ヴラマンクの三越で開催されていた「没後30年・フランス野獣派の旗手 ブラマンク展」の図録を見ていたら、この作品《林檎の木と燕麦の畑》(1943年)という風景画が目に付いた。
確かに見た記憶がある。1943年というのはヴラマンクが47歳頃の作品である。展覧会で見た当時の印象も思い出した。中央の嵐がやってくる前の不安な雲か、嵐の過ぎ去った後の雲間から差す陽射しを受けた雲か、どちらなのか不明であるが印象に残った。
しかし題名を見ると、雲の下の燕麦と手前の木に作者は着目していたことになる。
構図的に見ると、木の横に延びた幹の葉、雲、燕麦、手前の土に映る斜めの太陽光線の束、この強い横の線に対して右端の林檎の木の垂直な太い幹、実に単純である。しかし太陽光線の輝きと暗部が交互に重なって複雑である。またこの林檎の木の曲がり具合が実にいい。
今回は畑の麦の細い垂直な線の連続もまた見どころに思えた。広々とした空間を演出している。もうひとつ雲は実にさまざまな形態をしているのも目に付いた。低い群雲、黒い雨雲、高層の雲等嵐に搔き乱された大気の様相を表している。
念入りな構想力を感じた。