梅雨の時期は髪型が決まらなくて困る。私だけでなく、ほとんどの女性がそう思っているはずだ。
今朝の読売新聞『コボちゃん』でも、ママのサナエさんが同じことを嘆いていた。まったく同感である。
しかし、自分では「ひどい髪」と思っていても、周りの者にとっては取るに足らないことだったりする。自意識過剰のなせる業だから、その自意識が許してくれないだけだ。
教員になって2年目のとき、体調を崩して入院した体育の先生がいた。すぐに代わりの先生がやってきた。剣道が専門で、要潤が筋肉質になり日焼けしたような感じのナイスガイだった。女性だったら、誰もが「ステキ~!」と叫びたくなるに違いない。
私ももちろんその口だったけれども、時期が悪かった。梅雨だったのだ。ちょうどパーマをかけたばかりの私の髪は、毎日ブローする方向と逆を向いていた。ふくらませたい場所はぺちゃんこになり、内巻きにしたい襟足は外巻きになっていた。しかも、左右対称ではなく、左は内巻き、右は外巻きという状態である。これではとても話しかける気にはなれない。
鏡をのぞいては「今日はやめておこう」と思う日が続いた。グズグズしているうちに病欠の先生が退院し、あれよあれよという間に要潤はいなくなってしまった……。髪型なぞ気にせずに、積極的に話しかければよかったと、私は後悔した。
娘のミキはもっと悲惨である。義母からの隔世遺伝で天然パーマのミキは、つる植物のようにうねうねとした髪をしている。1本1本が太めで、てんでバラバラの方向に伸びようとするので、ドライヤーは何の役にも立たない。ゆわくしかないのだ。
保育園のときは髪の量も少なく、ショートカットにしていた。クリクリしたウェーブと白い肌が人目をひき、「外人の子供みたい」とよく言われたものだ。
梅雨になると、ミキの髪はさらに大きくふくらんだ。自分と違う髪だと気づいた園児が、ミキに聞いてきた。
「どうして、モジャモジャなの?」
ミキは予期せぬ質問にギョッとし、答えに窮したようだった。
「……知らないよ」
このときから、自分の髪にコンプレックスを持ってしまったようだ。哀れな。
強いクセ毛に悩む女子高生は、ヘアアイロンを使ってストレートに近づけている。涙ぐましい努力をすればするほど、髪がボロボロになっていくというのに。
私が勤務している高校では、学校の電気を携帯の充電やアイロンなどに使ってはいけない決まりになっている。しかし、雨で髪が乱れたり、プールの授業のあとには、クセ毛の生徒ほどこっそりアイロンを使っているようだ。
リサもその日は、教員の目を盗んでアイロンをかけていた。彼女もまた、直毛ではなかった。しかし、残念なことにすぐ見つかってしまった。アイロンを没収されたばかりか、服装違反として彼氏からもらったばかりの指輪も一緒に取り上げられた。
彼女は泣きそうな顔をして、担任の私に助けを求めた。私は指輪を返してほしいのだと思ったのだが、そうではなかった。
「指輪は別にいいの。アイロンがないと生きていけないよ~! お願いだから返してぇ!!」
なけなしの金をはたいて買った、彼氏には聞かせられない一言だった。
ああ、ミキの将来は大丈夫だろうか?

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しかし、自分では「ひどい髪」と思っていても、周りの者にとっては取るに足らないことだったりする。自意識過剰のなせる業だから、その自意識が許してくれないだけだ。
教員になって2年目のとき、体調を崩して入院した体育の先生がいた。すぐに代わりの先生がやってきた。剣道が専門で、要潤が筋肉質になり日焼けしたような感じのナイスガイだった。女性だったら、誰もが「ステキ~!」と叫びたくなるに違いない。
私ももちろんその口だったけれども、時期が悪かった。梅雨だったのだ。ちょうどパーマをかけたばかりの私の髪は、毎日ブローする方向と逆を向いていた。ふくらませたい場所はぺちゃんこになり、内巻きにしたい襟足は外巻きになっていた。しかも、左右対称ではなく、左は内巻き、右は外巻きという状態である。これではとても話しかける気にはなれない。
鏡をのぞいては「今日はやめておこう」と思う日が続いた。グズグズしているうちに病欠の先生が退院し、あれよあれよという間に要潤はいなくなってしまった……。髪型なぞ気にせずに、積極的に話しかければよかったと、私は後悔した。
娘のミキはもっと悲惨である。義母からの隔世遺伝で天然パーマのミキは、つる植物のようにうねうねとした髪をしている。1本1本が太めで、てんでバラバラの方向に伸びようとするので、ドライヤーは何の役にも立たない。ゆわくしかないのだ。
保育園のときは髪の量も少なく、ショートカットにしていた。クリクリしたウェーブと白い肌が人目をひき、「外人の子供みたい」とよく言われたものだ。
梅雨になると、ミキの髪はさらに大きくふくらんだ。自分と違う髪だと気づいた園児が、ミキに聞いてきた。
「どうして、モジャモジャなの?」
ミキは予期せぬ質問にギョッとし、答えに窮したようだった。
「……知らないよ」
このときから、自分の髪にコンプレックスを持ってしまったようだ。哀れな。
強いクセ毛に悩む女子高生は、ヘアアイロンを使ってストレートに近づけている。涙ぐましい努力をすればするほど、髪がボロボロになっていくというのに。
私が勤務している高校では、学校の電気を携帯の充電やアイロンなどに使ってはいけない決まりになっている。しかし、雨で髪が乱れたり、プールの授業のあとには、クセ毛の生徒ほどこっそりアイロンを使っているようだ。
リサもその日は、教員の目を盗んでアイロンをかけていた。彼女もまた、直毛ではなかった。しかし、残念なことにすぐ見つかってしまった。アイロンを没収されたばかりか、服装違反として彼氏からもらったばかりの指輪も一緒に取り上げられた。
彼女は泣きそうな顔をして、担任の私に助けを求めた。私は指輪を返してほしいのだと思ったのだが、そうではなかった。
「指輪は別にいいの。アイロンがないと生きていけないよ~! お願いだから返してぇ!!」
なけなしの金をはたいて買った、彼氏には聞かせられない一言だった。
ああ、ミキの将来は大丈夫だろうか?

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