眠りたい

疲れやすい僕にとって、清潔な眠りは必要不可欠なのです。

優しさと哀しみに

2021-08-09 | 
人はいつか死ぬ
 貴方が最後に僕に伝えた言葉
  あれからどれだけの時間が流れたのだろう
   そうして僕はまだ道化を演じている

    装飾音の無い繊細な音楽が
     静かに密やかに空間に流失した夜に
      僕は懺悔したかったけれど涙の流し方を忘れた
       飲み残しのワインを流し台に流した
        ワインは赤い線になりそっと世界をなぞった
         表出される自我
          僕はいつか誰かに傷つけられ
           いつか誰かを傷つけたのだ
            穏やかな日常に於いて

            そっと流れた記憶の白線は
             世界の境界線を断絶させた
              いつかの空気いつかの哀しみいつかの微笑みも
               我々は忘れ全てが忘却の彼方へ飛び立った
                方舟から飛び立った鳥の様に
                 鳥たちはやがて化石になり僕らは永遠に何処にも辿り着けない
                  それらは終わった事なのだ
                   どうしようもなく寒さに凍てついても
                    どんなに暑さに呼吸が阻害されたも

                     オルゴールの音だ
                      照明を落とした部屋に音がたなびく
                       僕はいつか泣き方を思い出すのだろうか
                        あなたの最後を思い出すのだろうか
                         少年だった貴方
                          青年だった貴方
                           父親であった貴方

                           穏やかな日常に於いて
 
                           雨が降り出した

                          古臭いギターを取り出し
                         ヘンリー・マンシーニの「ひまわり」を弾いた
                        少女が呟く
           
                       街には出れないわ
                      そうして我々はこの家で音楽を聴くの
                     それはけっして悪いことではないわ
                    想像するの

                   想像?

                  そう。世界は美しく完璧であると。

                 君はそう想うのかい?

               そう願うの。私達をあの感情の動乱から救い出してくれたのは音楽だけだったわ。
              だから私は音楽だけを信じるの。
             優しい音楽。哀しい音楽。
            音楽で魂が昇華され
           そこで我々は生まれ変わるの。

         大丈夫。

        あなたが何処にいても

       帰って来れるように

      此処が存在するの

     優しさと哀しみ

   優しさと哀しみに






























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