草むしり

少し年配のお婆ちゃんがバスの

到着を待っています。


バス停に置かれているベンチに

腰掛けて何か足下を見つめてい

らっしゃいます。


しばらくすると急にベンチから

立ち上がったと思うと足下の雑

草を抜き始めたのです。


ずっと足下を見ていらっしゃっ

たのは雑草だったのです。


どうにもその雑草を疎ましく思

われた様子です。


手のひらに携えたひとつかみほ

どの雑草を傍らに置かれると、

少し納得されたのかベンチに腰

を下ろされました。


しばらくまた足下をじっと眺め

ていらっしゃるかと思うと、再

度立ち上がられ、取り残された

少しばかりの雑草を抜かれたの

です。


歩道に置かれたバス停の傍らに

生えた雑草。


誰も気にすることもなく、それ

こそ忘れ去られた存在です。


お婆ちゃんはそれがとても気に

なったのでしょうね。


今ベンチに腰掛けていらっしゃ

るお顔には、決して特別なこと

をしたと言うのではなく、ごく

ごく当たり前の日常の表情が伺

えます。


きっとお家での毎日もこのよう

なご生活なのでしょう。


誰知れず気が付かないうちにい

ろいろと片付けていらしゃる縁

の下の力持ちなのでしょう。


そんな事を想像しているとお待

ちかねのバスが到着です。


お気を付けて「行ってらっしゃ

い！」


仕事の合間、信号待ちでの出来

事でした。




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