ささら獅子舞(二)
入間比企方面から北足立の一部にかけて行われる獅子舞の特徴の一つは、曲目が二つから構成されているといわれる。
越畑八宮神社奉納の獅子舞もその例にもれず初庭と二庭の二曲からなり立っている。
○参り来てこれのお庭を眺むれば、黄金小草が足にからまる。
初庭はこの歌詞が主題となって演技される。四本の花笠は百花咲き乱れる春の野を表現するもので、その中に獅子三頭三つ巴になって笛鼓の音にのり楽しく舞い遊ぶ場である。
○この宮は飛騨の匠(たくみ)の建てたげな、楔一つで四方かためる。
二庭の中心歌詞である。初庭の明るい舞から、雄獅子雌獅子をめぐって織りなす葛藤へと発展する、雌獅子争いの物語であるが、いつしか和解できて千秋楽となる。
獅子舞の外に四人の棒使いがおり、演技の始めに棒術を行なう。これはいずれの獅子舞においても行なわれるもので、演舞場を祓い清めるためのものと思われる。
最後に中立ち(道化役)であるが、これは演技の指導者で、経験者の元老格でなければ中々務まらない。
この外万燈持ち、ホラ貝、先払(露払)、頭笛、笛吹衆、等の諸役があり、この人たちが結集して演技が成立するのである。
毎年七月二十五日(旧六月二十五日)の祭礼には、豊作・疫病除け、雨乞い等の祈願のためこの獅子舞が奉納され、氏子一同を喜ばしている。
安藤専一『郷土の今昔』 1979年(昭和54)1月