伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

リビアの小さな赤い実

2007-09-22 08:05:14 | 小説
 カダフィ政権下のリビアでの反政府活動家の様子をその息子の立場から描いた小説。
 描かれている反政府活動家の家庭は、夫は滅多に家庭に帰らない、帰ってきても子どもとあまりつきあわない、妻は心の病を持ち結婚を後悔し、子どもは父親のことを好きだといいながらも反政府活動家仲間が逮捕されるや親友だったその子を罵り裏切りいじめ、政府の手先に優しくされると父親が持っていた本を渡したり父親の仲間の名前をいったりするという始末。しかも父親が拷問の末仲間のことを白状して傷だらけで戻されると妻は心の病も治って夫と仲良くなる・・・。まるで反政府活動家の家庭がいかに悲惨で反政府活動をあきらめることがいいことだといいたいかのよう。
 主人公の少年は親友を裏切った瞬間だけは後悔しますが、その後その少年が幼なじみと結婚すると聞いて自分の方が幸せにできるのになどと思うなど、最後までいやな奴だし。まあ9歳の少年だからしかたないと読むしかないんでしょうけど。
 もちろん、カダフィ政権の悪辣ぶりは描かれていて、強権政治が弱い人々をこのように歪めてしまうことを描いているのでしょうけど、なんだかなあ。どうも主人公の少年の行動・考えに違和感ばかりを感じ、爽やかさが感じられない展開も合わせ、読み進むのがおっくうで、読むのにとても時間のかかる本でした。
 ストーリーとは関係ないけど、リビアではよその人との間でも親を子どもの名前との関係で呼ぶんですね(スライマンの父はブー・スライマン、母はウンム・スライマン)。ちょっとビックリ。それからリビアでは反政府活動家の尋問や裁判・処刑をテレビで実況中継するんでしょうか。尋問なんかテレビでやったらかなりリスクが大きいと思うんですが・・・


原題:IN THE COUNTRY OF MEN
ヒシャーム・マタール 訳:金原瑞人、野沢佳織
ポプラ社 2007年8月6日発行 (原書は2006年)
2007年英国王立文学協会オンダーチェ賞
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基礎から学ぶ外国為替相場

2007-09-22 07:37:54 | 実用書・ビジネス書
 外国為替相場のでき方と外国為替証拠金取引などについて解説した本。
 公表される外国為替相場は銀行間(インターバンク)のコンピュータ・電話取引の相場で、銀行が顧客に示すレートはこれを元に各銀行が独自に買値(ビッド)と売値(オファー)を独自に決めていて、ただ買値と売値の差(スプレッド)があまり大きいと客がよそに行くので是正されるという世界だそうです。インターバンクの1ドル=120.20-25円というのはビッドが120.20円、オファーが120.25円の意味(71頁)だそうですが、各銀行が顧客に示すレートは買値と売値が違うとしても市場では買値と売値が一致しないと値が付いていないはず。インターバンク取引は2営業日後の引き渡し(56~57頁)だからその間の金利差調整(スワップ)だというなら売りと買いが違っても理解できますが・・・。
 著者は、元為替ディーラーですから外国為替証拠金取引を勧めて、一般には証拠金取引では自己資金の10~20倍程度までのレバレッジであれば実際にはあまり問題なくリスクを管理できるでしょう(116頁)などといっていますが、(外国為替に限らず商品先物でも株式でも)証拠金取引では証拠金に対する一定割合までの評価損が出ると追加証拠金を入れるか強制手じまいですから証拠金の10倍・20倍の取引をしていれば数%足らずの値動きで証拠金相当分の損が確定しかねません。外国為替証拠金取引では業者は顧客の注文で市場で外貨を売買するわけではなく相対取引ですから、基本的には顧客が儲ければ業者は損をすることになるはずです。顧客の注文とは別にリスクヘッジもしてはいるでしょうけど。それで業者が営業していけるということ自体からも、損をする顧客の方が多いはずだと思います。
 最後には外国為替相場の予測なんて項目があって期待させますが、いろいろな項目が羅列された挙げ句にマーフィーの法則まで飛び出す始末。
 基礎的な概念や仕組みの勉強にはなりましたが。


林康史 日経BP社 2007年7月30日発行
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