これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

はまぐりのパエリアで祝うクリスマス

2022年12月25日 16時22分50秒 | エッセイ
 今年のクリスマスはイヴが土曜、当日が日曜なのでありがたい。
「平日だと、ろくなものが作れないから助かるわぁ~」
 イヴのランチは牛ヒレステーキ、ディナーはパエリア、クリスマスのランチはローストチキン、ディナーはマグロとアボカドのポキ丼という連続豪華メニューで、食を楽しむことにした。
「パエリアを作るの、久しぶり」
 もしかしたら5年ぶりかもしれない。
 レシピは25年前のオレンジページの切り抜きを使っている。



 フライパンひとつで完成し、とても美味しい点が素晴らしい。食材もアサリやイカ、エビなど身近なものを使っているので、気軽にチャレンジできる。
「でも、アサリがあるかどうか」
 以前に熊本産と偽って、産地偽装のアサリが出回っているとニュースになって以来、わが家ではアサリを買っていない。スーパーでの取り扱いも極端に減ってしまった。北海道産や千葉産のアサリが欲しかったが、案の定、店頭には中国産のものしか置いていなかった。
「うーん、どうしよう」
 陳列棚を見てみると、アサリの近くに、ムール貝とはまぐりも並んでいた。
「パエリアといえばムール貝よね。そんなに高価じゃないんだ。ラッキー」
 280円と書かれたムール貝のパックをむんずとつかみ、鮮度を確認する。貝自体は元気そうだったが、貝殻に枯れた草や、黒い汚れがついていて、非常に気になった。
「これって水で洗っていいのかしら。そもそも、どうやって砂抜きするんだろう」
 結局、馴染みのない食材に尻込みし、パックを棚に戻す破目になる。
「はまぐりは千葉産ね。砂抜きの仕方はわかるし、パエリアに合いそう。こっちにしよう」
 棚からはまぐりを2パック取り、会計をすませた。
 蛇足だが、イカも中国産のものしか見当たらず、刺身コーナーで見つけた北海道産のイカそうめんを買った。これに塩コショウして、オリーブオイルで炒めるときは笑いがこみ上げた。ちゃんとイカの味はしたけれど、スリム過ぎてもの足りない。
 はまぐりを入れるのは一番最後だ。先ほどエビと一緒に焼いたイカは取り出し、ニンニク、玉ねぎを炒めたあとに、スープ、トマトを煮立て、米を加えて5分ほど煮たあと、エビとイカを戻し、ピーマン・はまぐりを追加する。ここから10分煮て、10分蒸らせばでき上がりとなるはずだった。
 ところが、アサリと違ってはまぐりには火が通りにくい。
「あれっ、10分経っても口が開かないよ。ちょっと火を強めてみよう」
 それでもフライパンの中には沈黙が漂っている。このまま、でき上がらなかったらどうしようと心配になった。でも、さらに5分経過したあたりから貝の口が開き始め、フタに当たる「カチン」という音がいくつも聞こえてきた。
「ああよかった。完成したみたい」
 蒸らしが終わりフタを取る。



「おお~!」
 身の大きいはまぐりは、歯応えもよくてサフランご飯にマッチする。家族からは「アサリのときより美味しい」などと好評だった。
 来年のカレンダーを見ると、23日が土曜、24日が日曜、25日が月曜となっている。
「次のクリスマスは、24日しかごちそうを作れないな……」
 ちょっと寂しい。
 じゃあ、料理はお正月に持ち越しましょうか。

 2022年の更新はこれが最終です。
 お読みいただき、ありがとうございました。
 来年のお越しをお待ちしております。
 どうぞよろしくお願いいたします。

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2022 今年の漢字

2022年12月18日 21時04分11秒 | エッセイ
 恒例となっている今年の漢字は「戦」であった。
「わかるわかる。一日も早く、ウクライナに平和が来てほしいわぁ」
 不毛な戦いが終わることを願ってやまない。
 では、私にとっての今年の漢字は何だろうと考えてみた。
「うーん、うーん、電かなぁ……」



 3月までの職場は近かったので自転車で行かれた。ところが4月から異動となり、片道70分の学校になってしまったため、3年ぶりに電車を使っている。一つは電車の「電」だ。
 乗り換えなしで行かれるので、朝は6時半の空いている時間帯を選び座って行く。帰りも18時台のラッシュ前にすべり込み、楽して帰る。通勤時間は去年の4倍になったが、どうにかこうにか健康な状態で年末を迎えることができた。
 もう一つは電子メールの「電」。職場の異動にともなって、新しい上司の下で働いている。つまり、校長先生なのだけれども、この人が無類のメール好きなので、ほとんどの連絡を電子メールで行っている。
「先ほど○○高校の○○校長から電話がありました」
「○日までに△△調査のご回答をお願いします」
「明日は休みます」
 顔を合わせれば5秒ですむ内容が、メールだと1分になったりして効率が悪いのだが、校長先生はこの作業がやたらと早い。送ったそばから返信が届き、即断即決で何の迷いもなく処理していくのでビックリする。
「これは私も見習わなければ」
 最初は、すごい人の下で働くことになったと、プレッシャーを感じていた。しかし、ときどきポカもするとわかってきた。メールの宛名に「様」をつけ忘れたメールが送られてきたときの喜びといったらない。
「はっはっは! 呼び捨てになってるじゃないか」
 完璧に見え、近寄りがたい人のミスは貴重だ。
 また、休暇の日にメールを送ると「休めるときは休んでください」と注意を受ける。
「ちぇっ、今やった方が楽なんだけどな」
 気をつかってくれたのはわかるので、ひとまず休みモードに切り替えた。ところが、タイミングの悪いことに、この直後、私に頼みたい仕事が降ってわいたようだ。しばらくして、困惑気味のメールが送られてきた。
「笹木先生、お休みのところ大変恐縮です。実はかくかくしかじかで……。お返事は明日で結構です。よろしくお願いいたします」
 文面を見て噴き出した。
「あっはっは、休めって言ったの誰だっけ」
 コロナ禍を機にノロマになってしまった私は、かつてのスピード感を取り戻したい。校長先生のせわしなさは、結構いい刺激になる。朝の支度も、お風呂上りから布団に入るまでの所要時間も、少しずつ縮まってきた。
「来年の漢字は『速』になるといいな~」
 速度は上がっても、メールに敬称をつけ忘れないように気をつけようっと。

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ミセス・ハリス、パリへ行く

2022年12月11日 18時37分26秒 | エッセイ
 昨日は土曜日だったが、学校説明会のため一日勤務。
 そして、来週の土曜日も、某大会会場校のため一日勤務。
 しかし、観たい映画は待っていてくれないので、久しぶりのOFFの今日、池袋まで行ってきた。



 これこれ、これですよ。
 洋服やドレスの大好きな私が見逃したくない作品のひとつである。食事の支度も部屋の掃除も夫に任せ、財布を持って家を出た。
 ストーリーを簡単に紹介しよう。
 エイダ・ハリスは若くないが、老け込んでもいなくて、メチャクチャ気立てのよい女性である。



 だが、夫・エディが戦死したとの知らせを受け、悲しみに暮れていた。そりゃあ、人生の伴侶を失えば、明るい気持ちになれるはずがない。
 そんなときに出会ったのが、クリスチャン・ディオールのドレスである。家政婦をしているお屋敷のマダムのもので、うっとり見とれていたら、「500ポンドもしたから夫には内緒よ」とほざかれる。



 500ポンドって安くない? などと侮ってはいけない。パンフレットで確認したら、1950年代当時では、日本円にして現在の250万~400万円くらいというからビックリする。
 でも、このドレスがエイダの希望になるのだ。エディが亡くなった喪失感を穴埋めするように、「私もディオールのドレスを買いたい」を目標にして生き生きと働く。その気持ちはすごくよくわかる。私も身の丈を越えたイッセイミヤケの服を着たいと思うし、衣装体験のできる施設で記念写真も撮った。憧れの衣服を身にまとう喜びが、勤労意欲につながることもある。
 しかし「そのドレスをどこに着ていくの?」と聞かれたら、自信を持って答えられない。だからドレスを買おうとは思わないが、エイダは違うのだ。有り金全部はたいても、ディオールのドレスを追いかけていく。あっぱれである。
 素敵な紳士も登場する一方で、この方にはまいった。



「ルシウス・マルフォイだ!」
 もとい、ジェイソン・アイザックスでしたね……。メル・ギブソン主演の『パトリオット』でも敵役だったから、エイダが騙されるのではないかと心配になったけれど、今回は最後まで善人でいてくれた。なんて言ったら怒られちゃう?
 ディオールのドレスはオートクチュールだから、細身のエイダの体型に合わせて仕立てられるはずなのに、明らかにぽっちゃり体型の女性に貸してあげるくだりがある。ここは何とも解せなかった。
「いや、入らないでしょ。無理無理」
 次の瞬間、ぽっちゃりさんがエイダのドレスを着こなしていた。嘘でしょ!
 納得いかないまま見ていたら、心がコタツに入ったような、あたたか~いラストが待っていた。
 ええ話や~。
 12月は最後まで忙しい気がするけれど、家事をさぼって、心の栄養になるような映画が見れたから、充電できた実感がある。
 たまにはリフレッシュしなくちゃね。

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2022 三姉妹忘年会

2022年12月04日 21時54分02秒 | エッセイ
 東京には「意地でも手袋をはめない」人もいるが、私はそうではない。家を出た瞬間、コートのポケットからレンガ色の手袋を取り出し暖まる。肌がカサカサにならず、寒さも和らいで一石二鳥だ。
 しかし、人差指の部分に小さな穴が空いてしまった。
「ああっ、自転車に乗ったせいかも。新しいのを買わなくちゃ」
 その日はちょうど、忘年会の食材を買いに駅ビルまで行く用事があった。12月になると、姉と妹と3人で料理を持ち寄り、飲んでしゃべって一年の締めくくりをする。ビルの1階がスーパー、3階に雑貨が売られているので、ついでに覗いてみようと決めた。
「うーん、どれにしよう」
 たくさんの手袋を前にして私は迷った。よさそうなデザインを見つけたはいいが、ベージュ、黒、グレーの3色あって、どれも捨てがたい。さあ、どうしよう。
 ふと、名案が浮かんできで、そそくさと会計をすませた。
「さて、スーパーに行こう」
 今回は姉があれこれ作ってくれるらしい。私が用意するのはカボチャの素揚げ、アボカドにわさびマヨネーズをかけて焼いたココット、瓶詰のアラビアータを和えた切り干し大根しかないから、買い物も楽だ。
 忘年会当日は、料理を持って昼過ぎに家を出た。目指すは姉のマンションだ。
 最寄り駅に着き、改札を出たところで、宗教の勧誘と思しき怪しい女が近寄ってきた。私はよく、この手の人種に声を掛けられるので、無視してやり過ごそうとしたが、ちょっと違ったようだ。
「ねえ、姉さんじゃないの?」
「えっ!?」
 怪しい女ではなく、それは妹だった……。
 メガネを掛けていないと、こういうことが起きるので気をつけねば。
「どれから飲む?」
 姉がシャンパーニュを調達してくれた。うちではなかなか飲めないのでウレシイ。



 しかし、味の違いがわかるわけでもなく、おまかせにする。
 私の料理も皿に盛りつけられた。



 お互いの家族のこと、仕事のこと、両親のこと、話題は尽きない。
「じゃあ、シチューを温めるね」



「おいし~い♪」
 コロナ禍で姉は料理の腕を上げたようだ。クリーミーで口当たりのよいシチューだった。
「漫勉見ようよ」
「うん」
 いつから、忘年会になると「浦沢直樹の漫勉」を見るようになったのか。



 リラックスしたせいか、私は眠ってしまったらしい。
「はっ」
 目覚めたら22時だった。いかんいかん。
「あら起きたの。じゃあケーキにしようか」
 デザートは、宗教の勧誘に間違えられた妹が調達してくれた。私も寝ぼけながら、バッグから手袋の入った包みを取りに行く。



「これはナニ?」
 姉も妹も、珍しいものを見るような目を向けてきた。
「大したものじゃないんだけど、プレゼントよ」
 つまり、私はあのとき、ベージュと黒とグレーの手袋3つを買ったのだ。先に姉と妹に選んでもらい、残った色を自分のものにしようと決めた。
「じゃあ、これもらうね」
「ありがとう」
 さて、何が残っているのやら。色違いを姉妹で持っているというのもいいだろう。
 ラ・メゾンのケーキは久しぶり。



 こってり感とフルーツのみずみずしさが好きだ。
 デザートのあとは帰るだけとなる。
「おやすみ」
「ごちそうさま」
 家に着き、包みを開けてみた。



「ああ、グレーだったのね」
 タグを取り、右手をそっと中に入れる。
 ふわふわで柔らかなボアに包まれ、手のひらが暖かくなった。
 この冬はこの手袋で乗り切ろう。

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