つむじ風

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つむじ風

2016年09月12日 11時08分37秒 | Review

―般若同心と変化小僧(2)―
小杉健治/光文社文庫

 2014年11月20日初版。著者の作品は現代モノ「父からの手紙」で3年前にお目に掛かった。今回の「般若同心と変化小僧」は現在11冊のシリーズもの。著者は現代モノ、時代モノおよそ半々でバランスよく書いているらしい。読者のReviewによれば、感動モノと同時につまらない、くだらないという評価もある。それは、人それぞれだから一向に構わないが、やはり量産しようとすると粗くなり、綿密に書こうとすると激減していろいろ支障を来たすといった按配はあるかもしれない。

 著者の時代小説は初めて読むが、この作品の場合、まあ有り得ない設定で颯爽と事件を解決する訳だから「痛快時代小説」であり「肩の凝らない楽な読み物」でもある。小説は、今見てきたかのごとく書くのが著者の力量であり、それが真実かどうかは別の話、ノンフィクション、ドキュメントを書くならそれはそれである。

 ただ、今回の「般若同心と変化小僧」は明らかに時代考証よりも「痛快時代小説」としての位置づけで書かれているように思う。主人公 柚木源九郎、そして仙太郎(永仙)との関係は典型的。今回の「つむじ風」は「つむじ風の弥蔵」をお頭にした20人ほどの押し込み強盗集団との戦い。上毛、榛名山麓の村から江戸に出てきた「あさがお売りの作次」の行動が話しを盛り上げる。結果は当然のことながら主人公側が勝つに決まっている、が、ただスンナリとは終わらない。この辺のカラクリ、展開、盛り上がりを楽しみながら読むのが本作品の正しい読み方であると思う。

 それにしてもこの作品には変化小僧、木鼠小僧、天魔小僧などいろいろな「小僧」が出てくる。著者は「~小僧」というのが基本的に好きなようで、何かしら憧憬、固執があるに違いない。




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