしてください)    Alberobello Night & Day

 午前10時、マテーラに向けて出発。


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