志田漱石を名乗る小説家が、交通事故で死んで天国で亡き妻と再会するという設定を題材とした小説。
夏目漱石の「夢十夜」の第1夜の死ぬ間際に墓の脇で待っていてくれたらまた逢いに来る、100年待っていてくれと言い残した女のエピソードを繰り返し取り上げて思案し、自分や妻の若い頃の霊と出会うというイメージを繰り返し、不思議な独特の雰囲気を醸し出しています。
しかし、最初は妻の咲子が死んだのは5年前で、娘の愛は仕事中で母の死に目に会えなかったという設定で(28ページ)、愛は母親の声を覚えている(45ページ)ということだったのに、最後には咲子は三十数年前に愛の出産の際に死んだことになっています(204ページ等)。天国の話であったり霊が登場する話でもあり、パラレルワールドまで示唆されている(75ページ)のですが、だからといって何でもありというのは、釈然としません。こういうやり方を鷹揚に受け止められる人にはいいのでしょうけれど、私は設定を大きく変えて説明もつけずにいるのには我慢がならないので、ぶん投げたくなりました。

カマチ アメージング出版 2021年11月6日発行
夏目漱石の「夢十夜」の第1夜の死ぬ間際に墓の脇で待っていてくれたらまた逢いに来る、100年待っていてくれと言い残した女のエピソードを繰り返し取り上げて思案し、自分や妻の若い頃の霊と出会うというイメージを繰り返し、不思議な独特の雰囲気を醸し出しています。
しかし、最初は妻の咲子が死んだのは5年前で、娘の愛は仕事中で母の死に目に会えなかったという設定で(28ページ)、愛は母親の声を覚えている(45ページ)ということだったのに、最後には咲子は三十数年前に愛の出産の際に死んだことになっています(204ページ等)。天国の話であったり霊が登場する話でもあり、パラレルワールドまで示唆されている(75ページ)のですが、だからといって何でもありというのは、釈然としません。こういうやり方を鷹揚に受け止められる人にはいいのでしょうけれど、私は設定を大きく変えて説明もつけずにいるのには我慢がならないので、ぶん投げたくなりました。

カマチ アメージング出版 2021年11月6日発行