泉山の草木花

ひそやかに咲く花々や、やさしさに溢れた植物を皆さんに紹介したいと思います。

つるぼ

2011-09-30 | 草花
  つるぼ/蔓穂  ユリ科
神出鬼没というと少し言い過ぎですが、
日頃その存在を忘れていて、突然姿を現す、ツルボ。
一度その愛らしい花を見ると、忘れはしないのですが、
一年は人が、ちょうど忘れ去る、サイクル…
ちょうど、思い出すサイクルでもありますね。

時候の流れは、風や匂いや、光や、音の、
ほんのわずかな移り変わりに、五感が敏感に反応して、
感じ取り、心動かされ、そして、詩情が生まれるのですね。

暦では、長月四日。
桜の葉も色づいて、散り、
雷もその声をおさめる時候…

夜長に本を読みて、
ツルボの写真に、ほっとして…

ぬまだいこん

2011-09-22 | 草花
  ぬまだいこん/沼大根  キク科
泉山の少しじめっとした山道に咲いている、ちいさな白い花を見つけました。
以前紹介した、ヤブタバコのように、目立たず、ひっそりと咲いている、白い花。

植物好きの宿命、名がわからないととても気になるのです。
どんなささやかな植物でも、どんなにちっちゃな花でも、
名を知らないと、会話もできない…

ほんとうは、名前を知らないことが悔しくて、植物図鑑で調べるのです。
探し当てた時は、本当に嬉しいのです。

ヌマダイコンという植物に初めて出会って、名前を知って、
一気に親しみが湧くのでした。

この地球上に20万種以上あると言われている植物のひとつであることを思うと、
そして、絶滅していく多くの植物のあることを思うと、
たとえ質素であっても(人の価値観ですが)、ささやかであっても、
その生き様を大切にしたくなりますね。

くず

2011-09-16 | 草花
  くず/葛  マメ科
残暑のきびしいお彼岸前の道のかたわら、
ヌルデの花を写真におさめようと近づくと、
甘い香りがしてきます。

くずの花が、葉陰にたくさん咲き登っていました。

くずの花の色は、
中紅(なかべに)から薄紅(うすべに)の、
旗弁(きべん/上弁)はやさしくて、

臙脂色(えんじいろ)から深緋(こきあけ)の、
唇弁は、匂い袋のようで、
折り重なりて、

緋褪色(ひさめいろ)に褪めてゆく、枯れ花も、いとおしくて…

仲秋の山すそは、真昼の虫の音とともに、
少し、物憂い感をおぼえますね。

葉月の名のとおり、桜葉はすでに落ちはじめて、
夕暮れのすじ雲が、波をつくって、空にヴェールを掛けています。

つるたけだまし?

2011-09-09 | 雑感
  つるたけだまし?/鶴茸騙?  テングタケ科
キノコの形は、ほんとうにうっとりとします。
この張りのある伸びやかな緊張感!
触るとほろっとこぼれおちてしまうことを知っているからでしょうか。
思わず摘みたくなる衝動を抑えて、写真を撮りましょう。

ほんとうはひとつ摘んで、裏側の襞の形状や、柄や鍔(つば)の様子もしっかりと撮らないと、
もともと同定の難しいキノコのこと、片手落ちと知り合いのキノコ研究家ご夫婦に、たしなめられそうです。

ほんの数日間だけ見せるこの造形は、子実体(しじつたい)と言います。
子実体とは、菌類の本体である菌子体が、胞子を作るために立ち上げたものです。

これがツルタケダマシであるかどうかはさだかではありませんが、
森のなかで、いや、この地球上で、なくてはならない菌類の存在をあらためて認識することができました。

ありがとうキノコさん(毒キノコで、たとえ食べられなくても)!
ありがとう、菌類さん(味噌も醤油も、納豆も)!

 

がんくびそう

2011-09-02 | 草花
  がんくびそう/雁首草  キク科
秋の山道で出会う、ささやかな草のひとつにガンクビソウの仲間があります。
秋の七草のように風情ある花の多い中、人知れずしずかに咲いて、しずかに稔る花もあります。

ささやか、とか、人知れず、とか、風情とか、人の価値観でしかなく、
そうではない、そういう価値観を越えたものがこの地球にはあるのですね。

そういう自然界の極致のバランス美を発見したときの喜びを大切にしたいと思います。

このガンクビソウ、花が煙管(きせる)の雁首に似ているところからの名前ですが、
ルーペで花を見ると、その細かいつくりに驚かされます。
人の視力ですべての価値観、美を決定するなんて、さびしいと感じます。

視野の広い人間になりたいと、いつも思います。

「人知れず」咲く花のこころにそっと寄り添いて…