小説家は儲からないというのは嘘だ、実際に儲けている作家はいる、儲けている当事者は沈黙を守りがちだと言って、才能ある小説家志望者が夢を断念しないようにと小説の書き方と出版契約と交渉の注意点、デビュー後儲けるためになすべきことなどを説明した本。
「作家で億は稼げません」(吉田親司、エムディエヌコーポレーション、2021年)(2022年2月23日の記事で紹介)が、この本に対抗して書かれたというので、この本も読んでみました。「作家で億は稼げません」が神をも恐れぬ挑発的なタイトルだとすれば、こちらは税務署をも恐れぬ挑発的なタイトルというべきでしょうか。もっとも、著者が売れている作家で儲けていることは公知の事実で、正しく申告しているのでしょうから、税務署など怖くないということでしょう。
小説の書き方(表現のルールやゲラ校正のしかたまで!)から、編集者との付き合い方(売り込み方)、出版契約の確認や修正交渉、映像化のメリットとデメリット、テレビ出演に至るまで、売れた場合によりうまく効率的に儲けるテクニックが詳細に説明されていて、小説家志望の読者に、売れた場合にはこうすればいいんだという捕らぬタヌキの皮算用というか、幻想/夢想を誘っています。すべて、自分に売れる小説が書けたならという、一昔前の例えでいうと「ただし、イケメンに限る」とかいうことですが。
売れている小説(そうでなければそもそも映像化の話が出ないわけですが)の場合、映像化のメリットは大してない、よほど宣伝費のかかった大規模な映像化でない限り原則本の売れ行きにはめざましい影響はない、逆に映像化された作品(その内容は原作とかなり違うこともありそれに原作者は基本的に文句も言えない)が商業的に失敗した場合映像作品と一緒くたにされて原作もダメだったと評価され売上が落ちる(216~236ページ)などの指摘は、たぶん経験者でないと語れないエピソードでしょうね。目からうろこです(まぁ、たっぷり儲けている作家は、ときにこういう事故/被害に遭っても、余裕でいい勉強になりましたですむのでしょう)。
そういったタイトルに沿った話も充実していますが、実はこの本の一番の読みどころは小説の書き方として著者が「想造」と名付けた手法の紹介にあるように思えます。簡単にいえば、メインのキャラクラー7名とサブのキャラクター5名を設定し(好きな俳優の写真を割り当て、名前をつけプロフィールを設定する)、舞台を3箇所設定し、脳内でそれらを眺め絡んでいく様子を空想し続ける、うまく絡んでいかなければキャラクターを入れ替えるなどして結末に至るまで空想を続けるというものです。私も、自分のサイトで「その解雇、無効です!」というラブコメ仕立ての労働(解雇)事件小説を書いていますが、キャラクター設定をしてしまうと、ラブコメの部分は、このキャラとこのキャラがこういう場面に遭遇したらこういう展開になるよねというのは書いていればほぼ自動で頭に浮かんで来ます。そういうところからも、かなり実用的なやり方だろうと思います。もっとも、著者は結末までの空想ができあがるまで一切書き始めるなといっているので、私の経験とは違うことを勧めているわけですが。

松岡圭祐 新潮新書 2021年3月20日発行
「作家で億は稼げません」(吉田親司、エムディエヌコーポレーション、2021年)(2022年2月23日の記事で紹介)が、この本に対抗して書かれたというので、この本も読んでみました。「作家で億は稼げません」が神をも恐れぬ挑発的なタイトルだとすれば、こちらは税務署をも恐れぬ挑発的なタイトルというべきでしょうか。もっとも、著者が売れている作家で儲けていることは公知の事実で、正しく申告しているのでしょうから、税務署など怖くないということでしょう。
小説の書き方(表現のルールやゲラ校正のしかたまで!)から、編集者との付き合い方(売り込み方)、出版契約の確認や修正交渉、映像化のメリットとデメリット、テレビ出演に至るまで、売れた場合によりうまく効率的に儲けるテクニックが詳細に説明されていて、小説家志望の読者に、売れた場合にはこうすればいいんだという捕らぬタヌキの皮算用というか、幻想/夢想を誘っています。すべて、自分に売れる小説が書けたならという、一昔前の例えでいうと「ただし、イケメンに限る」とかいうことですが。
売れている小説(そうでなければそもそも映像化の話が出ないわけですが)の場合、映像化のメリットは大してない、よほど宣伝費のかかった大規模な映像化でない限り原則本の売れ行きにはめざましい影響はない、逆に映像化された作品(その内容は原作とかなり違うこともありそれに原作者は基本的に文句も言えない)が商業的に失敗した場合映像作品と一緒くたにされて原作もダメだったと評価され売上が落ちる(216~236ページ)などの指摘は、たぶん経験者でないと語れないエピソードでしょうね。目からうろこです(まぁ、たっぷり儲けている作家は、ときにこういう事故/被害に遭っても、余裕でいい勉強になりましたですむのでしょう)。
そういったタイトルに沿った話も充実していますが、実はこの本の一番の読みどころは小説の書き方として著者が「想造」と名付けた手法の紹介にあるように思えます。簡単にいえば、メインのキャラクラー7名とサブのキャラクター5名を設定し(好きな俳優の写真を割り当て、名前をつけプロフィールを設定する)、舞台を3箇所設定し、脳内でそれらを眺め絡んでいく様子を空想し続ける、うまく絡んでいかなければキャラクターを入れ替えるなどして結末に至るまで空想を続けるというものです。私も、自分のサイトで「その解雇、無効です!」というラブコメ仕立ての労働(解雇)事件小説を書いていますが、キャラクター設定をしてしまうと、ラブコメの部分は、このキャラとこのキャラがこういう場面に遭遇したらこういう展開になるよねというのは書いていればほぼ自動で頭に浮かんで来ます。そういうところからも、かなり実用的なやり方だろうと思います。もっとも、著者は結末までの空想ができあがるまで一切書き始めるなといっているので、私の経験とは違うことを勧めているわけですが。

松岡圭祐 新潮新書 2021年3月20日発行