伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

ルポ特殊詐欺

2023-05-07 15:43:15 | ノンフィクション
 オレオレ詐欺、振り込め詐欺、預貯金詐欺(警察官を名乗りあなたのキャッシュカードが不正利用されているなどとしてキャッシュカードと暗証番号を封筒に入れさせて封印して自分で保管して置いてくれといって封印のための印鑑を取りに行く隙に用意してきた別の封筒とすり替えてキャッシュカードと暗証番号を手に入れて預金を引き出す手口)等の実情について、神奈川新聞に掲載した記事を元に出版した本。
 折しも今日(2023年5月7日)、今年の1月から3月の特殊詐欺被害が前年同期に比べて、発生件数でも被害額でも3割近く増加していると警察庁が注意を呼びかけているとNHKが報じています(→いつまでリンクが残るかは不明ですがこちら)。「世に盗人の種は尽きまじ」とはいえ、被害が今また増えているということは、改めて心に留めておくべきことでしょう。
 かけ子(被害者:カモに電話をかけて騙す役)やその上の幹部が摘発されないように、記録も残らないアプリ(テレグラムなど)で、受け子(被害者と接触して現金やキャッシュカード等を受け取る役)や出し子(騙し取ったキャッシュカードでATMから現金を引き出す役)に指示を出し、正体を示さず接触しないで犯罪を遂行する様子、そのため現金やキャッシュカードを持つ受け子や出し子に持ち逃げ(飛び)されるリスクがあり、それを防ぐため受け子や出し子から事前に顔写真や身分証明書、家族の情報を取り、裏切ったり失敗した際にそれを用いて脅迫したりさらなる犯行へと引き込む様子、かけ子の下に横取りのために偽の受け子や出し子を潜入させるグループの存在など、犯罪者側の矛盾と弱み、悪辣さがいろいろ書かれているのが、参考になりました。
 金に困って twitter 等で「闇バイト」とか「グレーバイト」とかを自ら探して犯罪に手を染め止めたくなっても脅されて抜けられなくなるというケースがたくさん紹介されています。そういうのを厳罰や啓発で入り口で止められるのか、若者が生活苦に陥る、生活苦に陥ったときにセーフティネットがない(自己責任と声高にいいたがる)社会をなんとかしないといけないのではないかとも思いますが、弁護士の立場からは、少なくとも、借金を抱えてるからと「グレー」やましてや「闇」と知りつつ手を染めるくらいなら、破産した方がいいよといっておきます。


田崎基 ちくま新書 2022年11月10日発行
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