眠りたい

疲れやすい僕にとって、清潔な眠りは必要不可欠なのです。

音楽室

2024-10-16 | 
青い月の夜
 少女はワインを舐めながらぼんやりと
  窓の外の世界を眺めていた
   僕は彼女の横顔を見てそれから青い月を眺めた
    空気が冷たかったので僕らはお酒を飲み続けた
     灰色の世界に青い光が降り注ぐ
      まるで誰かの涙の様だった
       アスファルトの路上で猫があくびをする
        そんな夜
         
        ある雨の日の音楽室で
         少年の僕は窓からぼんやりと外の景色を眺めていた
          少し早めに訪れた音楽室には
           ピアノのほかに誰もいなかった
            ポケットに手を突っ込み
             窓から零れる雨の粒子を目で追った
              清潔すぎるくらい静かだった
               僕は目を開けたり閉じたりしていた
                やがて雨が雪に変わった

                物思いにふけっているんですか?
               声の行方を辿ると
              初老の音楽の先生が僕の横に立っていた
             いえ、そういう訳でもないんです。
            僕は窓の外を眺め続けながらそう答えた
           君は少々個性的だね。
          先生はくすくす微笑みながらそう云った
         職員室で君のクラスの担任の先生が話題にしてたよ。
        別にとりたてて変わったとこなんてないですよ。
       それに、
      それにあの担任とはどうしても気が合わないんです。
   苦笑しながら先生は杖を使って右足を引きずりながらピアノに向かった
  そうつとピアノの蓋を開きそれからAの音を鳴らした
 君は音楽は好きですか?
わりと。先生は音楽が好きだから音楽の教師になったんですか?
 うーん。私にはピアノしかなかったんだよ。足がわるいからね、
  兵隊さんになれなかった、体が弱くて他の仕事にもつけなかったんだ。
   指もあまりまわらないしね。
    君はどんな音楽が好きなんですか?
    少し悩んで僕はこう答えた
     キングクリムゾンとかピンクフロイドとか。
      聴いたことがないな。
       先生は首を傾げた
        私はね、こういう音楽が好きなんだ。
         そういって丁寧に「赤い靴」を弾いた
          
          赤い靴
           履いてた女の子
            異人さんに連れられて行っちゃった

             窓の外で雪が降り続けていた


              清潔な空気の中で


              ピアノの音色が柔らかに優しかった


               
         
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