ロシアでチェチェン戦争の実像やプーチン政権の非道ぶりを報道し続け、2006年10月7日に暗殺されたジャーナリストの取材日記。2003年12月から2005年8月までのものが(ロシアでは出版されず)イギリスで出版するため翻訳中に著者が暗殺されてしまったことになります。
2004年の大統領選挙の対立候補の1人が失踪し大統領府の特別宿泊施設からウクライナのキエフの要人専用宿舎に移送されて発見された(135~138頁)、イングーシで頻発している誘拐事件に地元政権の関係者やFSB(ロシア連邦保安局)イングーシ支局が関与している証拠を添えて検事総長に報告書を提出した検事補は殴られて拷問された姿が見られた後行方不明(170~172頁)、反政府ゲリラを逮捕しに来た兵士は別の番地の家に踏み込んで無実の者を叩きのめした挙げ句に射殺し謝罪すらしない(216頁)、村人を誘拐し暴行して財産を強奪した兵士を告発した村長は射殺された(477~478頁)・・・これって、軍事政権下の途上国か、米軍占領下のイラクかと思ってしまいます。選挙では同じパスポート番号の者が複数の投票をしている(178~179頁)とか、2004年になって知事の直接選挙が廃止された(273頁、286頁)とか、今時信じられない野蛮さ。
チェチェンをはじめとする地方の政権も民警も反政府勢力も入り乱れての暴虐ぶりとか、読んでいて混乱したり暗澹たる気持ちになる部分が多いし、ところどころロシアの実情がわかりにくくて著者の怒りの方向や理由が見えにくいところもないではないし、日々の記録なので話題があちこちに行くこともありますが、読み応えのある本です。
2005年9月から2006年10月分があると、著者の暗殺に至る事情にもより迫れたかも知れません。その原稿は亡き者にされているかも知れませんが、発掘して出版して欲しいものです。

アンナ・ポリトコフスカヤ 訳:鍛原多恵子
NHK出版 2007年6月30日発行 (原書=英語版も2007年)
2004年の大統領選挙の対立候補の1人が失踪し大統領府の特別宿泊施設からウクライナのキエフの要人専用宿舎に移送されて発見された(135~138頁)、イングーシで頻発している誘拐事件に地元政権の関係者やFSB(ロシア連邦保安局)イングーシ支局が関与している証拠を添えて検事総長に報告書を提出した検事補は殴られて拷問された姿が見られた後行方不明(170~172頁)、反政府ゲリラを逮捕しに来た兵士は別の番地の家に踏み込んで無実の者を叩きのめした挙げ句に射殺し謝罪すらしない(216頁)、村人を誘拐し暴行して財産を強奪した兵士を告発した村長は射殺された(477~478頁)・・・これって、軍事政権下の途上国か、米軍占領下のイラクかと思ってしまいます。選挙では同じパスポート番号の者が複数の投票をしている(178~179頁)とか、2004年になって知事の直接選挙が廃止された(273頁、286頁)とか、今時信じられない野蛮さ。
チェチェンをはじめとする地方の政権も民警も反政府勢力も入り乱れての暴虐ぶりとか、読んでいて混乱したり暗澹たる気持ちになる部分が多いし、ところどころロシアの実情がわかりにくくて著者の怒りの方向や理由が見えにくいところもないではないし、日々の記録なので話題があちこちに行くこともありますが、読み応えのある本です。
2005年9月から2006年10月分があると、著者の暗殺に至る事情にもより迫れたかも知れません。その原稿は亡き者にされているかも知れませんが、発掘して出版して欲しいものです。

アンナ・ポリトコフスカヤ 訳:鍛原多恵子
NHK出版 2007年6月30日発行 (原書=英語版も2007年)