
ブラームスの最後の管弦楽曲である。これ以降は室内楽曲、ピアノ曲、合唱曲しか作曲していない。当初は交響曲第5番、第6番を構想していた。しかしバイオリニストのヨーゼフ・ヨアヒムとの和解のため、並びにチェリストのロベルト・ハウスマンからのチェロ協奏曲の作曲要請に応えるために、これらの交響曲の構想を止め、ひとつの協奏曲を作ったというのが「真相」として語られている。ふたつの楽器が対話し、オーケストラにも同様の役割を与えたバロック音楽時代における合奏協奏曲を念頭に作曲されたとも云われている。1886年の作曲である。
初演の評判はかなり厳しいものだったようで、手直しや別の二重協奏曲の構想もあったらしいが、結局ブラームスは手を付けなかった。
私はこの曲はブラームスらしさが少ないと思っている。フラームスらしい執拗なくらいの動機の変容もない。管弦楽の音の厚みもあまり感じられない。出だし厚味のある旋律とテンポがあまりに荘重であるだけ、あとに続いている曲が何かとってつけたようでバランスに欠ける。
ソロ同士の楽器の掛け合いもあまりない。バイオリンもチェロも何か消化不良の内にお終いまで来てしまった、という感じが否めない。それぞれの特徴あるメロディーも浮かんで来ない。
しかし第二楽章はそれほど違和感なく聴くことができる。特に第二楽章はブラームスらしを感じる。何処がと云われると具体的にいえるだけの力量はない。また第三楽章の後半にも二つの楽器の掛け合いの美しいところがある。それが長続きしてほしいと思う間もなく終わってしまう。
ベートーベンにも三重協奏曲というピアノ、バイオリン、チェロの協奏曲がある。この曲も残念ながら評価は作曲当時も現在も高くない。

