泉山の草木花

ひそやかに咲く花々や、やさしさに溢れた植物を皆さんに紹介したいと思います。

りょうぶ

2012-02-24 | 樹木
  りょうぶ/令法  リョウブ科
春先の明るい林のなかで、白い樹皮が目立つ木は、リョウブです。
里山に多い樹木で、たいてい株立ちとなって、
そのまだら模様で、それとすぐにわかる特色を持っています。

たとえ大風で倒れたとしても、また切られても、
萌芽力が強く、根元や幹からたくさんの新枝を出し、
再生していきます。

リョウブ科はツツジ科に近い樹木で、
アジアとアメリカ大陸に60種ほど知られていて、
隔離分布する植物のひとつです。

隔離分布は、大陸移動や気候変動等が原因で、
離れた場所に同じ種類の生物が生息していることを言います。

リョウブもかつては、氷河が後退していた時期には、
周極地域に繁茂していたものが、寒冷化とともに南下し、
アジアとアメリカにその子孫が残ったと考えられます。

ただ、ポルトガル沖のマデイラ島にリョウブが一種知られていて、
これも、ヨーロッパ全域を覆うような氷河期に南下してきた植物群とともに、
隔離されたのでしょう。
この島の照葉樹林は世界自然遺産になっています。

絞り椿

2012-02-16 | 樹木
  絞り椿
品種名は分からないのですが、この大きな絞り椿、見事ですね。
大きくて、うつむいて咲いている姿に、惹かれます。

椿の花には、たっぷりの蜜があります。
昆虫の少ない季節に、小鳥たちに受粉してもらうために、
用意しているのです。

たしかに、ヤブツバキの林に入り込むと、
ヒヨドリやメジロの声があちこちから聞こえてきます。

花の奥にくちばしを突っ込んで、蜜を吸うと、
小鳥の顔は、花粉だらけになります。

花から花へ、甘い蜜を求めてたくさんの小鳥たちが、
にぎやかに飛び回るツバキの林は、さながら彼らの宴会場です。

椿の花が落ちるとき、枝がゆれて、一粒の大きな蜜の雫が、
きらりと光りながら、飛び散ってゆきます。

杉の雄花

2012-02-10 | 雑感
  杉の雄花
よく見ると、造形的に興味をそそる杉の雄花…

スギ花粉情報がマスコミを飛び交うようになって、
どのぐらい経つのでしょうか…
きめ細かな観測がなされるようになり、
花粉症の方々は、余計に心理的圧迫を感ずることも、
あるのではないでしょうか。

花粉というものは、数が多いからこそ、
雌花に到達できる確立も高いのですが、
まして、杉のように風によって受粉するものは、
なおさら大量の花粉を撒かなければなりません。

その花粉が湖底や湿地の底に降り積り、
何千年、何万年も残って、その地域のかつての植生を教えてくれる、
花粉分析なるものが存在します。

花粉膜にはそれぞれの植物特有の模様があり、
硬くて壊れにくいので、酸素の少ない湖底の泥中に化石となって残り、
それを丁寧に調べることで、環境の移り変わりを知ることができます。

また、湖底だけでなく、マンモスの胃の中に残っている花粉を分析することで、
その棲息地帯の植生を知ることもできます。

一枚の葉っぱの上に、何千という花粉が降り積っていることさえあるのです。
昔から大量の花粉にまみれてきた私たちが、突然に、花粉症になるのは、
量の問題だけでなく、別の原因があるようにも思えますね。

このお話で、くしゃみが出そうになった方、申し訳ありません!

いぬざんしょう

2012-02-03 | 雑感
  いぬざんしょう/犬山椒   ミカン科
今日は春の節分。
先ほど、保育園の前を通りかかると、
保育士と鬼さんが、螺旋階段を隠れるようにして、降りていきました。
たぶん園では豆まきの真っ最中。
園児たちのあまりの豆攻撃に、退散中だったのかも!

このイヌザンショウの幹は、鬼さんの棍棒に見えますね!

明日は立春です。
「立春」という言葉はなぜか、前向きな、明るい響きがあります。

現代は、春というと3月を思い浮かべますが、
昔の人は、時候に敏感だったのでしょう。
まだまだ雪のちらつく日々ですが、
そのようななかでも鋭敏な感覚と眼で、
春を感じ、発見してきたのでしょう。
多くの歌が立春に詠まれています。

花芽や葉芽は、ゆるやかだけれども、しだいにふくらみを増し、
蕗の薹(ふきのとう)も、むっくりと起き上がり、
水仙の花が、冷たい風にのって、香りを届けてくれる、
この季節は、春への待ち遠しい気持ちを、
立春という響きに載せて、
過ごしたいものですね。