
若林奮の作品《Valleys》
ここを通るときに感じる不思議な風・・・、通ることによってしか感じられない空気感。二人並んで通ると斜めに設置された壁に奇妙な圧迫を受けてしまう。一人あるいは一列に通過するように仕向けられているのかもしれない。
この無機質はある意味恐怖でもある。人工的な産物は語ることなく、有機物質である生きた人間を導き入れる。原子の集合体である風もここを通るときにはさざめきあって異質を直感するのではないか。
空の上から見れば野山に融けて同化しているかもしれないこの作品を地に立って眺めれば、空の青・山の緑を取り込み明らかに放射線状を呈している。
《Valleys》の意味はここに在るのではないか。
つまり、空が底になる反転。二つの谷である。
空が有であり、地が空になるという位相。
観察者が垂直に立ち、その消失点を見るとき、《天空と大地との相の変化》に気づかされるという企みである。
ここには若林奮の哲学がある、哲学的解釈がある。