金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

ちょっと借りておくのも手ですかねぇ(その1)

2007年02月01日 | 金融

ウオール・ストリート・ジャーナルを見ていたら「クレジットカードなどを長い間使わないと、信用履歴が形成されないので、信用スコアが低くなる。このためいざ借入をしようとする時問題が発生する場合がある」という記事が出ていた。このこと自体はアメリカの話で日本には直接関係ないが、一消費者としてまた金融マンとして関心のある話なので思いつくところを書いてみよう。

因みに記事によると米国で約5千万人の人が信用スコアを得るに足る程クレジットカードを使っていないということだ。これは中々常識のウソみたいな話で一般にはアメリカ人は皆クレジットカードで買い物をしている様に言われることが多いが、アメリカ人の中にはやはり借金をしない様に現金払い(含む小切手払い)をする人も相当いるということだ。

ところで米国の個人信用はスコアシステムで点数化されている。最も広く使われているFair Isaac Corporation(略称FICO、ニューヨーク証券取引所上場会社.。日本の金融機関でもこのシステムを導入しているところがあるらしい)のスコアリングについていうと最低300点、最高850点。典型的な点数は723点でもし750点以上であれば、最優遇レートで借入ができる。しかし620点以下だと与信を受けることが難しいということだ。

信用スコアリングシステムは法律で色々制限がある。まずそれは帰納的に導き出されたもので統計学的に健全でなければならない。ただしその算出方法は企業秘密で公開されていない。ただFICOは次のように説明している。

1ヶ月以上の支払遅延の有無に30%のウエイト、リボルビング与信枠に対する現在の借入残高に比率に30%のウエイト、信用履歴に15%のウエイト、利用している与信タイプに10%のウエイトなどだ。

クレジットカードなどを適度に使って期日にキチンキチンと支払をする方が全くカードを使わないより良好な信用履歴が形成されるので、トータルスコアが良くなるという訳だ。

でこの話を日常生活に活かすとすると、一つは年収などが安定していて借入枠やクレジットカードに利用枠を作りやすい時に作っておくということになる。大体日本では借入枠だけでフィーを取るところはまずないだろうからコストはかからない。しかしリスクはある。それは「枠があるとお金を借りてしまう」ということだ。私もこの経験があるので諸刃の剣というべきかもしれない。

それと将来住宅ローンなどを借りる予定があるなら、その予定先で預金や投資信託の取引を集中して取引履歴を積上げておくことだ。こうすると借入時に信用判断や条件面で有利になることが多い。

なお金融マンとして思いつくところは次のブログで書こう。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

どちらに助けを求める?日興コーディアル

2007年02月01日 | 金融

私のブログに「日興コーディアル・上場廃止」というキーワード検索からのアクセスが増えている。これはこれは日興の不適切な会計処理がニュースになった時ウオール・ストリート・ジャーナルの記事を参照したものだ。当時日本の新聞は上場廃止という言葉を余り積極的に使っていなかったが、ウオール・ストリート・ジャーナルの読みが正しかろうということで引用したものだ。

そのウオール・ストリート・ジャーナルが日興コーディアルの特別調査委員会のレポートが出た後「日興は上場廃止リスクが高まってきたので縁組先を探すだろう」という記事を書いている。原題はNikko Cordial may seek ally as stock listing at riskでポイントは次のとおりだ。

  • 120ページに登る特別調査委員会のレポートの中で日興の最高幹部が、利益を膨らますために組織的な会計操作に関与していたことを見つけたと述べられている。
  • レポートの内容は多くの観察者が予想していたよりも深刻なもので上場廃止になる可能性がある。もっとも東証の決定には少なくとも1ヶ月程度は要するが。また昨日ムーディーズが日興を格下した。
  • このような問題はあるが、日興は価値あるフランチャイズである。みずほグループとシティグループが日興コーディアルに関心を表明している。どちらも日興コーディアルの株を5%弱保有している。みずほ、シティどちらとペアを組むことになってもリティル、商業銀行、引受、M&Aアドバイス、資産運用まで手がける巨大金融機関が誕生する。
  • 議決権行使や企業統治サービスを取り扱うインステテューショナル・シェアホールダー・サービスの日本のディレクター・ゴールドスティン氏は「もし日興が上場廃止の可能性が現実のものだと考えるなら、選択肢について考えなくてはならない」と言う。

さて日興コーディアルが上場廃止になるかどうか私見を述べよう。結論から言うとかなり廃止の可能性が高いと言える。その理由は次のようなことだ。

  • 不正会計処理にトップが関与していた。
  • 特別目的会社を使った利益のかさ上げが2年連続して行なわれているなどまだ問題が出てくる可能性が高い。
  • 不正会計問題で退任した有村社長と金子会長に数億円の退職金が払われている。規定どおりの取扱いと同社は説明しているが、同社の株主感情や庶民感覚から見ると大いに反感を買う。上場廃止問題を決める東京証券取引所もこれらの感情を考慮するだろう。
  • 東京証券取引所はニューヨーク証券取引所との提携を控えており、米国から高い透明性や厳しいコンプライアンスを求められる。
  • 日興が上場廃止になってもみずほかシティの傘下に入るならば、金融・株式市場や日興の顧客にとって大きな混乱はない。むしろ米国型の巨大な金融機関が作られることで、ユーザーの利便性が増す。

さてこの場合みずほとシティのいずれが勝者になるのだろうか?

一消費者の立場だけでいうと、シティが日興コーディアルを傘下におさめ、ワンストップ型の金融機関網を展開することにメリットがあると考えている。具体的は次のようなことだ。

  • 全世界にキャッシュディスペンサー網を持つシティのキャッシュカードを持つと海外旅行をする場合、両替の手間なく必要最小限の現地通貨を旅行先で引き出すことが出来る。
  • 無通帳サイン口普通預金等シティは便利なサービスを既に導入しているし、今後もアメリカで発展してきたアグリゲーションサービス等色々なサービスを日本で展開することが期待できる。

今の日本の金融機関は顧客に書かせたりハンコを押させたりする書類が多過ぎるし、諸手続きが煩雑を極める。例えば日本でキャッシュカードをなくすと再発行など大変だが、アメリカだとその場で済んでしまう。私は何よりもこのようなことが顧客サービスだと考えているのでシティバンクに日本でその手本を示して欲しいと考えている。

日本の消費者のためには強力なコンペティターが出現する方が良いというのが私の結論だ。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする