泉山の草木花

ひそやかに咲く花々や、やさしさに溢れた植物を皆さんに紹介したいと思います。

かにくさ

2012-07-27 | 羊歯
  かにくさ/蟹草  フサシダ科
ツルシノブとも呼ばれる、つる性の羊歯(しだ)です。

涼しげな葉は、唐草模様のようですね。
子供が蟹を釣るのに、この草を使うところからの呼び名です。

2メートル以上伸びて、他の植物を蔽ってしまうことが、しばしばあります。
じつは、地上部全体が一枚の葉で、細かく分かれながら、つる状となって、
他物にからみつくのです。

この画像はまだ若い葉ですが、
成長すると、また違った趣となり、
胞子嚢(ほうしのう)の付いた葉もまた、
面白い唐草模様になります。

至る所の山野に生えているので、
ぜひ一度、観察を!




あさがお

2012-07-21 | 雑感
  あさがお/朝顔  ヒルガオ科
「あさがお」、いい名前です。

名は体を表す。
早朝開き、午前中には閉じてしまう、朝顔。

花を、顔と見る詩的表現は、とても日本的ですね。
桔梗(キキョウ)も槿(ムクゲ)も別名朝顔と呼びますが、
朝顔の名は、この花にもっとも似合っている名前だと思います。

朝顔は、奈良時代後期から平安時代初期頃に日本に渡ってきました。
牽牛子(けにごし)と呼ばれる種子が薬用として使われました。
江戸時代には、園芸植物として庶民の間で大流行し、
300近くの品種があったとも言われています。

元禄を中心に園芸文化が隆盛し、
幕末に日本を訪れた西洋人を驚嘆させています。
長き平和は、文化を熟成させるものですね。

こけおとぎり

2012-07-13 | 草花
  こけおとぎり/苔弟切  オトギリソウ科
小さな小さな黄色い星が、斜面にまたたいていました。
花の大きさは、5ミリほどですが、
その印象には、確かな存在感があります。



よくよく見ると、この斜面一面に、コケオトギリが咲いています。

「大きさ」というものは、人は自分の寸法を基準にして見るので、
コケオトギリは小さな植物と表現されますが、
例えば、1ミリ足らずのアカダニ(タカラダニ)からすれば、
こんな素敵なベッドは無かろうと、思います。

いちど蟻さんぐらいになって、小さな、いやいや大きな草の森を、
歩いてみたいものですね。






のぶどう

2012-07-05 | 雑感
  のぶどう/野葡萄  ブドウ科
梅雨の真っただ中、他の木々にからみつき、また樹上から枝を伸ばして、
目立たないうす緑色のちいさな花を咲かせているノブドウに、
なぜか惹かれるのです。

人が植物に興味を持つのは、花が美しいとか、
実が食べられるとか、人のために役立つ時でしょう。

このノブドウは、花はささやかだし、
他の植物を蔽って、少々邪魔になるし、
これと言って、強いてあげる特徴も無く、
秋の、青や紫や、緑色の実は、淋しさを誘うような…

そんなノブドウに惹かれるのは、
むしろ特筆すべき特徴も無く、目立たない植物だからこそ、
かもしれません。

世の中の役に立つ事が存在理由である私達は、
他のものにもその価値観を当てはめて見がちですが、
役立つ度合いが極小だと、見えないかもしれません。
しかし、それぞれの分に応じて、社会(環境・地球)に貢献していることを考えると、
けっして、無視も否定もできないものです。

人に役立つ度合いの大きい植物も、役立たない植物も、
優劣は無いと、ひっそりと花を咲かせ、世代をつないで行く彼らを見て、
そんな風にいつも思うのです。