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これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

スパークリングが気になっちゃう

2025年05月25日 16時46分01秒 | エッセイ
 先日、新しい職場の歓送迎会があった。同じ日に古い職場の歓送迎会も行われ、見事にバッティングしてしまったが、先に誘ってくれた現職場の方に行くことにした。かなり後ろ髪を引かれたけれど、体は一つしかないからどうにもならない。
「こんばんは、お久しぶりです」
「元気でやっていますか」
 転入者と転出者が顔を合わせる機会はこれが最初で最後。職場を去った方の現況を聞きつつ、私は空になったグラスが気になっていた。
「うーん、何を飲もうかな。白ワインでいいか」
 都内の某ホテルであった。花束贈呈が終わり、次の転出者が舞台に進む合間を狙って、こそこそとワインコーナーに進んだ。
「赤と白がございますが、いかがいたしましょう」
 係のお姉さんが愛想のよい声で話しかけてくる。白と言いかけて、スパークリングワインの瓶に気がついた。
「これ、さっき乾杯したときのスパークリングですか」
「はいそうです。まだ残っていますよ」
「わあ、欲しいです」
 お姉さんがスパークリングをグラスに注いでくれた。ふふふ。飲み放題のリストにないようだが、半端に余っていたから提供したのだろう。良心的でありがたい。
 しかし、平べったくて、少量しか入らないグラスだったので、飲んだ気がしない。



 調べたら、クープ型のシャンパングラスというらしい。すぐ空になってしまい、挨拶が終わるのを待って、またお姉さんのところに行った。
「おかわりお願いしま~す」
 お姉さんは私の気持ちを察したようで、空のワイングラスを取ってくれた。



「よろしければこちらにお入れしましょうか」
「はい、ぜひ」
 これならクープ型の3倍は入るだろう。ニマニマしていたら、後ろにいた英語科の若手、マサト先生も便乗してきた。
「あっ、僕にもスパークリングください」
 残念ながら、他にワインコーナーに近づく人はなく、ビールやソフトドリンクが人気のようだ。ちょっと淋しい。そうだ、挨拶も聞いてあげなくてはいけない。
「今の学校ではテニス部の顧問になりましたが、部員が1人しかいません」
「ええ~」
 舞台の上は5人目になった。みなさん、新しい職場で頑張りつつも、戸惑いながら過ごしているようだ。料理はビュッフェだったが、まずまずでスパークリングにもよく合った。またグラスが空になり席を立つ。お姉さんはいなくなっており、おじさんに代わっていた。
「スパークリングください」
「どうぞ、ボトルごとお持ちください」
「いいんですか」
 何と気前のよい対応か。大事に大事に瓶を抱えて席に戻った。中身を確認すると、3分の1は残っていたので、「うほほ」と小躍りする。しかし、飲み過ぎてもいけない。そうだ、マサト先生にもあげよう。どこに座っているのかしら。いたいた。隣のテーブルであった。
「見てぇ、これもらっちゃった。飲みませんか」
「マジすか、やったぁ!」
 嗜好が同じ相手に喜んでもらえてうれしい。スパークリングに気を取られていたら、デザートコーナーのほとんどが消えていたが、フルーツは残っていたからよい。このあとコーヒーを飲んだら、お開きの時間が迫っていた。
「ここで中締めとさせていただきます」
 あれっ、もう?
 時計を見ると、1時間半が経過したところだった。このあと集合写真が待っていたので、早めに切り上げたのだろう。
 何人もの人と話し、いろいろと見聞きしたつもりだったが、終わったときにはスパークリングワインのことしかおぼえていない。
 なんとまあ……。

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ニオう人

2025年05月18日 21時29分51秒 | エッセイ
 5月に入り、汗ばむ日が増えてきた。
「汗かいたら、ちゃんとケアしてる? ときどき汗臭いよ」
「えっ」
 娘の厳しい指摘にたじろぐ。自分が臭うとは、まったくもって思わなかった。
「部屋干しした雑巾みたいな臭いだから、何とかしてほしい」
「ひい」
「汗ふきシートを使いなよ。コンビニとかでも売ってるから」
「うん」
 他人は思っていても教えてくれない。それにしても、部屋干し雑巾とはあんまりだ。せっかく新しい職場になったのだから、嫌われないように、避けられないように汗のケアをしなくてはと決心した。
 コンビニではなく、スーパーの2階でシートを買う。ポイントが加算され、お得だもの!





 何種類も並んでいたが、差がわからない。大きめ、厚手を目安に購入した。
 面白いもので、汗対策をすると気温が下がる。連休明けは涼しくて、シートの出番はなかった。
 しかし、先週は気温の高い日が多く、「やっと使える」とワクワクして封のシールをはがした。
 ペリペリペリッ。
 自転車で通勤していると、信号で停まったときに汗が噴き出てくる。ときにはメガネが曇るほどだ。職場にゴールインすると、顔も体も熱くなり、さらに汗をかくことになる。荷物を置いて汗ふきシートを広げ、首に当てたときの爽快感は予想をはるかに超えた。
「うー……」
 冷蔵庫で冷やしたわけでもないのに、肌に広がるひんやり感が心地よい。首周りを一周したら、背後に色とりどりの花が咲いたような気分になる。



 シートが大きいので、服の下の汗をふく余裕がある。背中やわきの下、鎖骨周りなどにもシートを走らせ、上半身全体が爽やかになった。
「これはすごい」
 肌がさらさらになるだけでなく、さっぱりして勤労意欲が上がった自分に気づく。加えて、雑巾臭が消えて迷惑にならないのであれば、日課にするしかないだろう。
 東京の気温は、毎日高いわけではない。汗をかかない日もあり、汗ふきシートを使わなかったら、下を向いた瞬間に変な臭いが漂ってきた。夏の部活で湿った体操着が、洗濯前に乾いたときの悪臭に近い。
「こ、これが、指摘された臭いなのでは……」
 連日、シートを使って身ぎれいにしていたおかげで、自分の体臭に気づいたようだ。危ない、危ない。
 そんなわけで、毎日シートのお世話になっている。夏に備えて、買い置きしておこう。
 汗をケアすることで、蚊にも刺されにくくなった気がするが、それはまた後日……。

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JAFの電話がつながらない

2025年05月11日 17時20分58秒 | エッセイ
 今日は母の日。
 夫がカーネーションの花を買ってきてくれた。ありがたや。



 夫の母、つまり義母は5年前に亡くなってしまったが、私の母は健在だ。父の葬儀を機に、一人でもボケずに生活できるよう、私たち三姉妹が順繰りに訪問するようになったため、一年中母の日と思うことにした。
 GWには母の家に一泊した。出かけるときは、食材持参で三食作ることにしている。母もこのペースに慣れ、特段気をつかわず「美味しい」と喜んで食べてくれるから頑張れる。
 車に電気、電話、ガス、預金の名義を父から母に変更する手続きは、母だけでなく姉や私が手伝った。だいぶ片づいたと思ったのだが、全部ではなかった。
「JAFがまだなのよ」
 母が困った顔で頼ってきた。
「電話を掛けてみたんだけど、マイページがどうとかこうとか言っててわからなかった」
母の家は電波状況が極端に悪く、LINEすらつながらないときがある。ひとまず父の会員証を預かり、自宅に帰ってからパソコンで調べてみた。
 結果、JAFでは名義変更の制度がないと知った。会員は父だけなので、死亡したら退会するしかない。母がサービスを受けるには、新たに会員として手続きすればよいらしい。
「なるほど」
 問題は会費の納入方法である。クレジットカードは持っていないので、郵便局の払込用紙を請求することにしたが、これだとネットで手続きできない。電話でと書いてあるのだが、何度掛けても「ただいま電話が大変混みあっております。のちほどお掛け直しください」のメッセージばかりで、一向に申し込めない。私ですらゲンナリするのだから、高齢の母にはなおさら厳しいと感じた。
「うーん、どうしよう」
 職場から電話を掛けられる時間帯は、昼休みか17時以降だ。しかし、いつかけても門前払いをされてしまい、永遠につながらないのではと焦った。
 結局、職場から掛けるのは諦め、土曜日の午後の落ち着いた時間帯に再挑戦することにした。15時ちょっと過ぎは平日よりも混んでいるイメージだったけれど、実際には逆だったようだ。今まで聞いたことのない「ロードサービスをご希望の方は1を、契約内容に関するお問い合わせは2を……」といった音声が流れてきた。2のボタンを押すとさらに「オペレーターにおつなぎします。待ち時間は5分以上かかります」のメッセージに切り換わり、「もしや繋がるのでは」と期待が高まってきた。
 少し待つと「5分以上」と伝えられたメッセージが「4分程度」に変わり、やがて呼び出し音となった。この時点で私は拳を握って右手を振り上げ、「いいぞ、いいぞ!」と騒ぎ出したいくらい盛り上がっていた。まさか、一度でつながるとは。
「大変お待たせしました。JAF総合サービスです」
 しっかりした印象の女性の声が聞こえてきた。事情を話すと、父の退会も母の入会も、同時に受け付けてくれるという。払込用紙は翌営業日に送ってもらえることになり、会員証が届くまでは領収証で各種サービスを受けられると聞いた。ああよかった。
 すぐ母に「連絡ついたよ」とメールしたら、「うれしい、よかった!」と大喜びであった。
 カーネーションやお菓子もいいけれど、気になっていた問題が解決することが、今の母には一番らしい。
 さて、次はどんな問題が待っていることやら。

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セーヴル フランス宮廷の磁器に触れるGW

2025年05月04日 10時00分34秒 | エッセイ
 4月はよく働いた。
 職場を異動すると、一気に仕事量が増える。3月中に「これだけはやっておかないと」と帳簿を整え、PCの中も過不足ないよう整理して職場を出た。しかし、新しい職場では前任者がそう思ってくれなかったようで、「あれもこれもできていない!」とガッカリしながら作業に追われている。毎日20時頃に帰宅し、自宅と職場の往復ばかりで単調な毎日だった。
 新年度の疲れを感じる頃にGWがやってくる。今年はカレンダーの並びが不満だが、ひとまず昭和の日には「美しい磁器を見て美味しいご飯を食べる」目的で渋谷区立松濤美術館に行った。



 現在、開催中の展示は「焼き物大好き」な私が「絶対見逃せないッ!」と狙いをつけていた「セーヴル フランス宮廷の磁器」である。



 セーヴルとは、ブルボン王朝が設立した王立セーヴル磁器製作所のことで、西洋諸窯のなかで最高峰と称されているそうだ。王侯貴族向けの注文生産であったため、現存数が限られており、日本で紹介される機会が少なかったというから、貴重なコレクションが見られてうれしい。



 リーフレットでは、「華麗な色彩を使って、当時流行のファッションなどを取り入れた小花文や花綱文をはじめ、鳥や人物、風景などを極めて絵画的な筆致で描いた作品群は、日本人がイメージする西洋磁器そのもの」と説明されている。



 まさにその通りであり、華やかに光り輝く美しさに魅了されるばかりであった。
 特に面白いと思ったのが、「色絵花」である。



 焼き物なのに、花びらのやわらかなフワフワ感や、リアルな色味が存分に発揮されている。これは一見の価値があるに違いない。
 小一時間ですべての展示を見終えたら、次は美味しい食事タイムである。
 美術館の周辺にはバルなどが多く、ランチ営業をする店が限られている。その日は松濤MAR(マル)というお店を予約した。
 サラダには野菜がたっぷり。



 細めのパスタは私の好み。



 ポークのカリッと感がお見事。



 プリンは人気だそうで、早めに頼まないと!



 目の保養、胃に栄養、との言葉が浮かんでくる。心休まるひとときに感謝した。
 展示は6月8日までなのでお気をつけて。

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