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伊東良徳の超乱読読書日記

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ノースライト

2022-02-19 00:25:07 | 小説
 インテリアプランナーのゆかりと離婚し、荒れた生活を送っていたが3年前に大学の建築科で同期だった岡嶋に拾われて再起しつつあった一級建築士青瀬稔が、信濃追分の80坪の土地に3000万円であなた自身が住みたい家を建ててくれという依頼を受けて北からの光(ノースライト)を採光の主役とする木の家を造り、のめり込んで作り込んだその家は大手出版社が出版した「平成すまい200選」にも掲載されたが、肝心の施主からは完成・引渡後連絡がなく、不審に思った青瀬が現地を訪れると施主吉野陶太が転居してきた形跡はなく、吉野とは連絡が取れなかった…という設定のミステリー小説。
 戦前にナチスの手を逃れて日本に滞在していたドイツ人建築家ブルーノ・タウトが製作したとおぼしき椅子が吉野邸に残置されていたことを手掛かりにタウトの日本での足跡を追う青瀬の調査と思考の動き、岡嶋設計事務所に降って湧いた地方都市が構想した地元出身の画家の記念館建築コンペへの参加と接待疑惑、熟練型枠職人だった父がダム建設現場を渡り歩いたのに連れられて転校を重ねた青瀬の少年時代、中学生になった娘日向子への思いと元妻ゆかりへの未練に揺れる青瀬の心情などを交差させながらの家族のルーツ、家族への思いをテーマにした作品です。
 あっと思わせるような謎解きのミステリーとはいいにくいですが、ほのぼのとした読後感を持てる作品だと思います。


横山秀夫 新潮文庫 2021年12月1日発行(単行本は2019年2月)
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