佐藤直曉の「リーダーの人間行動学」 blog

リーダー育成のための人間行動と人間心理の解説、組織行動に関するトピック

リスク感覚のない人につけるクスリ

2009-01-20 09:49:35 | 人間行動学
昨日は分散戦術におけるリスク確定の重要さを述べました。

ところで、リスクには大きく分けて二つの種類があると思います。

ひとつは認識されているリスク。リスク把握の程度はともかくとして、とにかく何か危なそうなことがあるな、と知覚されているリスクです。

もうひとつは、まったく知覚されていないリスク。青天の霹靂というやつです。

リスク対策では、まずリスクを認識することが重要になります。問題意識がなければ解決などありえませんからね。

そこで、重要になるのが実験とか模擬テストです。似たようなシチュエーションでシミュレーションを行うことです。

防災訓練などもそう。これを行うことで、たとえば関係機関とのコミュニケーション問題が浮き彫りになります。

シチュエーションを部分的に区切ってもこれは可能です。消火訓練だけとか、マンションから住民が一斉に避難するといった断片的な訓練でも、その部分にかかわるリスクは把握できます。

いまは受験シーズンに入るところですが、受験場所の下見なども一種のリスク対策といえます。電車の乗り継ぎを間違えやすいというようなことが、見つかるかもしれませんよ。やっておいて無駄にはなりません。

こういう努力を行うことで、これまで問題視されていなかったリスクはある程度知覚できます。しかし、すべて知覚されるわけではありません。実際には何が起きるかわかりませんから。

そこで、何か起きたらすぐに対応できる能力を日ごろからつけておかなければならない。先日起きた飛行機事故、ハドソン川に不時着した事故ですが、あれも機長の機転がなければ大惨事になったでしょう。

何かあったとき沈着に対処できるかどうか、それには日ごろからどうしたらいいのか。

このあたりについては、初代南極越冬隊長だった西堀栄三郎さんが、いろいろ書いています。

それをまとめたのが、わがL研ブックストアの電子ブック「西堀栄三郎」にあります。

あ、いや失礼。これまだ書いていませんでした。原稿は書きためておりますが、腕が痛くてまだ電子ブックにまでしていませんでした。筆がついすべった。そのうちまとめます。

(実は昨日の「探検家スコット」のケースも、西堀さんの本からヒントを得たものです。)

さて、話は変わりますが、リスクを小さくする方法について少し考えてみます。やり方はいろいろあります。

根本的な対策は、リスクをきちんと把握して、それに対する有効な対策をたてることでしょう。昨日の弥生人がそう。

南極探検のもう一人の勇、探検家アムンセンも、その点では素晴らしかったといえます。スコットとは大きな差がありました。アムンセンは、犬ぞりがもっとも効果があるとはっきりつかんでいました。

ところで、現代人はこざかしいというか、知恵があるぶん、本質的な対策をとらず別の手段でうまくやりすごそうとする。苦々しいことですが……。

たとえば、現代の稲作。弥生時代と比べて、品種が完全に集中化されています。8割くらいがコシヒカリの系統だそうです。

だいたい、米づくりは平安時代のころから、すでに単品種に絞られる傾向にあるのだそうです。収量の多い品種を時の権力者が植えさせるわけですね。江戸時代の飢饉の主因は、藩主の強欲が原因だったといえるかもしれません。

ところで、現代農業はこのリスクをどうやって減殺しているのでしょうか。実は、生産者に保険を用意しているのです。生産が大幅に落ちた生産者に対して保険金を支払うということで対処をしている。保険に入るかどうかは、生産者の自由のようですが。

リスクの転化か転嫁か知りませんが、そういうことをやってリスクを抑えようといる。これが現代の知恵というわけです。

ただ、いまは温暖化とかいって気候が変化しておりますので、大丈夫だろうかと素人は考えてしまいますね。もし、全国一斉に気候不順になったらどうするんでしょうか。保険は保険の想定範囲を超えたら使えませんからねえ。

しかし、これなどまだましなほうです。サブプライム問題などは、詐欺だといってもいいのではないでしょうか。リスクを細かくくだいて、リスクをわからなくして、頭の悪い世界中の機関投資家に買わせていたわけですから。


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