南の国の会社社長の「遅ればせながら青春」

50を過ぎてからの青春時代があってもいい。香港から東京に移った南の国の会社社長が引き続き体験する青春の日々。

マクドナルドのライスバーガー

2006-05-25 20:30:12 | シンガポール
シンガポールのマクドナルドが今年、ライスバーガーを発売した
のですが、昨日のランチでチキンのライスバーガーを、そして今日
のランチでビーフのライスバーガーを食べました。テレビCMや広告
をかなり見かけたのですが、食べたのは初めてでした。で、感想は、
意外といける、という気がしました。

シンガポールに何店舗かあるモスバーガーでは以前からライスバー
ガーがあり、ビーフとか、つくねとか、きんぴらごぼうとかのを
食べたことはありました。それはそれで結構美味しかったのですが、
今回マクドナルドが発売したライスバーガーはちょっと違います。

ライスの部分は、少しクリスピーな感じで、どことなくおこげ料理
に使うご飯のような感じです。ご飯が崩れないように何らかの処理
が施されているものと思われます。中にサンドイッチされている具
は、チキンカツとビーフの二種類があります。

値段は、チキンのほうが6ドル20セント、ビーフのほうが6ドルと
いう値段です。ランチはもっと安くなりますが、日本円では400円
くらいだし、これだけのお金だと、屋台でかなりのものが食べれる
ので、ちょっと高い気がします。

ご参考までに、シンガポールのマクドナルドのサイトで、この商品
を紹介しているページはこちらです。クリックしてみてください。
McDonald's Fan-Tastic Rice Burger

最近、たまたま川端基夫(かわばたもとお)さんという人の書いた
『アジア市場のコンテキスト(東南アジア編)』という本を
読んでいたら、マクドナルドのグローバリゼーションの話が出てい
ました。

マクドナルドは、もっとも身近なグローバリゼーションの例として
取り上げられることが多いようなんですが、マクドナルドという
グローバルなシステムは、各市場でそれぞれのニーズに合わせて
変容しているなんですね。

ライスバーガーは、すでに台湾などでも発売されていたみたいなの
ですが、韓国にはプルコギバーガーがあったり、ベジタリアンの多
いインドではベジタリアンバーガーがあったりと商品が現地の好み
に合わせて変容していくというのは、グローバルマーケティングで
はよくあることのようなのですね。

また商品だけでなく、マクドナルドというお店のあり方も市場により
変わっているみたいです。東南アジアでは、マクドナルドは家族で
来てゆっくり時間をかけて食事を楽しむ場所というような傾向があり
ます。シンガポールでも、食べるだけでなく、喫茶店のように、皆
で時間をつぶす場所のように使っている人たち多いですね。

「各国の消費者が必ずしも盲目的にマクドナルドというグローバル
企業に服従させられてきた訳ではないことが分かる。つまりマクド
ナルドのコンセプトや、オペレーション・システム自体は標準化され
ている部分は多いが、各市場の多様な脈絡の中で、さまざまな修正を
余儀なくされてきたのである。またマクドナルド側の意図とは別に、
市場の脈絡によってさまざまな意味やポジション、あるいは必然性を
与えられつつ受容され、同化されていった実態も浮かび上がってくる」
というように著者の川端さんは語っています。

マクドナルドのライスバーガーの中には、マクドナルドという企業の
グローバル化と同時に、地域のニーズに適応したローカル化という
二つの局面が同時に存在しているのです。バーガーというのは、パン
を二枚に切ってサンドイッチ状にした食べ物(ライスバーガーの場合
はパンではなくてライスになりますが)なのですが、マクドナルドと
いうブランドが、グローバリゼーションとローカリゼーションの両面
でサンドイッチされているという構図は何とも象徴的で面白いですね。

ところで、シンガポールで、このライスバーガーが登場したときの
ネーミングが見事でした。英語では、Beef Fan-tasticとか、Chicken
Fan-tasticというふうになっています。Fanのところにアクセント記号
がついていて、これが中国語の「飯」の発音と同じであることが、
中国系の人ならばすぐにわかります。この商品名の中国語の標記は
「飯tastic」というふうになっています。発音は英語と同じです。
ライスという言葉は一切使われていませんが、ネーミング自体が見事
にライスバーガーであることを物語っています。

中国語がわからない人には、あまりピンとこないネーミングですが、
7割以上のシンガポール国民は中国系なので、その人たちが食べてくれ
るだけでマーケテイング的には成功です。

また、この広告で使われていたキャッチが「Chi Fan Le Ma?」という
中国語のフレーズです。中国語を勉強したことのある人ならすぐに
わかりますが、「ご飯食べた?」「飯食ったか?」という意味で、
挨拶として使われるフレーズになっています。大阪商人が挨拶として
「もうかりまっか」を使うように、中国人は「ご飯たべましたか?」
を挨拶として使うのですね。それをこの広告では、「ライス(バーガー)
を食べたか?」という意味で使っているというのが見事です。

日常的に普通の言葉を使い、そこに新製品の宣伝の意味を持たせる
というのはかなりハイテクニックです。商品としてマーケティグ的
に成功するかどうかわかりませんが、ネーミングとか、広告コピー
としては素晴らしいできです。

ブログでは紹介できませんが、コマーシャルは若者のグループが、
ラップでライスバーガーの歌を歌っていますが、さびのところで
「飯食ったか?」というフレーズを中国語のまま言っています。
そのコマーシャルの影響を受けて、今回このライスバーガーを是非
食べてみたいと思ったわけで、そういう意味では、広告効果がかな
りあったと言う事ができます。少なくとも私にとっては。