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伊東良徳の超乱読読書日記

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海神

2022-02-28 23:41:01 | 小説
 岩手県中部の本土から船で5分程度に位置する天ノ島での東北地方太平洋沖地震・津波被災と復興支援金をめぐる4億円余の横領の顛末をテーマとした小説。
 震災の日に生まれるとともに父母を亡くした遺児千田来未、天ノ島出身の新聞記者菊池一朗、被災地の映像を見てボランティアとして天ノ島を訪れ2年近くとどまっていた東京の学生椎名姫乃、震災遺児のための養護施設「ナナイロハウス」の臨時職員堤佳代の視点からの2011年、2012年、2013年、2021年を交差させる形で話が展開していきます。
 震災で家族を失った人たちの心情に涙し、その流れで被災者を食い物にする犯罪者への怒りを持ちますので、感情移入しやすい読んでいて情動を揺さぶられやすいお話ですが、悪者が社会的背景を持たないチンケな個人と設定されている、その悪者にだけ米軍の「トモダチ作戦」を批判させ(94ページ)地元民はみんな米軍に感謝した挙げ句「沖縄から出ていけなんてとんでもねぇ。ずーっと居てもらっていい」などと言っている(83~84ページ)というあたりに作者の現状・現政権支持の立場性が見える(だいたい、何で岩手の離島の被災者の口を使って沖縄のことに口を出す?)など、被災の重い事実を使って書いたわりには何を訴えたかったのかなという疑問を持ちました。


染井為人 光文社 2021年10月31日発行
コメント
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