戦争の惨禍を描き反戦を訴える美術(主に絵画)作品の歴史を紹介した本。
さまざまな絵画に込められた反戦のメッセージとそのように見るべき/見られる作品が紹介され、多くの新たな発見がありました。有名な画家では、生前にすでに成功し大きな工房で大量の絵画を生産していたルーベンスの絵画の反戦メッセージを冒頭で紹介していて(17~22ページ)、ルーベンスに対する認識を改めました。無名どころはもちろん、知らなかった画家が多く、今後気にしておきたいと思いました。
それぞれの作品や画家に対する著者の評価については、議論の余地がありそうです。著者自身が、「残虐で苦痛なイメージによって戦争を告発することと、戦争をいわば一種の見世物にすることとのあいだには、必ずしも明確な境界線が引けるわけではない。両者の違いは紙一重である」(30ページ)とし、「許しがたいものをとらえたイメージは、そのイメージ自体を許しがたいものへと一転させるかもしれない」(188ページ)としていることに注目しておきたいところです。
埋もれた作品と画家への認識のみならず、戦争のプロパガンダと反戦メッセージの評価や議論に関しても刺激を受ける本でした。
岡田温司 ちくま新書 2023年2月10日発行
さまざまな絵画に込められた反戦のメッセージとそのように見るべき/見られる作品が紹介され、多くの新たな発見がありました。有名な画家では、生前にすでに成功し大きな工房で大量の絵画を生産していたルーベンスの絵画の反戦メッセージを冒頭で紹介していて(17~22ページ)、ルーベンスに対する認識を改めました。無名どころはもちろん、知らなかった画家が多く、今後気にしておきたいと思いました。
それぞれの作品や画家に対する著者の評価については、議論の余地がありそうです。著者自身が、「残虐で苦痛なイメージによって戦争を告発することと、戦争をいわば一種の見世物にすることとのあいだには、必ずしも明確な境界線が引けるわけではない。両者の違いは紙一重である」(30ページ)とし、「許しがたいものをとらえたイメージは、そのイメージ自体を許しがたいものへと一転させるかもしれない」(188ページ)としていることに注目しておきたいところです。
埋もれた作品と画家への認識のみならず、戦争のプロパガンダと反戦メッセージの評価や議論に関しても刺激を受ける本でした。
岡田温司 ちくま新書 2023年2月10日発行