つむじ風

世の中のこと、あれこれ。
見たこと、聞いたこと、思ったこと。

半十郎影始末

2016年09月04日 18時01分28秒 | Review

―面影橋悲愁―
浅黄 斑/コミック時代文庫

 2014年8月25日初版。著者の作品は初めて読む。何となくコミカルな雰囲気があり、半分期待しながら読んでみた。何とコミカルというには程遠く、大真面目な時代小説であった。主人公都築半十郎は町方与力の兄を持つ放蕩の弟で「ゴロマキ半十郎」と言われ、同時に最近は麒麟児とも噂されているらしい。この設定はよくあるパターン。元々江戸時代の次男、三男は冷や飯食いとか言われ、何とか良い養子先を探すというのが一般的な人生だったようだから、「放蕩」や「麒麟児」もありえないことではない。

 現代風に言えば、これは内田康夫の浅見光彦とよく似ている。兄、陽一郎と愚弟光彦の関係だ。光彦に放蕩は無いが、兄との協力関係は全く同じである。光彦に同じく、でしゃばらず、驕ることも自慢することもなく任せるところは任して、事件の解決(謎解き)だけを楽しむような所がある。もっとも、半十郎は竹中道場と喧嘩で鍛えた起倒流の使い手だから腕っ節も強い。そこは、優男の光彦とは大いに異なるのだが。まさか「浅見光彦シリーズ」を参考にしたという訳ではないだろうが、こちらもシリーズ化されて「ごろまき半十郎―八丁堀双紙―」「半十郎影始末―麒麟児―」に次ぐ只今3冊目か、主人公は17歳、まだまだ続く予感に満ちている。まあ、いってみれば「肩の凝らない痛快時代小説」である。

 著者の名前「浅黄 斑」は蝶の名前「浅葱斑=アサギマダラ」から得たらしいが、調べてみると比較的大型のちょっと派手な蝶で、あまり人を恐れない。フワフワゆったり飛ぶ割には、北海道函館あたりから九州、沖縄どころか台湾、香港まで飛んでいくというなかなかの兵なのだとか。フワフワとゆったり世間を渡り、実は超遠距離飛行をこなすという能力も隠し持っている・・・そんな意味合いでしょうか。