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伊東良徳の超乱読読書日記

はてなブログに引っ越しました→https://shomin-law.hatenablog.com/

基礎から学ぶ外国為替相場

2007-09-22 07:37:54 | 実用書・ビジネス書
 外国為替相場のでき方と外国為替証拠金取引などについて解説した本。
 公表される外国為替相場は銀行間(インターバンク)のコンピュータ・電話取引の相場で、銀行が顧客に示すレートはこれを元に各銀行が独自に買値(ビッド)と売値(オファー)を独自に決めていて、ただ買値と売値の差(スプレッド)があまり大きいと客がよそに行くので是正されるという世界だそうです。インターバンクの1ドル=120.20-25円というのはビッドが120.20円、オファーが120.25円の意味(71頁)だそうですが、各銀行が顧客に示すレートは買値と売値が違うとしても市場では買値と売値が一致しないと値が付いていないはず。インターバンク取引は2営業日後の引き渡し(56~57頁)だからその間の金利差調整(スワップ)だというなら売りと買いが違っても理解できますが・・・。
 著者は、元為替ディーラーですから外国為替証拠金取引を勧めて、一般には証拠金取引では自己資金の10~20倍程度までのレバレッジであれば実際にはあまり問題なくリスクを管理できるでしょう(116頁)などといっていますが、(外国為替に限らず商品先物でも株式でも)証拠金取引では証拠金に対する一定割合までの評価損が出ると追加証拠金を入れるか強制手じまいですから証拠金の10倍・20倍の取引をしていれば数%足らずの値動きで証拠金相当分の損が確定しかねません。外国為替証拠金取引では業者は顧客の注文で市場で外貨を売買するわけではなく相対取引ですから、基本的には顧客が儲ければ業者は損をすることになるはずです。顧客の注文とは別にリスクヘッジもしてはいるでしょうけど。それで業者が営業していけるということ自体からも、損をする顧客の方が多いはずだと思います。
 最後には外国為替相場の予測なんて項目があって期待させますが、いろいろな項目が羅列された挙げ句にマーフィーの法則まで飛び出す始末。
 基礎的な概念や仕組みの勉強にはなりましたが。


林康史 日経BP社 2007年7月30日発行
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ギャングスタ

2007-09-18 07:39:44 | 小説
 抗争に明け暮れるニューヨークのストリートギャングを主人公にした小説。
 主人公のルー・ロックは冷酷な殺し屋で射撃の腕は抜群、ハンサムで、薬物の売人をして貯めた金でかなりの金持ちで、半端じゃない読書家でギャングから足を洗って作家になろうとしているという設定。一線の殺し屋稼業の現役でありながら経済ヤクザのトップクラスというわけ。
 そして度々命を狙われながら相手を倒し続け、美女に囲まれと、都合のいい設定。血で血を洗う抗争のさなかに美女とのんびりとHしてたり、足を洗うと決めてニューヨークを出る前に銃もすべて処分したりというのもちょっと考えにくい展開。最後は、まあそりゃそうなるよねってエンディングで、釣り合いをとり、哀感を持たせていますけど。
 全体に「実体験をもとに描いた、超リアルな」(裏表紙の紹介)というには無理があり、純然たる劇画・映画っぽいエンターテインメントとして専ら高揚感を求めて読む読み物だと思います。


原題:GANGSTA
クワン 訳:バルーチャ・ハシム
青山出版社 2007年7月25日発行 (原書は2002年)
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繁盛ブログになれるSEO入門

2007-09-17 08:32:34 | 実用書・ビジネス書
 SEO(検索エンジン対策)のテクニックの近況を解説した本。
 基本は比較的シンプルですが、具体的な作り方がいろいろ書いてあって参考になりました。
 自分でやるためというよりは、このサイトへの逆アクセスをチェックしていてよく出てくる用語集的なサイトやリンク集が、こういう目的で作られているのかということが納得できました。
 検索サイトのアルゴリズムがどんどん変わっていてGoogleとYahoo!で重視する要素が変わってきている(Googleは検索エンジンの評価が高いサイトからのアンカーテキストリンクを重視、Yahoo!は同じテーマのサイトからのリンクとページ全体が示すキーワードを重視:201頁)とかは、GoogleとYahooの順位の違いを不思議に思っていた身には納得です。
 著者がHP作成業者ではなく、自分のHP(ブログ)作成の経験から読み取って書いているというのも好感が持てました。


石崎秀穂 秀和システム 2007年8月3日発行
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病的ギャンブラー救出マニュアル

2007-09-16 12:05:17 | 実用書・ビジネス書
 ギャンブルがやめられず多額の借金を作る病的ギャンブラー(ギャンブル依存症)の実態や回復のための自助グループなどについて説明した本。
 基本的には「治す」ことはできず自助グループで仲間と体験を共有して気づき回復していくしかない、それには数年単位で時間がかかる、正直いつ回復するかわからない(227頁等)とされています。その意味では「救出マニュアル」と言っても結局は、家族は借金を肩代わりしたりせず本人に情報を与え(できれば自分の意思で)自助グループか回復施設に行かせなさいということになります。
 依存症の実態はそうなのだろうと思いますが、他方執筆者の多くが回復施設のNPO法人の関係者で、その施設に誘導するというパターンの本にはちょっと構えてしまいます。本には料金のことが全く書かれていないことも(HPで調べたら、通いのプログラムは無料だそうですが、施設入所になると毎月十数万円かかるようです。まあHPの方に明示されてますからいい方でしょうけど)。
 この本では、ギャンブル依存症が回復するまで債務整理はするな(「行ってはいけないところ」として簡単に債務整理だけを引き受けてくれる弁護士・司法書士のところが挙げられています:145頁)として、棚上げにしておいていいということが説明されています(171~184頁、194~196頁等)。担保のない借入だけで相手の貸金業者が法的手続を取らない場合はその通りですが、自宅などが担保に入っていたり保証人がいたりすれば自宅が競売されたり保証人に請求が行きますし、サラ金などの担保のない借入でも裁判を起こされた上で自宅や給料を差し押さえられることもあります。この本の立場は、病的ギャンブラーは仕事を辞め自宅も処分して回復施設に入ってリハビリしろということのようです(20頁)から、資産もどうせ手放すことになり、仕事もやめるから給料差押えも怖くないということかも知れません。それも1つの考えですが、それでは家族はたまらないでしょうし、そういった100か0か的なところ以外の解決が必要な場合が多いと思います。この本の著者からは、甘いと言われるのでしょうが。
 執筆者の中に病的ギャンブラー本人が2人入っていてその人の体験やそれ以外の体験が書かれていて、そのあたりを中心にした病的ギャンブラーの実態や心理についての話が、私には一番参考になりました。


伊波真理雄編著 PHP研究所 2007年7月23日発行
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美しき傷

2007-09-15 11:25:35 | 物語・ファンタジー・SF
 マケドニアのアレクサンドロス大王のペルシャ・インド遠征を題材に、アマゾネスの女王タレストリア(後にアレストリア)をアレクサンドロスが妻にするという設定を加え、アレクサンドロスとタレストリアの生き様と愛を描いた物語。
 幼少期虐待され、父の暴虐を呪ったアレクサンドロスは、父を暗殺して王となるや残虐の限りを尽くし、それに対する違和感や苦悩をほとんど見せません。タレストリアと恋に落ちた後もタレストリアをおいてインド遠征の戦いに明け暮れます。ラストで瀕死の重傷を負いほとんど動けなくなってアマゾネスに同行して戦いを捨て自然に生きることになりますが、それは本人の選択とは言えません。アレクサンドロスの運命の皮肉を書きたいのかも知れませんが、人間としての成長・変化の過程が読み取れません。
 タレストリアの方も強靱な戦士として戦闘に明け暮れていたものが、アレクサンドロスと恋に落ちるや街の王宮に囲われただの待つ女になってしまいます。物語はアレクサンドロス、タレストリアに加えてタレストリアの侍女タニアの3者の視点から交互に描かれ、戦いと仲間たちを捨てたタレストリアへの批判的な視点が混じりますが、タレストリアの変貌もただ愛に目覚めたというだけで、今ひとつ納得できる流れになりません。自立した女も強い男と恋に落ちればただの専業主婦・産む性になるのが幸せよって言っているようで嫌な感じ。ラストでアレクサンドロスが瀕死の重傷を負ってアマゾネスに戻るタレストリアと同行というか連れて行かれるので逆転はしますが、それも単に運命のいたずらでしかたなくって感じもして主体的な選択を読み取りにくい。
 女性作家が強靱な戦士として生きたアマゾネスの女王を描くならもっと主体的な人生を描いて欲しいし、アレクサンドロスを題材にするならば、より内面的な成長や苦悩を描いて欲しいと思います。今ひとつ人間としての生き様や内面の変化というのが書き込めていない気がしました。


原題:Alexandre et Alestria
シャンサ 訳:吉田良子
ポプラ社 2007年7月27日発行 (原書は2006年)
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絶妙な「教え方」の技術

2007-09-15 10:41:53 | 実用書・ビジネス書
 上司が部下に仕事を教えるときの上手な教え方についてのビジネス書。
 前半は臨床心理学っぽく書かれていて、後半はビジネス書っぽく書かれています。
 基本的に1項目4頁でまとめられているところが、ビジネス書として読みやすく、他方流れとしてあるいは体系的には捉えにくい感じ。


戸田昭直 明日香出版社 2007年8月31日発行
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行列ができる店はどこが違うのか

2007-09-11 07:38:31 | 実用書・ビジネス書
 飲食店について、どのような店が流行らないか流行るかについて、コンサルタントの立場から解説した本。
 私が読んだ限りでは、著者の言いたいことは、まじめにほどほどの価格で価格のわりにはいい味を提供しているそこそこの店(あるいは総合店は高い店)は印象に残らずリピーターを確保できない、ターゲットをはっきりさせてわかりやすいコンセプトを打ち出してそれをはっきり印象づけることが必要だというようなところだと思います。
 普通のメニューではなく印象に残るものを食券ボタン等で注文しがちなレイアウトにして再来を確保した(21~23頁)とか、表メニューは3つだけで常連客には様々な裏メニューを出してリピーターの人気を保っているハンバーガーショップ(32~34頁)とか、店の印象と価格を一致させろ(40~42頁)とか、従業員はサルと思って接客のコツは具体的に指導しろ(138~142頁)とか、個別のエピソードは結構面白く読めます。
 ただ、全体の流れは今ひとつ統一感がなくこの手のビジネス書にしてはわかりにくい感じ。


大久保一彦 ちくま新書 2007年6月10日発行
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ダンサー

2007-09-09 07:49:15 | 小説
 大学の理事長の息子で女性を監禁した挙げ句に逃走中事故にあい植物状態のストーカーの遺伝子を用いてヒヒと人間のキメラとして生み出された実験動物「ダンサー」がストーカーの記憶と意思/命令を受け継いでその被害者女性を追うというシチュエーションに、それを阻止しようとする研究者、巻き込まれたその父親と被害者とその周辺人物たちを絡めたホラー系アドベンチャー小説。
 ひょっとしたら推理小説としても書かれているのかも知れませんが、普通に読めば次が見える展開で意外性はほとんどなし。
 遺伝子が記憶を伝えたり、ましてや現在の命令を伝えたり遺伝子提供者と被提供者が一蓮托生だったりする設定はかなり無理があり、作者も科学では説明できない話として紹介するしかないわけですが(245~246頁あたりで説明を試みてはいますが・・・)、そのあたりについての抵抗感がどれくらいかによって評価が異なりそう。
 遺伝子研究をめぐる陰謀と「ダンサー」の襲撃と闘う冒険、親子の人間関係あたりでシンプルに読めばエンターテインメントとしてはまあいい線かという気がします。ストーカーの命令に踊らされる「ダンサー」の運命も哀しいところですけど。
 細かいところですが、初期に登場するアーミーショップ店主の田代和秀(16頁)と中盤で登場する左官屋田代裕司(184頁)が同姓だけど何の関係もない(親族関係等の説明が最後までない)というのはちょっと。同姓の人物が出てきたら後から絡んでくるのがお約束だと思うんですが。


柴田哲孝 文藝春秋 2007年7月30日発行
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もうガマンできない!広がる貧困

2007-09-08 08:16:02 | ノンフィクション
 労働分野の「規制緩和」で過労死予備軍の正社員と貧困・餓死予備軍の非正規雇用に2局化し、働けど働けど生活できる賃金も得られない「ワーキングプア」が増え続け、「自己責任」とか「自立支援」とかいいながらセイフティネット(社会保険・福祉)を切り下げ、生活保護も水際で追い返して申請させないというこの国の現状を、社会的弱者や労働の観点から報告した3.24東京集会の報告をベースに編集した本。
 DV被害者や過労死遺族、ネットカフェ難民たちの報告が生々しく、哀れと怒りを感じました。
 20年ほど前から徐々に進み、ここ数年かなり露骨になった、労働分野での企業のやりたい放題と福祉切り下げによる弱肉強食化とそれを進めてきた政治・官僚・財界の悪辣さを改めて感じます。
 この本には直接書いていませんが、こういうやり方は、個別企業の短期的な儲けにはつながっても、労働者の収入減少と生活破壊で個人消費が伸びなくて長期的には企業の業績を悪化させ、税収と社会保険料収入も減少して(払えない人が増えてますから)財政破綻にもつながるということも連中は考えていないのか、最近の政治家・役人・財界人のレベルの低さにあきれます。


宇都宮健児、猪股正、湯浅誠 明石書店 2007年7月10日
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川の光

2007-09-06 18:01:56 | 物語・ファンタジー・SF
 河原に住んでいたクマネズミ親子が川の暗渠化工事のために住処を失い、新たな住処を求めて長旅に出る物語。
 上流地域一帯を支配するドブネズミたちの妨害、大雨、下水道での彷徨と増水、ドブネズミたちによる監禁、ノスリの襲撃、排水管への幽閉、大雪など度重なる試練を経て子どもたちが成長してゆく姿が読みどころです。下水管の川下りとか、バスに乗り込んでの旅とか、ピンチの度に信じられないような都合のいい助けが現れたり、ネズミたちが犬や猫、雀やモグラに助けられ友情を深めていくなど、いかにも子ども向けではありますが、楽観的な明るさも好感が持てます。
 こういう童話が読売新聞夕刊の連載というのは、ちょっと驚き。私は新聞小説ってまじめに読み続けたことないんですが、最近の新聞連載っていうと日経新聞のH系の印象が強かったこともあり、意外でした。大人が読み続けるにはちょっと気恥ずかしい感じがしますけど。


松浦寿輝 中央公論新社 2007年7月25日発行
読売新聞夕刊2006年7月25日~2007年4月23日連載
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