goo blog サービス終了のお知らせ 

泉山の草木花

ひそやかに咲く花々や、やさしさに溢れた植物を皆さんに紹介したいと思います。

こばのみつばつつじ

2012-01-20 | 雑感
  こばのみつばつつじ  ツツジ科
冬芽を見る楽しみは、冬の森の醍醐味のひとつです。
いろいろな形と色と、花芽と葉芽の見極め、
これは何の冬芽なのか、頭をひねる、楽しみ…

落葉樹だけでなく、常緑樹にも様々な冬芽があり、
それぞれに、春の息吹を包み込んで、じっとしています。

裸のまま(葉がそのままにかたまっているもの)や、よろいを着たもの、
艶のあるものや、粘つくもの、ふかふかの毛をまとったもの…

ああ、春が待ち遠しくなりますね。

すだじい

2011-12-31 | 雑感
  すだじい  ブナ科
平成22年1月3日のスダジイの空です。
この小さな森の下には、さまざまな営みがありました。
今年のこの小さな森も、また、さまざまな命を包み、
空にたくさんのたましいを飛ばすのでしょうか。

私たちの一年は、このスダジイにとっては、
ほんのわずかの時間かもしれませんが、
永く命をつづけるものに、見守ってもらえる喜びを感じながら、
またこの樹木と、その空を見上げて、
今年一年を前進していきたいと思います。

宜しくお願い申し上げます。

霜の花

2011-12-09 | 雑感
  霜の花
12月7日、大雪。
立冬から1ヶ月、陽射しも弱まり、
朝、霜の花を見ながら、歩む坂道の、
息白くて…。

物の色に、白が加わると、
とても印象が変わるものです。
鮮明な、清純な、無垢な色合いに感じます。

霜の白、雪の白、雲の白…

人は、風の流れと、匂いと、色彩に詩情を溢れさせて、
古代より、詩を紡いで来ました。

一年を二十四の節に分け、
さらに七十二候の詩情豊かな言葉で表現する、
感性を、われわれも身体のなかに秘めていて、
わずかな空気の変化に反応し、
体調も変化し、こころも揺れ動いているのです。

忙しくても、疲れていても、
ふとした時、風の匂いと光の濃淡を敏感に感じ取り、
この地球の大気に包まれて、詩情を忘れず、
この星に生かされていることを、感謝して、
前をしっかりと向いて、生きて行きたいものです。


やぶむらさき

2011-11-18 | 雑感
  やぶむらさき/藪紫  クマツヅラ科
ムラサキシキブという美しい植物があります。
花も実も、うっとりとするほどの樹木です。

コムラサキという可愛い植物があります。
紫色の実が鈴なりになって、それはそれは見事なのです。

ヤブムラサキという、目立たない植物があります。
花もささやかで、実も葉陰に隠れるように付いていて…

でも、このヤブムラサキに惹かれるのは、なぜでしょうか?
控えめだから?
けなげだから?

見るからに貧相な植物でも、
見方によって、観察の仕方によって、
驚異の世界を覗くことができることを、知っているから?

そうなのです。
植物画を描いていると、自然に観察が深くなり、
気づかなかった美を発見することが多いのです。

このヤブムラサキの果実。
見つめていると、紫色の珊瑚に見えてきます。
萼片の毛深いところも、チャーミングですね。
枝をルーペで覗くと、びっしりと星状毛が生えていて、
雪の結晶のようにも見えるのです。

「幹は強靭で、道具の柄や杖にする」と、
本には書いてあります。

藪の中で、人が振り返らない存在でも、
そこに存在する意味すら知らなくても、
営々と繰り返す生のいとなみの中に、
「美」を、秘めていることを、
誇りとして、ヤブムラサキさん、
いてください。

つちぐり

2011-11-04 | 雑感
  つちぐり(土栗)  ツチグリ科
ツツジ園の道のコケの上に、異星体のように乗っかっていました。
「どこから来たの」と、問いたくなりますね。

可愛いキノコです。
柿のへたのようなスカートは、湿り気を含みとこのように広がり、
乾くと白い内皮を包むように閉じて、風に吹かれて、
移動していくそうです。

キノコの本体である菌糸は、普段はなかなか眼にすることはできないけれど、
地中や樹木などあらゆるところにいて、なにかのきっかけで姿を現します。
それが「キノコ」で、繁殖のための胞子を撒布する基地ともいえます。

生命に溢れたこの地球上で、菌類の役割は大きいものがありますが、
それらはけっして単独での生存はありえず、
生命の循環の輪のなかのひとつの鎖として存在しています。

その連鎖は、複雑に入り組み、あらゆる命の生と死の繰り返しを連関付けて、
この不思議に満ちた星を形作っています。

私たちとはあまり関係深くないように見えるこのツチグリを眺めていると、
むしろ、私たちがこの地球上に生きている意味を考えさせてくれます。

それは、この地球上のどの生物も、ひとつの大きな輪のなかに生きて、
それぞれの役割を果たし、それぞれに美を形作り、
そして、消え、また産まれて、それぞれの命をつないでいっている事を。

こばのがまずみ

2011-10-21 | 雑感
  こばのがまずみ  スイカズラ科(レンプクソウ科)
赤い実を見て、美味しそうと感ずるのは、自然なことなのでしょうか。
実際には、この実は酸っぱいのですが、鳥にとってはそれほどでもないようです。

人と鳥と、もちろん味覚は違うのでしょうけれど、
植物は繁殖のために、皆さんにおいしく食べてもらいたいはずですが、
例えば、同じガマズミの仲間のカンボクの実は、苦くて、
鳥もよほど空腹でないと、食べないとか。

液果(種子のまわりに柔らかい果肉があるもの)は、誰かに食べてもらうために、
進化してきたのだと思いますが、さまざまな色や味があるのは、
特定の誰かをターゲットにしているか、あるいは食べてもらう時期をずらすために、
わざとおいしくしていないのか…

少し頭をひねってみました…
が、確かなところはわかりません。

にがくて、どうしようもない果実は山ほどあるからです。
むしろ、人が食べておいしい果実は少ないのです。

誰も彼もに食べてもらいたくないのでしょうか。
食べたら死ぬという、猛毒を持った果実すら存在します。
ただこれは、種子に猛毒があり、果肉にはないと言われているのですが、
(現地の人が食べているのを不思議がって聞いてみると、種子はぜったい噛まないそうです。
 吐き出しもせずに、そのまま呑み込んでいたそうです。)
ということは、丸呑みにする鳥たちにはこの毒は関係ないのでしょう。
特定の動物のための果実と言うことになりますね。

今から1億5千万年前、被子植物(簡単に言えば、綺麗な花を咲かせる植物)が爆発的に増えた時代、
巨大な草食恐竜たちに根こそぎ食べられないようにするために、植物自身、身体に毒を製造し、
たくわえて、自らを護ったという説もあります。
その名残りなのでしょうか。

植物はたくさんのアルカロイド(ニコチン、モルヒネ、カフェインなど数千種類)を生成していて、
人にとって、毒にも薬にもなります。
きっと、植物自身の防御と、繁殖との進化に由来するのでしょう。

赤い実に 思うこと多し 晩秋かな



つるたけだまし?

2011-09-09 | 雑感
  つるたけだまし?/鶴茸騙?  テングタケ科
キノコの形は、ほんとうにうっとりとします。
この張りのある伸びやかな緊張感!
触るとほろっとこぼれおちてしまうことを知っているからでしょうか。
思わず摘みたくなる衝動を抑えて、写真を撮りましょう。

ほんとうはひとつ摘んで、裏側の襞の形状や、柄や鍔(つば)の様子もしっかりと撮らないと、
もともと同定の難しいキノコのこと、片手落ちと知り合いのキノコ研究家ご夫婦に、たしなめられそうです。

ほんの数日間だけ見せるこの造形は、子実体(しじつたい)と言います。
子実体とは、菌類の本体である菌子体が、胞子を作るために立ち上げたものです。

これがツルタケダマシであるかどうかはさだかではありませんが、
森のなかで、いや、この地球上で、なくてはならない菌類の存在をあらためて認識することができました。

ありがとうキノコさん(毒キノコで、たとえ食べられなくても)!
ありがとう、菌類さん(味噌も醤油も、納豆も)!

 

オオアレチノギク

2011-08-12 | 雑感
  オオアレチノギク/大荒地野菊  キク科
名前の大きな、ウエスタン的彼は、南アメリカからの渡来者なのです。
開拓地にいち早く駆けつけて、恋人のヒメムカシヨモギ/姫昔蓬とともに、
一面のくさはらを(大陸的なそれを)広げるのです。

こういう形の植物に心惹かれるのは、なぜでしょうか?
セイタカアワダチソウも、ヒメジョオンも、アレチノギクにもムカシヨモギにも…

人の営みの、ちょっとしたすき間を突いて、あっというまに繁殖してしまう彼らは、
たぶんそっと、人の行動を、人間の開発行為を、見ているに違いありませんね。

よくよく観察してみると、面白い植物です!
人類よりもすぐれた適応能力を持っているに違いありません。
新天地で爆発的に広がる彼らの海には、感動すら覚えます。

くちなし

2011-06-23 | 雑感
  くちなし/梔子  アカネ科
雨のそぼ降るある日のこと、大内義弘の菩提寺の裏道をたどり、
滝へ向かう藪の中、重い空気を伝い、甘い、とても甘い香りが…
野生の梔子が咲いていたのです。

忘れえぬ香り。白く、うす黄色く、しずかに咲いている、梔子の花。

泉山の梔子も、あたり一面によい香りを漂わせて、
梅雨の曇り空を、かぐわしくしていました。

さつき

2011-06-12 | 雑感
  さつき/皐月  ツツジ科
皐月に咲くサツキは、季節の移り変わりのなかで、
重い大気に被われるこの時期を知らせ、
薄絹のとばりのように、景色をいろどりて、
人と、植物と、
生きていることと、その命のつながりと、
花のやさしさと、家族の安らぎと、
自然の持つおおらかさと、人々の歩く道と…

とりとめのない想いを、わが胸に、連れてくるのです。

梅雨のこの時期、もの思いにふける最後に、
多くの人に支えられている自分を、思い出して…