Fsの独り言・つぶやき

1951年生。2012年3月定年、仕事を退く。俳句、写真、美術館巡り、クラシック音楽等自由気儘に綴る。労組退職者会役員。

「維新の洋画家 川村清雄」展

2012年11月11日 12時12分30秒 | 芸術作品鑑賞・博物館・講座・音楽会等



 もう1ヵ月もたってしまったが、10月9日に江戸東京博物館で開催されている「維新の洋画家 川村清雄」展の特別鑑賞会に参加した。
 なかなか記事をアップできなくて本日ようやく宿題を提出したような気分である。
 展覧会は12月2日まで開催なのでとりあえず期間内にアップすることが出来た。

 まず私は「川村清雄」という名前は初めて目にした。たまたまブロガーを対象とした特別鑑賞会に応募、抽選に当たったのでその画業を汁粉とが出来、幸運だったと感じた。
 幕臣というこだわりがあり、またイタリアで油絵を学ぶという、明治の洋画壇では当初から傍流であることを強いられた画家ということになるが、そうはいっても作品はなかなか魅力がある。

 解説では、川村清雄はペリー来航の1852年江戸城のお庭番という家筋に生まれ、幕府の洋学機関で西洋画を学び、17歳で維新を迎えた後、徳川宗家の家達に仕え、1871年徳川家派遣留学生としてアメリカ後ヴェネツィアで油彩画を学んだとある。帰国後特に勝海舟の庇護を受け、徳川家や海軍省の注文を受け、「歴代将軍像」などを描いたとのことである。
 当時の洋画壇は薩摩藩士出身の政治家でもあった黒田清輝などフランス洋画壇-印象派の影響を受けた流れが主流となっていた。幕臣という出自へのこだわりがあったようだがこれに加え、江戸の伝統的絵画様式とイタリア美術との融合という指向が強かったらしい川村清雄は明治期の洋画壇とは相容れずに傍流として洋画の歴史からは忘れられたということのようだ。
 しかしなかなか魅力的な作品が並ぶ。今回の展示は画家の画業を主体とした回顧展という側面もあるが、同時に川村家の歴史資料の展示という側面もあり、いかにも歴史博物館らしい展示である。


 私が最初に惹かれた「形見の直垂」は庇護者であった勝海舟の葬儀を経て、描かれた絵画である。私は最初この作品を江戸東京博物館のホームページの小さな画面で見たとき、とても幻想的な絵画かと誤解した。葬儀の模様を写実的に描いた絵ではなく、勝海舟という人物の遺品や葬儀のときに使われたもので、勝海舟という人物を象徴しようとする絵画である。これは確かに明治期の洋画のおもむきとはずいぶんと違うである。日本画のようなおもむきがある。


 もうひとつ惹かれた作品である「貴賎図(御所車)」も洋画といえば洋画であるが、日本画の手法も大いに感じる。左の御所車を描いた部分はそれこそ古代に公家の一行にも通じる古風な風景であり、右側には江戸・明治当時の庶民の姿をした人物がその公家の一行を眺めている。両者共に同時代の風俗とも言えるし、時空の違った風景を同じ画面に貼り付けた画面とも受け取れる。右上の緑色の樹木の葉が両者の距離だけでなく時間の差を演出しているように感ずるのは、現代の私だけだろうか。なかなか複雑な作者の意図を感じるのは、私の誤解なのだろうか。


 さらに私が惹かれた作品は波をなどを描いた作品である。波の動きや力強さに私は惹かれた。現代風な絵を感じさせてくれた。

 川村清雄は、板に油彩画を描いたり、決められた寸法の画布ではなくイタリアの宗教画のように縦長などの寸法の絵を描いたり、かなり自由奔放の描き方をしているようである。
 黒田清輝は政治家でもあり、画壇という組織を、薩摩出身という出自へのこだわり、人脈から明治政府との強いつながりを最大限生かして作り上げた。川村清雄は政治家、あるいは行政マンとしては振舞ってはいない。画壇をつくるという当時としては極めて権力的な、そしてそれを受け入れない他者に対する排他的な組織作りなど、まったく興味というか指向がなかった人と思われる。

 今回の展示を見て、日本にもさまざまな洋画の流れが存在していたこと、混沌とした明治期の絵画界にはさまざまな可能性が渦巻いていたことなどが想像できた。
 とても刺激に充ちた展示であり、画家の存在を知ることが出来たと思っている。お勧めの展示である。


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2 コメント

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去り行く公家さんたちを (通りがかり人)
2012-11-12 06:22:00
お送りしているのですかね? すごい絵です。追憶ですかね。戻らぬ時代への。決別ですかね。大きい画面で見てみたいものですな。
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ご指摘のとおりです (Fs)
2012-11-12 10:17:41
ひょっとしたら自分たち幕臣のことも含んでいるのかもしれないですね。冷静な自己観察かも・・・・。
忘れられない画家の一人になりそうです。
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